現住建造物等放火罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します.
会社員Aさん(35歳)は、亡父から相続した一軒家(築60年)に妻と二人で暮らしていました。ある日、お金に困っていたAさんは、自宅の築年数が古いことから、自分の家に放火して火災保険金を騙し取ることを思いつき、アパートを借りて、しばらくの間は、そのアパートで生活することにしました。そして、引っ越しを終えて荷物を運び出した後に、和室の畳に灯油をまき、火のついたタバコをその近くに放置して、しばらくすると灯油に引火して火災が発生するように仕掛けをして家を出ました。幸いなことに、火災が発生した直後に、近所の住民が火災に気付いて消火したため、畳一枚を焼損するにとどまったのですが、Aさんは非現住建造物等放火罪で逮捕されてしまいました。Aさんはその後の起訴されましたが保釈による釈放を希望しています。
(フィクションです)
~非現住建造物等放火罪~
放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物等を焼損した場合には、非現住建造物等放火罪が成立します。
非現住建造物等放火罪は、その客体を他人所有と自己所有とに分け、自己所有に係る非現住建造物等への放火については「公共の危険」が生じなかった場合には罰しない旨が規定されています(第2項)。
そうすると、上の事案において、Aさん自宅の周囲に人がおらず、他に建物などもない場合であれば、「公共の危険」がないとして、非現住建造物等放火罪が成立しないようにも思えます。
もっとも、刑法第115条は、非現住建造物等放火罪における物が自己所有に係るものであっても、差押えを受けたり、賃貸されたり、保険に付されたりしている場合には、他人の物を焼損した者の例によると規定します。
そうすると、たとえAさん所有の自宅であっても、これが保険に付されている以上、他人所有の非現住建造物を焼損したことになり、「公共の危険」が生じずとも、Aさんには、他人所有の非現住建造物等放火罪が成立する可能性があるのです。
他人所有の非現住建造物等放火罪の罰則は「2年以上の有期懲役」で、自己所有の非現住建造物等放火罪の罰則は「6月以上7年以下の懲役」です。
~保釈による身柄解放~
放火罪は重大な犯罪であるため、捜査機関に発覚すれば逮捕および勾留の可能性はかなり高いと言えます。
そして、もし勾留中に起訴されると、被疑者勾留が被告人勾留へと切り替わり、最低でも2か月は身体拘束が伸びてしまいます。
そうした事態に陥った際、身柄解放を実現する有力な手段として保釈の請求が考えられます。
保釈とは、裁判所に保釈金を納付することで、一時的に被告人を釈放する手続を指します。
保釈の最大の強みは、起訴前に釈放を実現できなかった事件において釈放を実現できる可能性がある点です。
保釈金は、逃亡を防止するための担保金の役割を果たします。
そして、罪が重くなればなるほど逃亡するおそれが大きいと判断されますから、罪が重たくなればなるほど保釈金も高くなる傾向にあります。
保釈されるためには、その前段階として保釈請求が許可される必要があります。
保釈請求に当たっては、法律の専門家である弁護士の視点が重要となることは否定できません。
ですので、保釈を目指すのであれば、保釈請求を含めて弁護士に事件を依頼することをおすすめします。
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