控訴の概要
控訴とは、上訴の一種で、地方裁判所または簡易裁判所がした第一審の判決に対して不服がある場合に、上級裁判所の司法的救済を求める不服申し立ての制度です(刑事訴訟法第351条、372条)。
刑事事件の控訴の申し立ては、無制限にできるわけではなく、一定の控訴理由が必要です。
主な控訴理由は、訴訟手続の法令違反、法令適用の誤り、量刑不当、事実誤認(ただし、これらの理由が判決に影響を及ぼすことが明らかな場合)などです。
控訴の申し立てをした後は、控訴理由の指摘を具体的に記載した控訴趣意書を控訴審裁判所(高等裁判所)に提出することになります。
控訴審裁判所における審理の結果、控訴審判決は大きく控訴棄却判決と原判決破棄判決に分かれます。
控訴棄却判決とは、第1審の判決がそのまま維持される判決です。
破棄判決とは、第1審の判決が誤っていたとしてこれを破棄する判決です。
破棄判決は、事件を1審裁判所に差し戻す破棄差戻し判決と、控訴審裁判所が自ら判決主文を言い渡す破棄自判判決に分かれます。
なお、刑事事件における控訴審の審理は、原則として新たな裁判資料の提出を認めず、第1審で取り調べた証拠に基づき、第1審判決の当否を事後的に審査する事後審制です。
控訴審では、裁判を一からやり直すわけではないこと、新しい証拠は制限されることに注意が必要です。
控訴の流れ
第1審判決に不服のある当事者(被告人や弁護人、検察官)は、判決宣告日の翌日から14日以内に、控訴申立書を第1審裁判所に提出して、控訴の提起をします。
第1審裁判所は、控訴の申し立てが明らかに控訴権の消滅後になされたものであるときは控訴棄却決定をしますが、そうでない限り訴訟記録及び証拠物を控訴審裁判所(高等裁判所)に送付します。
控訴申立人は、控訴審裁判所(高等裁判所)から通知される控訴趣意書の提出期限までに、控訴理由の指摘を具体的に記載した控訴趣意書を控訴審裁判所(高等裁判所)に提出します。
これに対して相手方が、控訴趣意書に対する反論を記載した控訴答弁書を控訴審裁判所(高等裁判所)に提出することがあります。
その後、控訴審の第1回公判期日が高等裁判所で行われます。
控訴された事件の多くは、1回で審理が結審し、控訴審判決となります。
控訴審の最適弁護プラン
- 控訴審で第1審判決を覆して有利な判決を獲得するためには、第1審の裁判記録を詳細に検討して、説得力ある控訴趣意書を作成することが不可欠です。
- また、控訴審で第1審判決を覆し破棄判決を勝ち取るためには、新たな証拠を取り調べてもらうことが重要です。
やむを得ない事由によって第1審では取り調べを請求できなかった証拠や、第1審判決後に生じた事実を証明する証拠などの取調べを控訴審裁判所(高等裁判所)に請求します(事案によっては、やむを得ない事由がなくても、控訴審裁判所が職権で証拠を採用することもあります)。
第1審判決後又は控訴申立後の、被害者への被害弁償や示談成立、再犯防止のための具体的な環境整備、再就職の先が見つかった、反省を深めていることなどは被告人に有利な情状として考慮されます。
また、事実関係を争う場合には、新たに見つかった証人や、新たな鑑定結果などを証拠として取り調べてもらうことなどが考えられます。 - 逮捕・勾留されてしまった被告人の場合、控訴審でも身柄拘束が継続することがほとんどであるため、事案に応じて、釈放や保釈による身柄拘束を解くための弁護活動を行います。