少年事件の簡易送致制度について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
名古屋市西区に住む高校生のA君(17歳)は、自宅から学校まで遠かったため、自宅から原付バイクを使って通学していました。ところが、ある日の朝、A君はいつものように原付バイクにエンジンをかけようとしたところエンジンがかからず、修理に出すと故障していることがわかりました。A君は、今後どのようにして通学しようか悩んでいたところ、A君と同じく原付バイクで通学していた友人のB君から電話があり、「原付バイクが故障したって?」「いらないのあるからタダであげるよ。」と言われました。A君は、B君が1年前に他人の原付バイクを盗んで警察に逮捕されたことを知っていたことから「もしかしたら盗まれたものかもしれない。」などと薄々思いましたが「タダならよかろう」と思い、B君に指定された場所までいき、原付バイクとそのカギを譲り受けて自宅に戻りました。そうしたところ、A君は、愛知県西警察署から「盗品等無償譲受け罪で話を聴きたいから警察まで来てくれないか。」との連絡を受けました。「やっぱり盗品だったのか」と思ったA君は母親と相談し、警察に行く前に弁護士に取調べの対応方法についてアドバイスを受けることにしました。警察官の話によれば、B君は、また原付バイクを盗んだ件で窃盗罪で逮捕された、とのことです。
(事実を基に作成したフィクションです。)
~ 盗品等に関する罪 ~
友人間での取引、売買などが刑事事件へと発展する可能性があることが注意が必要です。
盗品等に関する罪は刑法256条に規定されています。
刑法256条
1 盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、三年以下の懲役に処する。
2 前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、十年以下の懲役及び五十万円以下の罰金に処する。
1項は「無償譲受け」、2項は「運搬」「保管」「有償譲受け」「有償処分あっせん」に関する罪です。
「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物(以下、盗品等)」とは、窃盗罪、強盗罪、横領罪などの財産犯によて得られたもので、被害者が返してくれと請求できるものをいいます。
「無償譲受け」とは、文字通り、無償で盗品等を譲受けることをいい、現実の物の受渡しが必要です。
また、盗品等に関する罪が成立するための主観的要件として、行為者において譲受けた物が「盗品等である」ことの認識が必要です。
この認識の程度は、必ずしも「盗品等である」との確定的な認識である必要はなく、「盗品等であるかもしれない」という未必的な認識で足りるとされています。
~ 家庭裁判所へ送致されるルートは2つ ~
捜査機関は少年事件について捜査を遂げた結果、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料されるときは、すべての少年事件を家庭裁判所へ送致しなければなりません。
これを全件送致主義といいます。
事件が捜査機関から家庭裁判所へ送致されるルートは2つあります。
一つは、警察から直接、家庭裁判所へ送致されるルートです。直送事件とも呼ばれています。ただし、このルートで送致される事件は、過失傷害罪(30万円以下の罰金)、軽犯罪法違反(拘留、又は科料)など法定刑が「罰金以下の刑に当たる罪」に限られます。
もう一つは、警察から検察庁を経て家庭裁判所へ送致されるルートです。法定刑に罰金刑が規定されていても、選択刑として懲役刑が規定されていると、その罪に関する事件はこのルートで送致されることになります。
~ 少年事件の簡易送致制度 ~
しかし、事案が軽微で少年の保護の必要のない事件についてまで一律に同じ手続きで家庭裁判所に送致させることは、少年にとっても負担ですし、保護善導する上でも効果的とはいえません。また、多くの事件を取り扱う捜査機関の負担にもなりかねません。
そこで、一定の基準を満たす少年事件については、簡易送致制度に基づき簡易送致手続が行われています。
これは、被疑少年ごとに少年事件簡易送致書という書類を作成し、直送事件の場合は直接家庭裁判所へ、直送事件でない場合は検察官へ送致する手続きです。
なお、いかなる場合に簡易送致とするかは犯罪捜査規範第214条に規定されています。
犯罪捜査規範214条
1 捜査した少年事件について、その事実が極めて軽微であり、犯罪の原因及び動機、当該少年の性格、行状、家庭の状況及び環境等から見て再犯のおそれがなく、刑事処分又は保護処分を必要としないと明ら かに認められ、かつ、検察官又は家庭裁判所からあらかじめ指定されたものについては、被疑少年ごとに少年事件簡易送致書及び捜査報告書(略)を作成し、これに身上調査表その他の関係書類を添付し、一 月ごとに一括して検察官又は家庭裁判所に送致することができる。
2 前項の規定による処理をするに当たつては、第二百条(微罪処分の際の処置)に規定するところに準じて行うものとする。
もっとも、全ての事件、罪が簡易送致の対象となるわけではなく、あくまで「検察官又は家庭裁判所からあらかじめ指定されたもの」に限ります。盗品等に関する罪については、通常、一定の被害金額以下にかかる罪が対象とされていることが多いようです。
~ 簡易送致となったら?簡易送致を目指すには? ~
簡易送致された場合は、検察庁から呼び出しを受けて取調べを受ける可能性は低いでしょう。また、家庭裁判所で少年審判を受ける可能性も低いと思われます。
簡易送致するか否かは警察が決めますから簡易送致を目指すには、被害者に被害弁償したり、少年を取り巻く環境を整え、更生可能性をしっかりアピールする必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスの予約受付を承っております。