公然わいせつ罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所所名古屋本部が解説します。
Aさんは交際中の女性Bさんの同意を得て、名古屋市内を走行中の地下鉄車内でBさんのコートをはだけさせ、露出した陰部を撮影しました。
Bさんがコートの下に何も着ていないことに気付いた乗客が通報し、AさんとBさんは公然わいせつの共同正犯として中村警察署に逮捕されました。
(フィクションです)
~公然わせつ罪~
公然わいせつ罪は刑法第174条に規定されています。
刑法第174条
公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
「公然」とは、不特定または多数の人が認識できる状態のことをいいます。
認識できる状態にあればよいので、必ずしも現実に誰かが見ていたりしなくても公然性が認められる場合があります。
また、「わいせつ」とは、判例によると「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する」ことをいうとされています。
わいせつな行為に当たる例としては性行為や性器を露出する行為などが挙げられます。
今回のケースでは、地下鉄の車内でBさんがコートをはだけて陰部を露出させています。
地下鉄の車内は不特定多数の人が乗降し、ここでの行為は不特定または多数の人が認識できる状態にあるといえ、公然性は充たされると考えられます。
陰部を露出する行為はわいせつな行為の典型例に当たり、Bさんの行為は公然わいせつ罪の構成要件に該当すると言えます。
ところで、BさんはAさんに指示されて陰部を露出しており、またこの行為をすることに同意していますので、被害者の同意に当たり違法性が阻却されるのではないかという疑問を持たれる方がいらっしゃるかもしれません。
被害者の同意があるとして違法性が阻却されるかどうかは、その罪が保護しようとする法益が何であるのかが重要になります。
公然わいせつ罪が保護しようとするのは、判例によるわいせつ性の定義にも表れているように、善良な風俗を保護すること(社会的法益)にあります。
したがって、BさんがAさんの要求に同意していたとしても、公然わいせつ罪の保護法益が個人的法益でない以上、被害者の同意に当たらず違法性が阻却されることはありません。
むしろ、今回のケースのようにわいせつな行為を実行した場合はBさんのように被疑者となり逮捕されてしまう可能性もあります。
Aさんについても、Aさんは自身がわいせつな行為をしたといえないと主張することも考えられますが、Bさんがわいせつな行為を行ったのはAさんに指示されたためですので、Aさんも公然わいせつ罪の共謀共同正犯あるいは教唆犯として処罰される可能性があります。
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