窃盗と微罪処分

微罪処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

Aさんは、スーパーで万引きし、警察官に事情を聴かれることになりました。Aさんから依頼を受けた弁護士は、微罪処分獲得に向けてお店側と示談交渉を始めました。
(フィクションです)

~微罪処分とは~

微罪処分とは、警察が事件を検察庁を送致せず、被疑者への厳重注意、訓戒等で終了させる手続きのことをいいます。本来、警察が立件した事件は警察→検察へと送致することが基本です(刑事訴訟法246条本文)。しかし、「検察官が指定した事件」については例外的に送致する必要がありません(刑事訴訟法246条但書)。

~微罪処分の対象事件と対象基準 ~

あくまで微罪処分は例外措置ですから、どんな事件でも対象となるわけではありません。微罪処分の対象事件については、各都道府県で異なるとも思われますが、通常、窃盗罪、横領罪、占有離脱物横領罪、暴行罪などは対象とされていることと思います。なお、万引きは窃盗罪に当たりますから、万引きは微罪処分の対象事件ということになります。

しかし、微罪処分の対象事件だからといってすべての事件が微罪処分となるわけではありません。概ね以下の基準を満たす必要があります。
1 犯罪事実(犯情)が極めて軽微か
→窃盗罪、横領罪であれば被害額が2万円以下、暴行罪であれば凶器を使用していないことが基準となります。よって、同じ万引きであっても、被害額が2万円を超える万引きについては微罪処分の対象とはなり得ません。
2 被害弁償、示談ができているか
3 被害者が処罰を望んでいないか
4 前科、前歴がないか

微罪処分を決するのは検察庁や裁判所でもなく警察です。警察の犯罪捜査に関する規範について定めた犯罪捜査規範198条には次のようにかかれています。

捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ検察官から送致の手続きをとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる

ただし、警察の自由裁量で何から何まで微罪処分にできるものではありません。ここに書かれてあるとおり、犯罪事実が軽微であり、検察官から送致の手続きをとる必要がないとあらかじめ指定されたもの、である必要があるのです。

~微罪処分とした場合の流れ、手続き~

では、警察がある万引き事件を微罪処分としたとしましょう。その後はどのような流れ、手続きになるのでしょうか?この点、まず、犯罪捜査規範200条をみると、微罪処分により事件を送致しない場合は次の処置を取るものとされています。

1号 被疑者に対し、厳重に訓戒を加えて、将来を戒めること
2号 親権者、雇主その他被疑者を監督する地位にある者又はこれらの者に代わるべき者を呼び出し、将来の監督につき必要な注意を与えて、その請書を微すること
3号 被疑者に対し、被害者に対する被害の回復、謝罪その他適当な方法を講ずるよう諭すこと

これからすれば、微罪処分となったとしても、少なくとも1回は警察署まで出頭する必要があるでしょう。また、同時に被疑者を監督すべき方も同様です。
そして、警察は、これらの処置が終わると、被疑者の氏名、年令、職業及び住居、罪名並びに犯罪事実の要旨(以下、氏名等といいます)を記載した微罪処分事件報告書によって、検察官に事件の報告をします(犯罪捜査規範199条)。報告書1枚につき4、5名ほど、同じように微罪処分となった方の氏名等が記載されています。この報告の手続は刑事訴訟法246条本文にかかれてある「事件の送致」ではありませんから、この報告書に証拠書類や証拠物は付けられていません。また、「事件が送致」された場合と異なり、検察庁から呼び出しを受けることはありません。要は、警察署で警察官から厳しい御咎めを受けて終わりということになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、弊所までお気軽にご相談ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスを受け付けております。

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