交通事故に関する詐欺事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説いたします。
【事案】
交通事故に遭った際、通院で勤務を休んだ日数を水増しして保険会社に申告し、保険金およそ5万9000円を騙し取った罪に問われていた被告人に対し、名古屋地裁は「懲役10月、執行猶予3年」の有罪判決を言い渡した。
(東海テレビ「元警察官の32歳男に執行猶予付きの判決」(2020/7/31)を引用・参照)。
【交通事故に関する詐欺事件】
(詐欺)
第246条
①人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
②前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
刑法に規定されている詐欺罪(刑法246条)には、客体を「財物」とするいわゆる1項詐欺と、「財産上の利益」を客体とする2項詐欺があります。
本稿では、最も一般的な1項詐欺に関する事件について取り上げて解説していきたいと思います。
上記にもあるように246条1項は「人を欺いて財物を交付させた者」に詐欺罪が成立すると定めるのみで非常にシンプルな条文となっています。
しかし、詐欺罪は財産犯(刑法第2編36章~40章)の中でも複雑な構造を持つ犯罪であるということに注意を要します。
1項詐欺罪(既遂)が成立には、「人を欺く行為(欺罔行為)→錯誤→財物の交付→財物の移転」という因果連関が必要となるのです。
これを本事案について見てみると、交通事故にあった被告人が、当時の勤務先に有給休暇を請求しこれを加えた水増しした休業補償金(保険金)を保険会社に申告し(「人を欺」く行為)、申告に基づいた保険金が発生すると誤信した保険会社が(錯誤)、水増しされた保険金を被告人に交付し(交付行為)、被告人がこれを受け取っている(財物の移転)ことから詐欺罪が成立することになります。
交通事故に関する詐欺事件には、本事案のようないわゆる保険金詐欺の他にも、保険会社が絡まない偽装事故のケースも存在します。
被告人らが乗用車と歩行者の衝突事故を偽装し、何も知らない同乗者の被害者(自らを加害者と誤信)から示談金を請求するようなケースです。
詐欺罪はいわゆる知能犯と分類されることからも分かる通り、様々な態様で行われケースによっては高度な組織性を有することもあり(それを被疑者・被告人が認識していない場合も少なくありません)、専門家である刑事弁護士によるサポートが不可欠な事件類型といえるでしょう。
【詐欺事件における刑事弁護士の弁護活動】
本事案では、被告人に「懲役10月、執行猶予3年」の有罪判決が下されています。
まず詐欺事件を起こしてしまった場合、最大の関心事の一つとなるのが起訴されるかされないか(裁判になるかならないか)でしょう。
財産罪(財産犯)は当然のことながら財産を侵害する犯罪ですから、被害弁償や示談成立の有無が判断を分ける重要な要素となることは間違いありません。
したがって、弁護士としては被害者側とコンタクトを取り、出来るだけ早い段階でこれらの弁護活動において成果を出していくことが肝要となります。
次に起訴されてしまった場合は、どのような判決が下されるのかということが最大の焦点となります。
近年は特殊詐欺(いわゆるオレオレ詐欺に端を発する多様化した特殊な詐欺・窃盗事件)を中心とした組織的な詐欺事件には極めて重い判決が下される傾向にあると言われています。
本稿で紹介した事案は特殊詐欺ではないものの、被疑者・被告人のあずかり知らぬ内に組織的な詐欺事件に加担していることも少なくないため、弁護士による十分な聞き取りやその専門知識にもとづく裁判の見通しについての助言を受けることもまた不可欠といえます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、詐欺事件を含む刑事事件を中心に取り扱っている法律事務所です。
詐欺事件で逮捕・起訴等された方やそのご家族は、24時間対応のフリーダイヤル(0120-631-881)までまずはお電話ください。