【裁判紹介】強盗致傷事件の裁判例(実刑・執行猶予)の紹介

強盗致傷事件の裁判例等について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説いたします。

【事案】

被告人は、「金を出して」などと店員を脅し、売上金や釣り銭用の硬貨など12万円を用意させ、持っていた刃渡り約11センチの包丁切り傷を負わせて、そのまま金を奪って逃げた。
被告人は犯行前日の早朝には路上に駐輪してあった電動バイクを盗んだほか、駐車されていた車の窓から財布を持ち去っていたことから、強盗致傷の他と銃刀法違反、窃盗2件の罪に問われた。
(中日新聞「「強盗致傷事件を起こした元ホスト、「あの頃に戻ってしまった」と語った訳は―。」(2022/4/29)を引用・参照。)

【強盗致傷(刑法240条前段)事件について】

(強盗致死傷)
第240条 強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に……処する。
(強盗)
第236条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
(事後強盗)
第238条 窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

刑法240条前段は、強盗罪を犯した者(刑法236条以外にも238条の場合も含まれます)が被害者に怪我を負わせた場合の罪について規定しています。 
この条文を読んだだけでは必ずしも明確ではありませんが、怪我を負わせる意思を持って犯行を行った強盗傷人罪と、強盗の際にたまたま怪我を負わせてしまった強盗致傷罪の双方が同条によって規律されていることになります。
さらに、刑法240条前段の罪は法定刑として「無期」懲役が含まれるため、原則として裁判員裁判となります(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条1項1号)。
この点において、裁判官裁判(裁判員の参加しない通常の裁判)とは、必要な対応が大きく異なることに注意が必要です。

【強盗致傷事件に関する裁判例】

本事案において、名古屋地裁(裁判員裁判)は、「懲役6年(求刑懲役9年)」の判決を言い渡しています。
もっとも、同様に強盗致傷を含む罪で起訴された他の事案においては執行猶予判決が下されたものも存在します。
神社のさい銭箱から現金を盗み、停止を求めた警察官を複数回殴るなどしてけがを負わせた事例においては、「懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役5年)」の執行猶予判決が言い渡されています。
このように実刑判決と執行猶予判決とに大きく判断が分かれた理由の一つとして、計画性の有無が挙げられるでしょう。
執行猶予判決が下された後者の事案では、強盗行為自体が事後強盗(上述の刑法238条)であったと考えられ、計画性は低かったと考えられます。
一方、本事案では、包丁という凶器を用意している以上、強盗の際に被害者等に怪我を負わせることもあり得るものだと認識していたものと考えるのが自然であり、一定の計画性が認められます。
この他にも量刑事情(刑を決定する際に考慮される事情)は様々なものがあり、一つ一つの個別的事件によって千差万別です。
起訴された場合にどのような刑が下されうるか(量刑の幅)等については、専門知識を有する刑事弁護士によるアドバイスが不可欠な領域ということできます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、強盗(致傷)事件を含む刑事事件を中心に扱っている法律事務所です。
強盗(致傷)事件で逮捕・起訴等された方のご家族は、365日24時間対応の無料フリーダイヤル(0120-631-881)までお電話ください。

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