ホテルにおける窃盗で逮捕された事例を題材に、刑事弁護士が行う弁護活動等について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
【刑事事例】
Aは、適法に宿泊していたホテル内の備品(ドライヤー等)を、チェックアウトする際にホテルに無断で持ち出した。
愛知県東警察署警察署の警察官は、Aを窃盗の疑いで逮捕した。
Aの家族は、窃盗事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。
【窃盗罪か(単純)横領罪か】
第38章 横領の罪
(横領)
第252条 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。
2(略)
刑法252条1項は、いわゆる横領罪(単純横領罪・委託物横領罪)を定めた規定です。
これに対し、刑法235条は「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と規定しています。
窃盗ではなく横領に当たる場合、上記のとおり横領罪には窃盗罪と違い罰金刑が定められていないため、どちらに当たるのか判断することは被疑者や弁護活動を行う弁護士にとって極めて重要な事項となります。
では、本件では横領罪が成立する余地はあるのでしょうか。
上記252条1項が示すとおり、横領罪が成立するためには被害客体が「自己の占有する他人の物」である必要があります。
ホテルの備品たるドライヤー等は、ホテル側の所有物であることは明らかであり、「他人の物」であることに間違いはありません。
また、Aは金銭を払ってホテル内の部屋に宿泊しているのですから、「他人の物」を「占有」しているともいえそうです。
もっとも、「占有」とは物に対する事実的支配をいうところ、これは社会通念に照らして判断されることになります。
この点、ホテル側が提供した備品はあくまで、宿泊客の利用に供されているだけであり、室内の備品に対する事実的支配は未だホテル側にあると解するのが通常でしょう。
したがって、Aの行為は横領罪ではなく、「他人の財物」をその所有者・占有者の意思に反して「窃取」したものとして窃盗罪を構成することになります。
【逮捕後の弁護活動について】
ここまで、法定刑等の違いに着目した上で、窃盗罪と横領罪の成否について見てきましたが、以下ではより弁護活動に直結する我が国における具体的な事件処理について見てみましょう。
多くの方は逮捕等の身体拘束がされた刑事事件においては、我が国の有罪率が99.9パーセントともいわれることから、ほぼ間違いなく刑罰が下されると思われているかもしれません。
しかし、刑事事件のうち検察官が起訴するのは実はその一部にすぎず、統計上は6割近くが不起訴処分となっています。
つまり、逮捕等がされたとしても、被害弁償や弁護士を通じたその後の対応によって、多くの事件は刑事裁判になることなく終了しているのです。
逮捕・勾留された場合には、(原則として)最大23日間の身体拘束が法律上認められていますが、検察官はこの期間までに起訴・不起訴の判断をする必要があります。
したがって、刑事事件はよくいわれるように時間との勝負に他なりません。
窃盗事件で逮捕された場合も、早い段階から弁護士とのコンタクトをとることが何よりも重要であるといえます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗事件を含む刑事事件を専門的に扱っている法律事務所です。
多数の刑事弁護士が、日々精力的に刑事弁護活動を行っています。
窃盗事件で逮捕された方のご家族は、まずは24時間/365日対応のフリーダイヤル(0120-631-881)までご連絡ください。
担当者が、弁護士による逮捕されてしまった方との接見(面会)サービス等についてご案内差し上げます。