現住建造物等放火罪と逆送 

現住建造物等放火罪と逆送について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。 

【刑事事件例】

17歳のAさんは以前から火が大きく燃え上がるのを見てみたいと思っており、どこかに火をつけようとしていました。
ある夜Aさんは愛知県知多市のVさん宅の軒下にあるVさんの自転車のサドル部分にライターで火をつけ、炎が上がったのを確認して近くからそれを見ていました。
炎はVさん宅の軒下部分に燃え移り、軒下の一部が燃え始めましたが、AさんはVさん宅に燃え移っても別にいいと思っていました。
結局Vさん宅は全焼し、この家に住むVさんは亡くなりました。
Aさんは現住建造物等放火罪などで愛知県知多警察署に逮捕されましたが、Aさんの両親が少年事件について調べた結果、未成年でも刑事処分になることがあると知り、少年事件に強い弁護士に弁護を依頼しました。
(フィクションです)

【放火の罪について】

放火の罪には様々な種類があります。
条文を見ていきましょう。

・現住建造物等放火(刑法第108条)
放火して、現に人が住居に使用しまたは現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船または鉱坑を焼損した者は、死刑または無期もしくは5年以上の懲役に処する。

・非現住建造物等放火(刑法第109条)
1放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船または鉱坑を焼損した者は、2年以上の懲役に処する。
2前項の物が自己の所有に係るときは、6月以上7年以下の懲役に処する。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。

・建造物等以外放火(刑法第110条)
1放火して、前2条(108条、109条のこと)に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
2前項の物が自己の所有に係るときは、1年以下の懲役または10万円以下の罰金に処する。
(対象物は、自転車、バイク、航空機、門、塀、橋、畳、机、椅子、ゴミ箱などです。)

いわゆる「放火の罪」の条文はこのようになっていますが、
放火はしたものの「公共の危険」が発生しなかった時は器物損壊罪となります。
※「公共の危険」とは、不特定または多数人の生命、身体、財産に危険を生じさせる状態のことをいいます。
判断基準は、火力の程度、他人の住居などの隣接状況、当時の風向き、風速、気温などの気象状況、昼間か夜間化などの事情によります。

【放火の罪のそれぞれの違い】

①現住建造物等放火罪と非現住建造物等放火罪を分けるものは、「現に人が使用している(人とは犯人以外の一切の人のこと)」または「人が現在している(現在とは放火の当時犯人以外の者が中にいること)」かそうではないかです。
②建造物等以外放火罪と現住建造物等放火罪を分けるものは、現住建造物等の一部でも焼損したか否かとその故意を有していたかです。

【逆送とは】

Aさんの両親が調べた、「未成年でも刑事処分になることがある」とは「逆送」のことです。
逆送とは、家庭裁判所が送致された少年を調査した結果、保護処分ではなく刑事処分を科すことが相当であるとして検察に送致することです。
このことを検察官送致決定といい、「逆送」といわれています。

家庭裁判所から刑事処分相当として検察官に送致された場合、検察官は、公訴提起するに足りる犯罪の嫌疑があると思慮するときは起訴しなければならないとされています。
逆送される理由は2つあり
①年齢超過を理由とする(年齢超過逆送)
②刑事処分相当を理由とする(刑事処分相当逆送)
があります。

①の年齢超過を理由とするについては、審判時に少年が20歳以上に達している場合、少年法の適用対象ではなくなるため、家庭裁判所は逆送しなければなりません。(犯行時、逮捕時の年齢ではありません。)

②の刑事処分相当を理由とするについては、家庭裁判所は、死刑、懲役または禁固にあたる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分相当と認めるときは、事件を検察官に送致を決定しなければならないとされています。
また、犯行時に16歳以上の少年で、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪にあたる事件の場合には、原則として検察官に送致しなければならないとされています。
なお14歳未満の者は刑事責任能力がないとされているため、逆送されることはありません。

上記の理由により、Aさんに対しても逆送される可能性は高いと思われます。
しかし、少年事件に強い弁護士は逆送をされないために様々な弁護活動を行っていきます。
具体的には、家庭裁判所の裁判官に対し、少年に対する処遇として刑事処分が相当ではないことを主張していきます。

まず「刑事処分が相当である」とは、保護処分によっては少年の矯正改善の見込みがない場合(「保護不能」といいます。)があります。
それに加え、事案の性質、社会感情、被害者感情等から、保護処分に付すことが社会的に許容されない場合(「保護不適」といいます。)があるといわれています。

つまり、少年は保護処分により更生できることを主張を家庭裁判所の裁判官に主張し、更に事案の性質、社会感情、被害感情等から、保護処分に付すことが社会的にも許容されるということを、具体的な事情を踏まえて主張していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、放火の罪、現住建造物等放火罪への対応をしてきた刑事事件専門の法律事務所です。
ご家族やご自身が放火の罪、現住建造物等放火罪で話を聞かれることになった、または逮捕されてしまった、逆送を防ぎたいという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。

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