違法な捜索・差押えをされたら
違法な捜索・差押えをされた場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【ケース】
Aさんが愛知県名古屋市内の自宅でBさんと遊んでいると突然、愛知県千種警察署の警察官が、捜索差押令状をもって乗り込んできました。
この令状は、被疑事実を「覚せい剤使用」、捜索すべき場所を「○○マンション104号室(A宅)」・差し押さえるべきものを「覚せい剤、注射器、パイプ、覚せい剤の入手・保管に関する情報の記載された文書、同情報の保管された物件、その他本件に関係ありと思料される一切の文書及び物件」と記載されていました。
警察官は同令状に従いA宅を捜索しましたが何も出てきませんでした。
警察官は、A宅に居合わせていたBさんが捜索開始時からかばんを抱きかかえて離そうとしなかったことから不信を抱き、Bさんにカバンの提出を求めました。
Bさんが提出を拒むと警察官は令状の執行としてBさんから無理矢理カバンを奪い、その中を確認しました。
カバンの中からは覚せい剤やその使用に供したと思われる注射器が見つかり、押収され、Bさんは覚せい剤所持の罪で現行犯逮捕されました。
(このケースはフィクションです。)
~第三者の持ち物の捜索・差押え~
今回のケースでは、A宅の捜索・差押えの際に、偶然居合わせたBさんの持ち物の捜索・差押えがなされています。
このような、現場に居合わせた第三者の持ち物の捜索・差押えは適法なのでしょうか。
まず、捜査機関が捜索や差押えをするためには、裁判官に許可状(令状)を発行してもらう必要があります。
その令状には「捜索すべき場所、身体若しくは物」を記載しなければなりません(刑訴法219条1項)。
なぜなら、捜査機関が勝手に関係ないところを捜索して、国民の権利が害されることを防ぐ必要があるからです。
したがって、捜索は令状に記載された場所のみで行うことが出来ます。
今回のケースではA宅内のみを捜索することができるわけです。
ただ、A宅内とはいえ、たまたま居合わせた第三者の持ち物まで捜索してよいのでしょうか。
そもそも捜索は、事件に関係する証拠がある可能性が十分あるからこそ、裁判官が許可するわけです。しかし、偶然居合わせた第三者のカバンは、事件に関係する証拠は入っていないのが普通です。
そうすると裁判官も、居合わせた第三者の所持品まで捜索することは想定しておらず、許可を出していないといえます。
したがって、たとえその場に存在したとしても原則として捜索できないと考えられています。
~例外的に適法なケースも~
しかし、A宅に元々あった物をBさんが捜索時に持っていた場合には話が変わってきます。
例えばAさんとBさんが共犯者であり、BさんにとってもAさんの物が捜索・差押えされるのは不都合なので、警察の突入時にとっさに隠したような場合です。
もし第三者が適法に捜索・差押えできる物をカバンに隠した途端、捜索・差押えができなくなるとしたら、捜索・差押えの実効性が著しく損なわれます。
またこの場合、証拠が見つかる可能性が十分あるわけですから、令状を出した裁判官としても捜索がなされることを想定していたといえます。
そこで、適法に捜索・差押えが可能な物をBさんが自分のカバンの中に隠したことが明らかな場合や、A宅にあったAさんのカバンをBさんが持っていたにすぎない場合などには、例外的に捜索・差押えが適法となる場合もあります。
~違法だった場合は?~
仮に原則通り、今回のBさんのカバンへの捜索・差押えが違法だった場合、押収された覚せい剤や注射器などの証拠は違法に収集された証拠であり、その証拠に基づいてなされた現行犯逮捕も違法ということになります。
この場合、見つかった証拠は裁判で有罪とするために使うことが出来なくなったり、ただちに釈放しなければならなくなる可能性もあります。
ただ、違法であれば当然にそうなるというものではなく、その違法の内容や程度によってその結論は異なります。
その判断は難しいところですので、違法な捜査をされたのではと心配な方は、ぜひ一度弁護士にご相談いただければと思います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
捜査の過程に違法な点がないかを検討し、早期釈放や判決を軽くすることに向けて、弁護活動をしてまいります。
逮捕されている事件では初回接見のご利用を、逮捕されていない場合やすでに釈放された場合には、事務所での無料法律相談のご利用をお待ちしております。