検察官の不起訴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
~ ご相談内容 ~
私は、昨年の9月に痴漢をした件で不起訴処分(起訴猶予)を受けました。しかし、今年のの7月にまた痴漢をしました。現在はその件で検察庁から呼び出しを受けています。7月の件では起訴されても仕方ないと思っているのですが、9月の件でも起訴されてしまうのでしょうか??(フィクションです)
~ 不起訴って何? ~
不起訴とは、検察官が下す終局処分(その事件について起訴・不起訴を終局的に決める処分)の一種で、その意味は文字通り、起訴されないということです。以下、具体的にみていきましょう。
不起訴は、検察官が下す終局処分の一種ですから、不起訴を決めるは警察官でもなければ、裁判官でもなく、
検察官
です。検察官の元には、警察や検察の捜査で収集した証拠が全て届けられます。その証拠の中には、被疑者(犯人)にとって不利な証拠もあれば、有利な証拠も含まれています。したがって、検察官は、それらの証拠を総合的に判断して、事件を起訴するか、不起訴にするか判断できる立場にあるのです。刑事訴訟法には不起訴について次の規定が設けられています。
上記のとおり、起訴するか、不起訴にするかの判断は検察官に委ねられていますから、その判断の時期も
検察官の判断(裁量)
に委ねられます。
検察官は、捜査の過程で収集した証拠に基づいて終局処分を決めますし、証拠の収集には一定程度時間を要しますから、終局処分の判断までにも一定の時間を要します。ただし、身柄事件の場合は時間的制約がありますから、在宅事件に比べて証拠収集のスピードがあがり、その分、終局処分を下す時期も早くなります。
検察官は検察官が収集した証拠に基づき不起訴にするかどうか判断します。そして、検察官は、起訴するだけの証拠が集まったか否かを見極めます。証拠が集まっていないと判断した場合、あるいは集まっているが、
犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況
から起訴を必要としないとき(刑事訴訟法248条)は不起訴とします。
検察官が不起訴と判断するに至った理由の「題名」のことを裁定主文といいます。よく目にするのが、「嫌疑不十分」と「起訴猶予す。
嫌疑不十分とは、検察官が起訴するに足りる証拠が集まっていないと判断したときに裁定するものです。起訴猶予とは、検察官が、証拠から犯罪であることは明らかであるが、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況から起訴する必要がないと判断したときに裁定するものです。
実は、この裁定主文は「嫌疑不十分」「起訴猶予」の他にもいろいろあります。例えば、そもそも被疑者が死亡している場合は「被疑者死亡」により不起訴となりますし、訴訟条件が欠けている場合も不起訴となります。
不起訴になれば、
刑事裁判にかけられること
刑罰を受けること
前科が付くこと
がなくなります。したがって、裁判所や検察からの呼び出しに応じる負担もなくなります。また、不起訴獲得によって職場の雇用や資格取得の場面でもよい影響が出るでしょう。
~ 今後、逮捕、起訴されることはないの? ~
裁判と違って、不起訴処分には、それ以上事件を蒸し返してはいけないという決まりはありません。したがって、不起訴となったからといって、
逮捕、起訴されないという保証はありません
証拠が足りなくて不起訴となっても(嫌疑不十分の場合)、処分後に新たな証拠が出てきた場合、起訴猶予で不起訴となっても、処分後に再犯を犯し情状が悪くなった場合などは、再度、逮捕、起訴されることがあります。前者のケースは少ないと思われますが、後者のケースは十分にあり得ることです。したがって、起訴猶予で不起訴となった場合は、それだけで安心せず、その後の生活態度には十分気を付ける必要があります。
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