公務執行妨害罪(公妨)と略式起訴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
名古屋市緑区に住むAさんは、同区内で、愛知県緑警察署の警察官が乗車していた停車中のパトカーに向かって投石行為を繰り返したため、その行為を現認していた警察官に公務執行妨害罪で現行犯逮捕されました。その後、Aさんは勾留されましたが、略式起訴され、裁判所から罰金10万円の略式命令を受けて釈放されました。
(フィクションです。)
~公務執行妨害罪~
公務執行妨害罪は
公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた
場合に問われる罪です。
公務執行妨害罪の「暴行」には殴る、蹴る、叩くなどのように人に対する直接的な有形力の行使のほか、本件のように、直接公務員(本件の場合、警察官)に向けられておらず、公務員の身体に感応する行為(間接暴行)も含まれると解されています。
そのため、Aさんは公務執行妨害罪で逮捕されているのです。
このように、「暴行」を広く解釈しているのは、公務執行妨害罪の保護法益が、公務員の身体等を特別に保護するものではなく、公務それ自体の適正かつ円滑な遂行を保護するものであるため、公務の執行を妨害する程度で足りると考えられているためであるとされています。
なお、判例では、
・覚せい剤液注射液入りアンプルを足で踏み付け破壊する行為
・収税官吏が差し押さえた密造酒入りのカメを破壊する行為
なども「暴行」に当たるとされています。
~略式起訴とは?~
検察官が行う起訴には「正式起訴」と「略式起訴」の2種類があります。
「正式起訴」は、検察官が、裁判所に対し、皆さんもテレビドラマなどでよくみる公開の法廷で裁判(正式裁判)を開くことを求めるものに対し、「略式起訴」は、検察官が、裁判所に対し、公開の法廷ではなく書面のみでの裁判(略式裁判)を求めるものです。
憲法上、全ての国民には公開の法廷で裁判を受ける権利が認められています。ところが、略式起訴は、いわばその手続きを省略する手続きですから、検察官が略式起訴するには、被疑者からの同意を得る必要があります。
また、仮に略式起訴され、裁判官により略式命令を発せられたとしても、その告知を受けた日から14日間以内は正式裁判の申し立てをすることができます
逮捕から略式起訴、略式裁判までの流れは以下のとおりです。
逮捕→勾留→捜査機関(警察、検察)による捜査→検察官から略式起訴、裁判に関する説明を受け、同意を求められる(勾留期間満了の日のおおよそ2日前)→略式起訴
略式裁判は、公開の法廷に出頭する必要がなく,裁判官が書面だけで審理を行う裁判のことをいいます。
●懲役刑を受けるおそれがない(略式命令では100万円以下の罰金又は科料の刑の命令しか出せない)
→将来,刑務所で服役するおそれがなくなる
●公開の法廷に出廷する必要がない
→会社を休む必要がない(通常の日常生活を送れる),裁判を他人の目に晒されることはない(事件を秘密にできる)
などといった点が挙げられます。
他にも、略式裁判を受けるメリットとしては、
●略式命令が出た時点で釈放される
という点も挙げられます。つまり、例えば、勾留中の場合、勾留期間9日目で検察官により略式起訴されたとしましょう。その場合、通常、その日に裁判官による略式裁判が行われ(先ほども申しましたように裁判への出廷の必要はない)、略式命令をすることができないこと、略式命令をすることが相当でないこと以外は、その日に略式命令が出されます。略式命令が出されると勾留状の効力が失効するとの規定があります(刑事訴訟法345条)から、その時点で釈放されるのです。
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