万引きから強盗へ

万引きから強盗について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

愛知県江南市に住むAさん(60歳)は、大型ショッピングセンターの食料品売り場で、菓子パン1個(時価100円相当)を肩にかけていたショルダーバックの中に入れ、レジで精算せずに売り場を出ました。そうしたところ、Aさんは、Aさんの行為を一部始終見ていた保安人のBさんから、食料品売り場を出たところで、「何で声をかけたか分かりますよね」「お金払われていませんよね」などと声をかけられました。Aさんは、執行猶予期間は経過していたものの、万引きの前科1犯を有していたことから、「このまま捕まれば刑務所行きだ」と怖くなり、Bさんの右頬を左手拳で1発殴り、さらに脚を振り払って転倒させてその場から逃げました。しかし、後日、防犯ビデオ映像などからAさんの犯行であることが判明し、Aさんは愛知県江南警察署に事後強盗罪で逮捕されました。

(フィクションです。)

~ 万引きから強盗へ ~

万引きというと軽い罪のように聞こえがちですが、万引きは立派な犯罪ですし、窃盗罪に当たり得る行為です。窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。

では、今回、なぜ、万引きを行ったAさんが事後強盗罪で逮捕されたのかご説明いたします。

= 事後強盗罪とは =

事後強盗罪は刑法238条に規定されています。

刑法238条

 窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

つまり、事後強盗罪は、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行・脅迫を加えたことで成立する犯罪で強盗罪の一種です。

 

= 各用語の説明 =

「窃盗」とは窃盗犯人のことをいい、窃盗の既遂、未遂は問いません。

次に、「暴行」「脅迫」の程度は、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものであり、かつ、「財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するため」のいずれかの目的をもって出たものであることが必要です。

* 窃盗の機会 *

強盗罪とは、「暴行」「脅迫」→「財物奪取」という流れが通常の形です(刑法236条1項)。しかし、事後強盗罪の場合は、名前からもわかるように「財物奪取」→「暴行」「脅迫」という流れ、つまり、事後的に「暴行」・「脅迫」が行われたという形をとっています。にもかかわらず、通常の強盗罪と罪は同じというわけですから、事後強盗罪の「暴行」「脅迫」は「窃盗の機会」になされることが必要とされています。「窃盗の機会」であったか否かは、「窃盗」と「暴行・脅迫」との時間的・場所的、人的関係を総合的に考慮して判断されます。

= 本件の検討 =

まず、Aさんが菓子パンをショルダーバック内に隠匿する行為は窃盗既遂罪ですから、Aさんは「窃盗」に当たります。また、Aさんは刑務所に入ることが怖くなって現場から逃走していますから「逮捕を免れる」目的があったといえます。また、Aさんが、左手拳でVさんの右頬を1発殴る、脚を振り払う行為は、相手方の反抗を抑圧するに足りる「暴行」に当たります。最後に、Aさんの「暴行」は食料品売り場出口付近で行われていますから、「窃盗」と時間的、場所的に近接しており「窃盗の機会」になされたということができます。

以上より、Aさんは事後強盗罪での刑事処分を受ける可能性が高いと思われます。

~ 最後に ~

本件の被害額は「100円相当」ですから、被害額だけみれば「たいしたことにはならないだろう」などと甘く考えがちです。しかし、先ほどもご説明したとおり、万引きも立派な犯罪ですし、下手をすれば強盗罪などの重大犯罪に発展する可能性も秘めています。

しかし、幸いにも弁償、示談の点では比較的スムーズに話を進めていくことが可能だと思われますから、早期釈放、不起訴処分獲得をお望みの方は、まずは弊所の刑事専門の弁護士へ刑事弁護をご依頼ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、強盗罪をはじめとする刑事事件、少年事件専門の法律事務所です。まずは、お気軽に、0120-631-881までご連絡ください

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