名古屋市名東区の刑事事件 金融商品取引法違反 「不正の手段」で相場操縦
名古屋市名東区に住むAさんは、東京証券取引所第一部に上場しているB社株式を保有していました。
しかし、B社株式は、B社の不況により低迷を続けており、ここ数年株式価格が下がり続けていました。
株式価格が下がり、保有している資産が減少していることに危機感を覚えたことから、資産価値を上昇させるため、B社株式を、本当は売却する目的がないにもかかわらず、売買したように装い、取引高を偽装しました。
その結果、B社株式の株式価格は上昇しましたが、のちに偽装が発覚し、Aさんは証券取引等監視委員会の調査を受けることとなりました。
(フィクションです。)
~相場操縦の罪とは~
金融商品取引法159条は、相場操縦の罪を定めています。
何人も有価証券の売買(金融商品取引所が上場する有価証券等に限る)のうち、取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもって、権利の移転を目的としない仮想の有価証券の売買をすることを禁止しています。
今回の上記事例のAさんのように、実際に売却する意図がないのに、株価を上昇させるために株式売買を仮装する行為は、相場操縦の罪に該当する可能性が高いでしょう。
ところで、不正取引の罪で摘発された事例は、相場操縦の罪とも言えそうな事案でした。
ただ、相場操縦の罪は、「取引の状況に関し他人に誤解させる目的」という目的が要件とされ、手段としても「仮装売買」という形で限定されています。これに対し、不正取引の罪は、「不正の手段」という包括的な形で構成要件を定めているため、成立しやすくなっています。
罰則の定めについては、いずれの場合も「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金(又はこれらの併科)」と非常に重くなっています。
また、実際に相場の変動まで起こしたような場合には、罰金が3000万円に引き上げられます。