釈放について
釈放とは、適法な事由に基づき、刑事施設に収容されている在監者の身柄拘束を解くことをいいます。
逮捕・勾留されてしまった容疑者・犯人は、会社や学校に行くことはできなくなります。
そのまま逮捕・勾留が長引けば、逮捕されたことを周囲の人に知られたり、会社や学校を休む状態が続いて解雇や退学になったりする危険が高まります。
釈放が認められれば身体拘束から解放されて会社や学校に行くことができるのですが、一旦逮捕・勾留がなされてしまうとただ黙って待っているだけでは簡単には釈放されません。
刑事事件に精通した弁護士に依頼して、検察官や裁判官に対して釈放に向けた活動をしてもらうことで、釈放の可能性を高めて会社や学校への復帰を促すことができます。
釈放のメリット
- 逮捕されたことが周りの人に知られずにすむことが多い
- 会社や学校を辞めずにすむ可能性がある
- 事件解決や裁判に向けた十分な準備ができる
【起訴前の釈放Ⅰ】より早い段階で弁護士に頼むのが有利!
1 送致後24時間以内に釈放をめざす
警察は、逮捕した容疑者・犯人を勾留する必要があると考えるときは、逮捕から48時間以内に容疑者を検察庁の検察官に送致する手続をしなければなりません。
警察から容疑者・犯人の送致を受けた検察官は、24時間以内に、勾留の必要性を判断し、必要であれば裁判所の裁判官に容疑者・犯人を勾留するよう勾留請求します。
この段階までに弁護士が付いていれば、検察官に対して、容疑者にとって有利な証拠と事情を説明することで勾留請求しないように働きかけることができます。
この働きかけにより検察官が勾留請求を行わなければ、逮捕されていた容疑者は釈放されることになります。
2 裁判官が勾留を決定する前に釈放をめざす
検察官から勾留請求を受けた裁判所の裁判官は、勾留質問といわれる容疑者との面談を行って、容疑者を勾留するかどうかを最終的に判断します。
この段階までに弁護士が付いていれば、裁判官に対して容疑者を勾留しないよう働きかけをすることができます。
この働きかけにより裁判官が検察官の勾留請求を却下すれば、逮捕されていた容疑者は釈放されることになります。
3 裁判官のなした勾留決定を覆して釈放をめざす
裁判官が勾留を決めると、容疑者は10日~20日間は留置場や拘置所等の留置施設に勾留されることになります。
この段階で弁護士が付いていれば、裁判官の勾留決定に対して不服を申し立てる準抗告という手続きを行うことができます。
弁護士によって準抗告がなされた場合、勾留を決定した裁判官とは異なる3人の裁判官からなる合議体で勾留決定の是非が審査され、勾留が不当との判断がなされれば、勾留決定が覆って勾留されていた容疑者は釈放されることになります。
ただ、裁判官によって一旦なされた勾留決定は簡単には覆らないので、釈放を望むのであれば、より速い段階で弁護士を付けて釈放のための弁護活動を始めるのが望ましいと言えます。
4 勾留取消・勾留執行停止による釈放をめざす
裁判官による勾留決定がなされてしまった後も、勾留の理由または必要がなくなったとして勾留取消請求をしたり、治療入院や重大な災害などのために勾留を一時的に解く勾留執行停止の申立をすることによって釈放を目指します。
逮捕~起訴・不起訴までの流れ
【起訴後の釈放Ⅱ】保釈に強い弁護士をつけるのが有利!
逮捕・勾留されている容疑者や犯人が起訴されて正式裁判にかけられた場合には、裁判段階においてもほとんど自動的に勾留による身体拘束が継続されてしまいます。
この起訴後の裁判段階における釈放手続きで最も多く使われているのが保釈です。
保釈とは、保釈保証金(いわゆる保釈金)の納付を条件として住居等の制限のもとに被告人の身体拘束を解く釈放制度です。
保釈の多くは、弁護人弁護士からの請求によってなされ、弁護士が裁判所や裁判官に保釈を請求する手続きをして、それが認められれば保釈金を納付して釈放されることになります。
保釈の得意な弁護士に依頼することで、保釈による身柄解放の成功率を上げることができるのです。
保釈のメリット
- 会社や学校に戻れる可能性がある
- 示談や、打合せなどの裁判準備が十分にできる
- 家族のもとで安心して裁判にのぞめる
保釈の流れ
保釈が認められるには
1 保釈が認められるかどうかの判断期間
保釈請求から保釈許否の判断が出るまでの期間は、一般的に2~3日です。
土日をはさむ場合は4~5日かかることもあります。
2 保釈金額の相場
保釈金は、保釈を認める条件として、裁判所への納付を求められるお金です。
保釈請求に対する裁判所の保釈決定があっただけでは足りず、裁判所に保釈金を納付して初めて容疑者・犯人を留置場や拘置所から釈放してもらうことができます。
保釈金の額は、被告人の経済状態と罪の重さなどを考慮して、裁判所が決めます。
保釈金の相場としては、一般的には200万円前後となることが多いですが、事件によっては500万円を超える場合もあります。
なお、保釈金は、被告人が証拠隠滅などをせずにきちんと裁判に出頭していれば、裁判終了後に返却されます。
3 保釈が認められるための条件
保釈が認められるためには、
- 被告人が証拠隠滅をする危険がないこと
- 被告人が被害者や事件関係者及びその親族などに接触する危険がないこと
- 被告人が逃亡する危険がないこと
の3点を説得的に主張することが特に重要です。
また、保釈を勝ち取るために、被告人の身元を引受ける身元引受人の存在も重要です。
保釈の種類と条件
保釈には、権利保釈、裁量保釈、職権保釈の3種類があります。
1 権利保釈
刑事訴訟法89条により、被告人が以下の6つの事由(権利保釈除外事由)のいずれにも当たらない場合に、裁判所が保釈を認めなければならない場合です。
- 死刑、無期、短期1年以上の懲役刑や禁固刑に当たる罪を犯したものであるとき
- 以前に死刑、無期、長期10年を超える懲役刑や禁固刑に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき
- 常習として長期3年以上の懲役刑や禁固刑に当たる罪を犯したものであるとき
- 罪証隠滅のおそれがあるとき
- 被害者やその事件の関係者や親族の身体もしくは財産に害を加えまたはこれらの者を畏怖させる行為をするおそれがあるとき
- 被告人の氏名または住所がわからないとき
2 裁量保釈
上記の6つの権利保釈除外事由のいずれかに当たる場合でも、犯罪の性質や情状、被告人の経歴、前科や健康状態、家族関係などから保釈を相当とする事情がある場合に、裁判所が職権で保釈を認める場合です。
3 職権保釈
被告人の勾留が不当に長くなった時に、裁判所が請求または職権で保釈を認める場合です。