器物損壊罪

2021-02-18

器物損壊罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

Aさんは、世界遺産に登録されている寺社の山門の壁に油性ペンで落書きをしたとして器物損壊罪の容疑で逮捕されてしまいました。これを聞いたAさんの家族は、刑事事件に強い弁護士に初回接見を依頼しました。
(フィクションです。)

~器物損壊罪~

刑法第261条の条文は、「前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者」について器物損壊罪が成立するとしています。
ここでいう「前3条」とは、公用文書等毀棄罪(刑法第258条)、私用文書等毀棄罪(刑法第259条)、建造物損壊及び同致死傷罪(刑法第260条)のことをいいます。
そうすると、器物損壊罪が想定する「他人の物」とは、公用文書等、私用文書等、建造物等以外の物であるといえます。

上の事案では、寺社の山門の壁が目的物となっています。
ここで、寺社は建物であることからその山門の壁については「建造物等」であり、器物損壊罪における「他人の物」にあたらないのではないかが問題になります。

建造物等損壊罪における「建造物」とは、屋根があり、壁や柱で支えられ、土地に定着し、その内部に人の出入りが可能な家屋や建築物をいいます。
そして、建築物そのものではなく、ドアや壁など建築物に付随する物が「建造物」に当たるかどうかは、その物と建築物がどの程度接合しているのかやその物が建造物においてどの程度重要であるかなどを総合して判断されます。
過去の裁判例において「建造物」に当たると判断された物の例としては、天井版や屋根瓦、住居玄関ドアなどがあります。
他方で、「建造物」に当たらないと判断された物の例としては、ガラス障子や雨戸、竹垣や畳などがあります。
上の事案の寺社の山門の壁については、寺社という建造物の一部としてではなく、別個独立した物であると判断されたことから「建造物」ではないとされたものであると考えられます。
したがって、建造物損壊罪の「建造物」ではなく、器物損壊罪における「他人の物」にあたると考えられるのです。

器物損壊罪における「損壊」とは、財物自体の形状を変更したり滅尽させたりする典型的な破壊行為のみならず、事実上・感情上その物を本来の用途に従って使用できなくして本来の効用を失わせることをいいます。
典型的な破壊行為としては、例えば、他人の壺を割るという行為が考えられますが、これが「損壊」に含まれることに疑いはありません。

他方で、上の事案のような壁に落書きをする行為は、壁を破壊したわけではないので典型的な破壊行為とはいえません。
しかしながら、過去の裁判例においては、公園の公衆トイレにスプレーで落書きしたという事案について、落書きをしただけでは公衆トイレの効用を喪失させるとまではいえないものの、「建物の外観・美観を著しく汚損し、そのままの状態で一般の利用に供することを困難にするとともに、再塗装を要するなど原状回復に相当の困難を生じさせた」として器物損壊罪の成立を認めた裁判例もあります。
この裁判例に従うと、寺社の山門の壁に油性ペンで落書きをした場合、その壁の外観を著しく汚損することになりますし、油性ペンという簡単には消せないペンで落書きをしたことは原状回復に相当の困難を生じさせたとして、「損壊」に当たると考えられます。

そうすると、Aさんには器物損壊罪が成立する可能性があります。
この場合、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処せられる可能性があります。

~文化財保護法~

「損壊」の対象が、単に「他人の物」にとどまらず「特別に保護されているもの」に当たる場合、文化財保護法違反となります。
「特別に保護されているもの」には、たとえば有形・無形文化財や民俗文化財、特別史跡名勝天然記念物や国宝などが含まれます。
上の事案の寺社は世界遺産に登録されているとのことで、「特別に保護されているもの」に当たる可能性があります。
そうすると、一般法である器物損壊罪ではなく、より刑の重い器物損壊罪の特別法である文化財保護法違反に切り替えて捜査が進められる可能性があります。
文化財保護法違反となった場合には、5年以下の懲役もしくは禁錮または30万円以下の罰金に処せられることがあります。

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