窃盗の見張りについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
名古屋市天白区に住むAさんは、先日会社を解雇され、無職となりお金に困っていました。そんな中、Aさんは数年ぶりにパチンコ店で会った知人の男Bさんから、「お金に困っているの?」、「それなら、家に入って貴金属を盗ってそれを売って金にしよう」ともちかけられ、この話に乗ることにしました。犯行日当日、犯行場所で、AさんはBさんから「俺が中に入ってやるから、誰も来ないかどうか外で見張りをしていてくれ」と言われました。そして、Aさんは外で見張りをしていたところ、被害者宅から貴金属を盗ってきたBさんから「中におばさんがいた。貴金属の在りかを吐かなかったので、ナイフで脅した」と言われました。その後、AさんとBさんは現場から逃走しました。そして、数か月後、愛知県点白警察署に、Aさんは住居侵入罪と窃盗罪の共犯、Bさんは住居侵入罪と強盗罪で逮捕されてしまいました。
(この事例はフィクションです)
~窃盗と見張り~
今回の事例でAさん自身は住居侵入罪、窃盗罪にあたる行為はしていません。
しかし、AさんとBさんが意思を通じ合って(犯罪の共同実行の意思)、実質的に協力し合って犯罪を犯した(犯罪の共同実行の事実)と認められる場合には、Aさんも住居侵入罪、窃盗罪(の共犯)に問われます。
(住居侵入等)
第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(共同正犯)
第六十条 二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
ところで、Bさんは強盗罪に当たる行為をしていることから、Aさんにも強盗罪に問えないかが問題となります。
しかし、判例は、
Aさんが窃盗罪の認識であれば、強盗罪と「重なり合う」窃盗罪の範囲でのみ刑責を負う
としています。何をもって重なり合うとするのかは別の機会に解説を譲ることにして、Aさんとしては、Bさんが強盗罪を犯すことは意外だったのですから、強盗罪まで責任を負わせるのは酷だという考えです。ごく当たり前といえば当たり前の結論です。
一方の、Bさんは強盗罪についてはAさんと共謀していないのですから、強盗罪については単独犯としての責任を負うことになります。
~共犯と逮捕~
共犯事件においては、通常の事件よりも逮捕、勾留される可能性は高くなってしまいます。
一般的に、共犯事件は計画性があって、事件の悪質性が高いと考えられます。また、仮に、共犯者の双方、あるいは一方を釈放してしまうと、口裏合わせや罪のなすり合いなどの罪証隠滅行為を働く可能性や重たい量刑をおそれて逃亡する可能性が高いと考えられてしまうからです。
見張り役というと実際に犯罪行為をしていないので、罪にならない、罪になるとしても軽いものだろうと思ってしまうかもしれません。
しかし、共犯者同士の人間関係、犯行に果たした役割、犯行後の分け前等によっては、実際に犯罪行為を行った者(今回はBさん)と同じ量刑かそれ以上となる可能性も否定はできません。
見張りを頼まれても、罪に問われる可能性があることは十分に認識し、きっぱりと断る必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、窃盗事件をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間受け付けております。