物を持ち去っても窃盗罪にならない場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは生活に困ったため、刑務所に入りたいと考えていました。
そこでAさんは、誰かの物を持ち去り、すぐに自首して有罪になり、刑務所に入ることを思いつきました。
ある日の夜、Aさんは愛知県犬山市の路上で音楽ライブをしていた、VさんのCDを持ち去り、そのまま50メートル離れた愛知県犬山警察署の交番に持って行って、警察官に「窃盗罪をしたので自首をします」と言いました。
(フィクションです)
【刑事事件について】
AさんはVさんのCDを持ち去っているので、一見窃盗罪が成立するように見えます。
しかしこの場合は窃盗罪は成立しません。
理由などをみていきましょう。
まず、窃盗罪は刑法第235条に規定があり
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
とあります。
窃盗罪が成立するには不法領得の意思が必要とされていますが、不法領得の意思とは、「権利者を排除して他人の物を自己の所有物として」、「その経済的用法に従い利用、処分する意思」のことと言われています。
事例の場合は、Aさんは罪を犯して有罪となり、刑務所に入る目的でCDを持ち去っています。
しかし、一般的にはCDは音楽を聴くためのもの(経済的用法は音楽を聴くこと)です。
Aさんは、CDを持ち去った後は、自首するまでこれを交番に持っていくだけが目的でした。
また、Aさんが目指している「刑務所に入る」という目的は、Aさんが有罪判決を受けて実現するもので、CDを聴いて実現するものではありません。
よって、AさんにはCDを経済的用法に従って利用したり処分する意思が無く、いわゆる不法領得の意思が欠けているのでAさんには窃盗罪が成立しない可能性があります。
ただし、AさんがCDを持ち去った後、自首せずCDを捨ててしまった場合は、CDが使用できなくなるなるため、器物損壊罪が成立する可能性が有ります。
【自首とはどのようなことですか】
Aさんが交番で警察官に伝えた「自首」とはどのようなことか見ていきましょう。
自首とは、事件の犯人が警察等の捜査機関に、自発的に窃盗の事実を申告して処分を求めることです。
自首が成立するには、①捜査機関に窃盗事件が発覚していないこと、②捜査機関に自発的に自己の犯罪を申告すること、が必要です。
この条件が欠けている時は、警察に出向いたとしても自首は成立しません。
自首を行った場合の刑法上のメリットは、刑が減刑される可能性があるというものです。
ですので、必ずしも刑が減刑されるわけではなく、自首による減刑は裁判所の自由な裁量によりなされます。
しかし、自首をすることによって逮捕される可能性が低くなる可能性はあります。
事件ごとに判断され、自首をしたからといって逮捕されなくなるわけではありません。
また、警察など捜査機関がすでに事件や犯人を把握している場合に、捜査機関の呼び出し等に応じて犯人が出向くことを任意出頭といいます。
任意出頭は、自首とは異なり刑法上、刑の減刑等の効果は定められていません。
ですが、任意出頭をするということは、犯人の反省の情を示す事情として判断される可能性があり、有利な情状として取り扱われる可能性があります。
窃盗事件を起こして自首をしようと考えているが、自首をした方がよいのか、そうではないのか、など自首の事でお悩みの方は、刑事事件に強い弁護士に一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、年間多数の刑事事件への対応をしてきた刑事事件専門の法律事務所です。
窃盗罪や自首に詳しい弁護士も在籍しております。
ご家族やご自身が窃盗罪を起こしてしまった、捜査機関に自首をするべきか悩んでいる方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。