処方箋の偽造と逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【刑事事件例】
愛知県稲沢市に住むAさんは不眠症を患っており、毎月睡眠薬(向精神薬)を処方されていました。
しかし睡眠薬が効きにくくなったAさんは、もっと大量に睡眠薬が欲しいと思いました。
そこでAさんは自分に処方された処方箋を大量にカラーコピーして、それを愛知県内の複数の調剤薬局の受付に提示して睡眠薬を不正に受け取っていました。
Aさんはこれを1年にわたり繰り返していましたが、ある日愛知県稲沢警察署の警察官がAさんの自宅に来て逮捕状を提示して、Aさんは逮捕されました。
(フィクションです)
【処方箋の偽造や行使は犯罪になります】
処方箋をパソコンで自分で作成したり、カラーコピーしたり、薬を書き加えたり等をして薬局に持ち込み、不正に処方薬を受け取ることは犯罪になります。
どのような犯罪になるのか具体的に見ていきましょう。
1 詐欺罪(刑法第246条)
・人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
・前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
2 私文書偽造罪(刑法第159条)
・行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、3月以上5年以下の懲役に処する。
・他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、同様とする。
・刑法159条1項と2項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
3 偽造私文書等行使罪(刑法第161条)
・刑法159条(私文書偽造行使等)と160条(虚偽診断書等作成)の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。
・前項の罪の未遂は、罰する。
4 麻薬及び向精神薬取締法違反
・麻薬及び向精神薬取締法第70条第14号の規定により、1年以下の懲役若しくは20万円以下の罰金、又はこれを併科
麻薬が処方される処方箋を偽造し、又は変造した場合にとわれます。
・麻薬及び向精神薬取締法第72条第4号の規定により、20万円以下の罰金
向精神薬が処方される処方箋を偽造し、又は変造した場合にとわれます。
1の詐欺罪は、薬局の受付員に対し、偽造した処方箋をあたかも真正な処方箋のように提出し、欺いた結果、薬を処方されたので詐欺罪が成立します。
2と3の私文書偽造罪と偽造私文書等行使罪については、それが無ければ薬の処方が受けられない処方箋を偽造し、薬局に提出(行使)していますので、両罪が成立します。
4の麻薬及び向精神薬取締法違反については、処方箋に麻薬、若しくは向精神薬が含まれていれば成立します。
今回Aさんは、詐欺罪・私文書偽造罪・偽造私文書等行使罪・麻薬及び向精神薬取締法違反で逮捕されたものと思われます。
【逮捕された後はどうなるのですか】
・逮捕について
今回Aさんは逮捕状を提示されて逮捕されましたが、これを通常逮捕といいます。
逮捕にはその他、緊急逮捕、現行犯逮捕(準現行犯逮捕含む)があります。
逮捕されると、警察官は逮捕時から48時間以内に身柄を釈放するか検察官に送致するかを決定します。
送致された場合、24時間以内に検察官は被疑者を勾留するか否かを決定し、勾留する場合には、裁判所に対し勾留請求を行います。
・勾留について
検察官の勾留請求が裁判所に認められれば、まずは10日間の身体拘束が認められ、場合によってはさらに10日間の延長が認められます。
つまり一度逮捕されると、逮捕から勾留請求までの時間を含めて、最大で23日間の身体拘束を受ける可能性があるということになります。
勾留されると外部との連絡を制限され、さらに接見禁止決定がつくと、基本的に弁護人又は弁護人となろうとする者以外との接見(面会)ができなくなります。
・起訴について
検察官は起訴をするのか、それとも不起訴にするのか、被疑者に対する処分を決定します。(勾留されている場合には、勾留期間が満了する前に決定します。)
起訴されると、刑事裁判が始まります。
起訴された後は、留置されていれば警察署の留置場から拘置所に移動することがあります。
また、一定の金銭を裁判所へ預けることによって、身柄拘束から解放してもらうこともできるようになります。(保釈といいます。)
・公判について
裁判では、無罪判決か有罪判決の言渡しを受けます。
有罪判決の場合には、執行猶予を付けられるかどうかが判断されます。
以上が逮捕された後の大まかな事件の流れです。
刑事事件に強い弁護士は、事件の各段階において、適切な弁護活動を行っていきます。
ご家族が逮捕されてお困りの方は、ぜひ刑事事件に強い弁護士に事情をお話しください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、薬物事件を多数扱っている刑事事件専門の法律事務所です。
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