詐欺事件で不起訴処分を獲得したことにつき、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【事案の概要】
名古屋市北区在住のAさんは、実際には売り渡す意思がないにも関わらず、映画の前売り券をインターネットオークションに出品し、代金を騙し取るということを繰り返していました。
代金を振り込んだのに商品が発送される気配がないことを不審に思った入札者の一人のVさんが、愛知県警察北警察署に相談したところ、Aさんによる犯行であることが発覚し、北警察署の警察官によりAさんは逮捕されました。
Aさんのご両親は、「息子は私立の高校で教師をしているため、前科が付くと教員免許が剥奪されてしまいます。なんとか不起訴処分になりませんでしょうか」とご相談時お話しされました。
(*守秘義務の関係から、一部異なる表記をしています。)
【教員免許が剥奪される場合とは】
教育職員免許法10条1項1号により、禁錮以上の刑に処された者(同法5条1項3号参照)は、教員免許を剥奪されると定められています。
(※「禁錮以上の刑」とは、懲役や禁錮の実刑判決、懲役や禁錮の執行猶予の判決のことをいい、罰金刑はここに含まれません。)
教育職員免許法
(授与)
第五条
1 普通免許状は、別表第一、別表第二若しくは別表第二の二に定める基礎資格を有し、かつ、大学若しくは文部科学大臣の指定する養護教諭養成機関において別表第一、別表第二若しくは別表第二の二に定める単位を修得した者又はその免許状を授与するため行う教育職員検定に合格した者に授与する。ただし、次の各号のいずれかに該当する者には、授与しない。
一、二(略)
三 禁錮以上の刑に処せられた者
(失効)
第十条
1 免許状を有する者が、次の各号のいずれかに該当する場合には、その免許状はその効力を失う。
一 第五条第一項第三号又は第六号に該当するに至つたとき。
また、学校教育法9条1号により、禁錮以上の刑に処された者は、教職につくことができないと定められています。
学校教育法
第九条 次の各号のいずれかに該当する者は、校長又は教員となることができない。
一 禁錮以上の刑に処せられた者
なお、教員以外にも、前科が欠格事由となるため資格の取得が出来ない場合等があります。
【具体的な弁護活動】
今回の事案では、Vさん以外にも被害者の方が多数いたことから、弁護士が、検察官に対して被害者の方の人数の把握と、示談交渉のためVさんを含めた被害者の方の連絡先を教えてほしいと伝えました。
すると検察官から、「被害者の方の数は10人程だが、そのうちVさんを含めた3名は示談交渉に応じるので連絡先を教えてもよいと言っています。」と連絡がありました。
そこで、弁護士がVさん達との示談交渉を速やかに行い、被害弁償を含めた宥恕条項(被疑者を許し、刑事処罰を求めないことを内容とするもの)付きの示談を締結することができました。
そして、弁護士が検察官に対し、宥恕条項付きの示談が成立しており、Aさんは今回の事件が新聞にて実名報道され、当時勤務していた私立高校も自主退職するなど社会的制裁を受けたことなどを挙げ、不起訴処分が相当であると主張しました。
その結果、Aさんは不起訴処分となりました。
【まとめ】
今回の事案のように、刑事処分の内容によって現在の仕事で利用する資格の制限や免許剥奪がなされるおそれがある場合には、速やかに刑事事件に強い弁護士に依頼し、これらを回避するための弁護活動を行うことが不可欠です。
特に、今回の事案で問題となった詐欺罪は、罰金刑が定められていないので、起訴されれば必ず「禁錮以上の刑」に処されることとなってしまいます。
そのため、Aさんのように、教員免許を持っている場合、これを剥奪されることを回避するためには、不起訴処分を獲得する必要があります。
不起訴処分の獲得のためには、被害者の方に配慮した適切な示談交渉を行うことが重要になりますので、お困りの場合はすぐに刑事事件に強い弁護士にご相談ください。