【裁判紹介】殺人事件において執行猶予がついた裁判例

殺人事件の裁判例等について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説いたします。

【事案】

自宅で当時3歳の長男の首をタオルで絞め、窒息死させたとして殺人罪に問われた被告人の裁判員裁判で、静岡地裁浜松支部は、懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役5年)の判決を言い渡した。
(産経新聞「幼児絞殺の母親に猶予判決」(2020/1/29)」を引用・参照)。

【殺人罪における執行猶予判決】

刑法において、殺人罪は刑法第199条に定められています(「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する」)。
殺人罪が成立するためには、故意犯である以上(刑法38条1項本文参照)死亡結果を認識・認容している必要があり、かかる故意が認められない場合には別途傷害致死罪(刑法205条)や(重)過失致死罪(刑法210条 、211条)が適用される可能性があります。
殺人は、他人の生命という最も重要な利益を侵害するという極めて重大な犯罪行為であり、厳しい刑罰が科されることが一般的です。
実際に法定刑としても、「死刑又は無期懲役」が定められており、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(通称、裁判員法)2条1項1号は「死刑又は無期の懲役……に当たる罪に係る事件」を裁判員裁判対象事件としていることから、殺人事件は裁判員裁判となることが原則であることにも留意する必要があります。

もっとも、殺人罪が極めて重大な犯罪であるとは言っても、犯罪の内容や他の事情によっては執行猶予が付くことがないわけではありません。
本件では、被告人の責任能力が十分ではないとして心身耗弱(刑法39条2項)が認められています。
同項は「心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」とし、刑の必要的減軽を定めていることから本判決のような執行猶予判決が適当であると判断されたものと考えられます。

【殺人事件における弁護活動等】

本事例では、「懲役3年、執行猶予5年」の執行猶予判決が言い渡されています。
もっとも、上述したような心神耗弱が認められるケースはそれほど多くなく、近年において殺人罪で起訴されながら執行猶予判決に留まるケースはいわゆる介護疲れ殺人の事例が中心になっていると思われます。
近時の事例 でいえば、介護を苦にして自宅で配偶者(85歳)の首を絞めて殺害した被告人に懲役3年・執行猶予5年を言い渡したケースがあります。
殺人事件の量刑を決定するににあたっては動機の悪質性などが重要な要素となっていると考えられています。
上記で紹介したものも含めたいわゆる介護疲れ殺人においては動機の悪質性の低さ等から執行猶予判決となっているものも少なくなく、弁護活動の質が実刑判決か執行猶予判決かを分ける可能性もあることから専門性を有する弁護士による弁護を受ける実益があるといえるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、殺人事件を含む刑事事件を専門的に取り扱っている法律事務所です。
殺人事件で逮捕・起訴された方のご家族等は、365日・24時間いつでも無料通話可のフリーダイヤル(0120-631-881)までまずはお問い合わせください。

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