花火大会において発生した複数人による乱闘事件を参考に、共謀がない場合でも傷害罪に問われることについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
花火大会での乱闘事件
会社員のAさんは、夏休みの週末に行われた半田市の花火大会を友人と共に観覧し、そこでお酒を飲んでいました。
そんな中、原因まで分かりませんが、観覧者同士で喧嘩が始まり、殴られた男性がAさんの方に倒れ込んできて、Aさんが飲んでいた、缶ビールをこぼしてしまいました。
そこで缶ビールをこぼされたことに腹が立ったAさんは、この男性の胸倉を掴んで起き上がらせ、腹に足蹴りをしたり、頭を平手で殴る暴行を加えたのです。
そこに半田警察署の警察官が臨場し、Aさんも、この男性に対して暴行した容疑で警察署に連行され、その後、被害者の男性が怪我を負っていたとして傷害罪で逮捕されることになりました。
男性に暴行した事実は認めているAさんですが、男性の怪我は他の人の暴行によるものだと、傷害罪の適用について納得ができません。
(フィクションです。)
傷害罪とは
傷害罪は、刑法204条において、「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と規定しています。
ここでの「傷害」とは、主に人の生理的機能に障害を与えることをいい、殴る蹴るなどの暴行行為による外傷性の怪我の他、故意的に性病を発症させたり、精神疾患を発症させたりすることも、傷害罪でいうところの「傷害」に当たる場合があります。
ちなみに、暴行を行ったが、怪我を負わせるまでには至らなかった場合は、刑法第208条の暴行罪が適用されます。
複数人による暴行による傷害罪
共犯
複数人が共謀して、被害者に対して暴行を加え、その結果被害者が傷害を負った場合は、被害者の傷害が、誰の暴行行為によって生じたものか関係なく、暴行行為に加わった者は当然のこと、場合によっては直接被害者に暴行していない者も、共犯として傷害罪に問われます。(刑法第60条)
共犯としての傷害罪が成立するには、共犯同士の間で「共謀」が必要となりますので、今回のような参考事件の場合は、Aさんと、他の乱闘に参加していた人たちの間で共謀が認められないでしょうから、適用されません。
同時傷害
他方で、刑法207条には「2人以上で暴行を加えて人を傷害した場合において、…その傷害を生じさせた者を知ることができないときは、共同して実行した者でなくても、共犯の例による。」との条文があります。
これはどんな条文かというと、共謀がなくても、つまり上記した共犯に該当しない場合でも、被害者の怪我が誰の暴行によるものか判断できない場合は、暴行に加わった者全員に傷害罪が適用されるというものです。
ですから、参考事件のような場合でAさんが、「自分の殴った行為でこんな怪我を負うはずがない!」と主張したとしても、傷害罪の刑責を負う可能性があるのです。
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