強盗罪で別件逮捕されたら

2019-05-07

強盗罪で別件逮捕されたら

~ケース~

北名古屋市在住のAさんは定職に就いておらず,日雇い労働などで暮らしていた。
ある日,Aさんはお金に金銭的に困窮してしまいV銀行において銀行強盗をしてしまった。
Aさんはその場では逮捕されなかったが,防犯カメラの映像などからAさんが犯人として浮上した。
しかし、愛知県西枇杷島警察署はAさんが犯人であるという決定的な証拠を発見できず,逮捕に踏み切れないでいた。
そこで、愛知県警察西枇杷島警察署はAさんを別に起こしていた窃盗罪で別件逮捕し,Aさんは勾留された。
しかし実際には、窃盗罪についてではなく強盗罪についての取調べが中心であった。
Aさんは別件逮捕ではないかと感じ,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に弁護を依頼した。
(フィクションです)

~別件逮捕と勾留~

今回のケースで、警察はAさんを強盗罪の取調べをする目的で逮捕,勾留しています。
いわゆる別件逮捕の典型的なケースですが,このような捜査は許されるのでしょうか。

まず,別件について,逮捕の必要性がないような場合,逮捕そのものが違法であると考えられます。
その場合,違法な逮捕における取調べであり,供述証拠は原則として証拠能力がありません。

一方,問題となるのは別件逮捕そのものは適法であるような場合です。
別件逮捕における問題点として指摘されているのは以下の5つです。

まず第一に,別件逮捕は令状主義の潜脱である点です。
逮捕や勾留は身柄拘束という身体の自由を制限しますので、厳格な要件のもと,裁判官によって発せられた令状が必要です。
今回のケースのように,逮捕状の請求が可能なほど嫌疑が十分でない場合に,取調べのために別件逮捕するのは令状主義を潜脱することになるでしょう。

2つ目は,逮捕・勾留の効力は基礎となっている被疑事実のみに及ぶとする事件単位の原則に反することです。
逮捕状などは一つの事件に対応したものであるのに,別の事実について取調べをすることになるからです。

3つ目は,別件逮捕を認めてしまうと自白の獲得を目的とした見込み捜査を許容することになってしまいます。
すなわち,前歴・手口などから事件の犯人ではないかという思い込みで,十分な証拠がないのに別件で逮捕し自白させるといった捜査を許容してしまうことになります。

4つ目は,今回のケースでは別件である窃盗罪で逮捕・勾留された後,本件である強盗罪で再び,逮捕・勾留された場合,刑事訴訟法の定める逮捕・勾留の期間を脱法的に延長できていることになります。

最後に,別件逮捕での供述を証拠とすることができるかどうかですが,この点は,当該別件逮捕が違法の場合に証拠能力を認めるかどうかという問題になります。

この点、別件で逮捕した場合に本件についての取調べが一切許されないかどうかが問題となります。
これについて裁判所は,「甲事実について逮捕・勾留中の被疑者に対する乙事実についての取調べが,甲事実に基づく逮捕・勾留に名を借りて,その身柄拘束を利用し,乙事実について逮捕・勾留して取り調べるのと同様の効果を得ることをねらいとして行われたといえる場合」は違法であるとしました(大阪高判昭59・4・19)。
これに該当するかどうかは,両事実の罪質・態様の相違,法定刑の軽重,捜査の重点の置き方,本件に関する客観的な証拠の程度,別件についての身柄拘束の必要などの諸事情に照らして判断されます。

例えば、覚せい剤所持や譲受の疑いで逮捕した場合に,覚せい剤使用についても取調べをするというのは本件と別件は密接に関連しており,本件を取調べることが別件の取調べともいえます。
このような場合には、別件逮捕した場合でも本件に重点をおいた取調べも許容されるといえるでしょう。
また,薬物事件などではまとめて取調べを行う方が本件で再逮捕されるよりも実質的な身柄拘束の期間が短くなりますので被疑者にとっても有利であるといえるでしょう。
なお,被疑者が自発的に供述するような場合には本件に対する取調べも許容されると考えられています。

しかし,今回のケースでは本件である強盗罪と別件である窃盗罪は完全に別個の事件です。
そして別件である窃盗罪に基づく逮捕・勾留に名を借りて,本件である強盗罪について取調べを行っていますので違法な別件逮捕であるといえるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件に強い法律事務所です。
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愛知県警察西枇杷島警察署の初回接見費用 35,700円)