自殺強要で取調べ

2020-05-27

自殺強要で取調べ

自殺強要で取調べを受けるケースについて,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

【事件】

Aさんは保険金を得る目的で愛知県豊田市においてVさんに交通事故を起こして死亡するよう脅迫しました。
VさんはAさんに指示されたように車を運転し事故を起こそうとしましたが寸前で逃走し豊田警察署に出頭しました。
Vさんの情報をもとにAさんは強要の疑いで取調べを受けることになりました。
(フィクションです)

【自殺の強要】

強要罪と自殺関与罪・殺人罪の関係について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

AさんはVさんを自殺するよう脅迫しました。
この行為は強要罪(刑法第223条)に当たる可能性があります。

刑法第223条
第1項 生命,身体,自由,名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し,又は暴行を用いて,人に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害した者は,3年以下の懲役に処する。
第2項 親族の生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し,人に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害した者も,前項と同様とする。

現代の日本において自殺することは法的にはもちろん道徳的・倫理的にも義務とされることはありませんので,脅迫して自殺させることは強要罪に当たり得ます。

しかし,人の生命は他の法益よりも重要で要保護性が高いため,自殺を強要した場合には他の犯罪に問われる可能性があります。
その一つが殺人罪(刑法第199条)です。

刑法第199条
人を殺した者は,死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

Aさんのケースと似た事案で,自動車事故を装った方法により被害者を自殺させて保険金を取得しようと企てた被告人が,暴行,脅迫を交え被害者に対し漁港の岸壁上から乗車した車ごと海中に飛び込むように執拗に命令し,被告人の命令するように海中に飛び込む以外の行為を選択できない精神状態に陥らせ実行させた事案があります。

この事件で最高裁は「被告人は,以上のような精神状態に陥っていた被害者に対して,本件当日,漁港の岸壁上から車ごと海中に転落するように命じ,被害者をして,自らを死亡させる現実的危険性の高い行為に及ばせたものであるから,被害者に命令して車ごと海に転落させた被告人の行為は,殺人罪の実行行為に当たるというべきである」と判示しました(最決平成16・1・20刑集58巻1号1頁)。

したがって,Aさんの脅迫の程度やそれによってVさんがどのような精神状態に陥っていたのか,Vさんが死亡する現実的危険性の高い行為に及んでいたといえるかどうかによっては,判例による限り殺人未遂罪の適用も考えられます。

また,ここまではVさんが行為時に自殺する意思がなかったとする前提のお話でしたが,もし自殺する意思があったとしても自殺教唆として自殺関与罪(刑法第202条前段)に問われる可能性があります。

刑法第202条
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ,又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は,6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。

Aさんが行った脅迫がどのようなものであったかにもよりますが,AさんがVさんを脅迫した時点で自殺を決意していないものの,Aさんの脅迫を通じて自殺を決意した場合は教唆行為と教唆による自殺意思の発生が認められます。
そのうえでVさんが自らを死亡させる現実的危険性の高い行為に及んだ場合,Aさんは自殺教唆未遂罪に問われる可能性があることになります。

以上から,暴行・脅迫によって相手方に自殺するよう命令した場合,強要罪や殺人罪,自殺関与罪およびこれらの未遂犯として処罰される可能性があります。

Aさんも事件の詳細によってこのご紹介したいずれの罪にも問われ得ることになります。

【弁護活動】

Aさんから依頼を受けた弁護士は,事件の具体的な状況を調査します。

調査の結果と捜査機関からかけられている被疑事実に合わせて取調べ等を受けるにあたっての適切な法的アドバイスをAさんに提供します。

Vさんに対して示談を申し入れることも活動内容となります。
事実の具体的内容や示談内容にもよりますが,示談を素早く成立させることで不起訴処分や執行猶予を得られる可能性を高めることができます。

その他にもAさんの情状となりうる事実を主張するなど,弁護士の活動は多岐にわたります。

これらの弁護活動は初期から行わなければ十分な結果を期待することが難しくなります。
刑事事件では証拠等を捜査機関が独占している場合が多く,また時間の経過によってどんどん手続が進んでしまうからです。

強要罪や自殺教唆罪の被疑者となってしまった方,豊田警察署で取調べを受けることになってしまった方は,お早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。

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