脅迫事件の弁護活動

2019-12-10

脅迫事件の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

【事件】

Aさんは長年交際していたVさん(愛知県岡崎市在住)から別れを告げられました。
別れることに納得のいかないAさんはSNSでVさんに対し「分かれるくらいならお前を殺す」「お前を殺して俺も死ぬ」などと数十件の書き込みをしました。
怖くなったVさんが警察に相談したことをきっかけに,Aさんは脅迫罪の疑いで岡崎警察署で取調べを受けることになりました。
(フィクションです)

【脅迫罪】

他人に対して「脅迫」をした場合、脅迫罪(刑法第222条)によって処罰対象とされています。
「脅迫」とは、相手方に対して一般通常人であれば恐怖心を起こす(畏怖する)であろう程度の害悪を告知することをいいます。

刑法第222条
第1項 生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
第2項 親族の生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も,前項と同様とする。

あくまで客観的な脅迫の存在があればよいので,実際に害悪を告知された人(被害者)が畏怖することは必要とされていません。
また,害悪の内容は「殺す」とか「歯を折る」など犯罪(これらはそれぞれ殺人罪と傷害罪の内容)でなくともよく,その状況下において一般通常人であれば恐怖心をもつほどの具体性・現実性を有するものであれば脅迫罪における脅迫となると考えられています。

脅迫といえるためには,その害悪の発生が行為者自身によって何らかの形で実現可能なものでなければなりません。
「雷が落ちるぞ」や「竜巻の被害に遭わせるぞ」などといった天災その他不幸な出来事の発生を単に予言するような内容は脅迫に当たらないということになります。

告知の方法に限定はありません。
文書・口頭・動作・挙動など,どのような方法でも脅迫することは可能です。

ただし,害を加える対象が何であろうと脅迫罪に当たるというわけではありません。
条文によって,本人(被害者自身)または被害者の親族の生命,身体,自由,名誉または財産に対して害を加える旨を告知しなければ脅迫罪にはなりません。

親族とは,民法第725条に規定される六親等内の血族,配偶者,三親等内の姻族に限定されます。
したがって,脅迫の相手方の恋人や親友に害を加える旨を告知する行為は脅迫罪には当たらないことになります。

なお,脅迫や暴行を手段に義務のない行為を行わせたり権利の行使を妨害した場合は強要罪(刑法第223条)に,有形・無形を問わず財産や利益を取得した場合は恐喝罪(刑法第249条)または強盗罪(刑法第236条)に当たる可能性が出てきます。

強要罪の法定刑は3年以下の懲役,恐喝罪の法定刑は10年以下の懲役、強盗罪の法定刑は5年以上の有期懲役(上限20年)となっています。

また,強要罪、恐喝罪および強盗罪には未遂犯処罰規定があり,特に恐喝罪では脅迫にあたってその内容や相手方に制限はありません(広義の脅迫)ので,さらに注意が必要です。

【脅迫事件における弁護活動の方針】

脅迫罪の被疑者となってしまった方から依頼を受けた弁護士は,その行為が脅迫罪における「脅迫」といえるのかどうかを検討します。

解説にも書いたように,「脅迫」に当たり得る範囲は相当広く,どのようなものが脅迫罪に当たるかを判断することが難しい場合が多いからです。

脅迫罪に当たらないと考えられる場合はその根拠を示し無罪を主張します。
脅迫罪に当たり得る場合は,被害者と示談し不起訴や執行猶予の獲得といった処罰回避の実現に向けて動きます。

示談について,前提として脅迫の被害者は脅迫行為によって強い精神的負担を負っていることを考えねばなりません。
そのような被害者に加害者が直接かかわることは避けられるべきで,弁護士を通じて示談交渉を行うことが最も現実的となります。

Aさんのように交際関係やその継続を迫ったり,あるいは溜まったストレスから脅迫に及ぶ方は少なくありません。
このような理由の場合,加害者も精神科や心療内科に通院していただいたり,専門家のカウンセリングを受けていただくことで再犯可能性を減らすことができます。
通院やカウンセリングの受診をしていただいた場合,医療機関の受信証明書や診断書を提出することも,反省の姿勢や再犯防止に取り組んでいることを示すことにつながり,不起訴などを得やすくなります。

脅迫罪の被疑者となってしまった方,福岡県警察田川警察署で取調べを受けることになってしまった方は,お早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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