強制わいせつ等致傷罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します
男性であるAさん(30歳)は、深夜に女性Vさん(20歳)の自宅前でVさんが帰宅するのを待ち伏せし、帰宅したVさんの後ろから顔にタオルを押し当てて引き倒し、体を触るなどした際に顔などに全治1週間の軽いけがをさせたとして、愛知県東海警察署の警察官により強制わいせつ等致傷罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族は、刑事事件に強い弁護士に初回接見を依頼しました。
(事実を基にしたフィクションです。)
~ 強制わいせつ等致傷罪 ~
強制わいせつ罪(刑法第176条)、準強制わいせつ罪(刑法第178条第1項)、監護者わいせつ罪(刑法第179条第1項)の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を傷害した場合には、強制わいせつ致傷罪が成立します。
まず、強制わいせつ罪は、①13歳以上の者に対して暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をすること、又は、②13歳未満の者に対してはわいせつな行為をすることによって成立する犯罪です。
次に、準強制わいせつ罪は、人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心身を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせてわいせつな行為をすることによって成立する犯罪です。
最後に、監護者わいせつ罪は、平成29年刑法改正によって新設された犯罪であり、18歳未満の者に対し、その者を現に看護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をしたことによって成立する犯罪です。
上の事案のAさんは、13歳以上である20歳のVさんに対して、後ろから顔にタオルを押し当てて引き倒すという暴行を加えたうえで、体を触るというわいせつ行為をしているとして、上の3つのわいせつ罪のうち強制わいせつ罪の成立が考えられるということになります。
13歳以上の者に対する強制わいせつ罪が成立するためには、①暴行又は脅迫を用いて、②わいせつな行為をすることが必要となります。
強制わいせつ罪のいう「暴行」・「脅迫」は、暴行罪(刑法第208条)の「暴行」や脅迫罪(刑法第222条)の「脅迫」とは異なり、被害者の反抗を著しく困難にする程度の身体に対する有形力の行使・害悪の告知をいいます。
被害者の反抗を著しく困難にする程度か否かの判断は、加害者と被害者との体格差や性差、暴行・脅迫の態様・内容など様々な事情を考慮して行われます。
例えば、相手の肩をトントンと叩くような行為では、被害者の反抗を著しく困難にする程度とまでは言えないとして、強制わいせつ罪の「暴行」には当たらない可能性が高いです。
また、相手を後ろから羽交い絞めにしたうえで胸を揉むなど、暴行自体がわいせつ行為である場合も、相手方の反抗を著しく困難にする程度のものであれば、強制わいせつ罪の「暴行」に当たる可能性があります。
上の事案では、Vさんは女性であり、一般的に女性よりも力のある成人男性から顔にタオルを押し当てて引き倒されているため、このような暴行を受けた場合には抵抗することはもちろん、逃走することも困難であるといえます。
そうすると、Aさんの行為はVさんの反抗を著しく困難にする程度の「暴行」であるとして、強制わいせつ罪の言う「暴行」に当たると考えられます。
そして、AさんはVさんの体を触っており、胸やお尻などの人の正常な性的羞恥心を害する部位を触ったというばあいには、「わいせつな行為」として、Aさんの行為は強制わいせつ罪に当たると考えられます。
次に、「よって人を傷害した」といえるのかについて、強制わいせつ等致傷罪における致傷結果は、わいせつの機会に行われた密接関連行為・随伴行為から生じたもので足りると考えられています。
つまり、強制わいせつ等致傷罪における傷害結果は、わいせつの機会に行われた暴行・脅迫から生じていれば十分であるということになります。
上の事案でいえば、Vさんは顔などに全治1週間の軽いけがをするという「傷害」を負っていますが、これが引き倒された際に生じたものであっても、体を触られた際に生じたものであっても、「よって人を傷害した」といえるということになります。
そうすると、上の事案のAさんには強制わいせつ等致傷罪が成立する可能性があります。
強制わいせつ等致傷罪が成立した場合、無期または3年以上の懲役に処せられることがあります。
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