俺コロナと嘘の申告をして、偽計業務妨害罪で逮捕された事例につき、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【ニュース概要】
愛知県昭和警察署は、偽計業務妨害の疑いで、40代の男を逮捕しました。
記事によると、別の容疑で逮捕され取調べを受けていた男が、昭和警察署内で「俺コロナだからね。昨日病院で言われた。PCR検査でコロナ陽性」とうその申告をし、昭和警察署の警察官に消毒などをさせ、業務を妨害したということです。
男はその後のPCR検査で陰性が確認されており、認否を留保しているとのことです。
(6月21日中日新聞掲載の記事を参考に、一部変更したものです)
【偽計業務妨害罪とは】
偽計業務妨害罪とは、刑法第233条に規定されています。
「偽計を用いて」とは、人をだましたり、人の不知や勘違いを利用することをいいます。
刑法第233条
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
今回の事案では、新型コロナウイルス感染症に感染していないのにもかかわらず、感染したとうその申告をし、これにより、昭和警察署の警察官にする必要のなかった昭和警察署内の消毒などを行わせているので、同罪が成立すると考えられます。
類似の事案としては、離陸前の航空機内で新型コロナウイルスに感染している旨の発言を行った事案、電車内において新型コロナウイルス感染症に罹患しており、自分に近付くと感染する旨の発言をした事案などがあります。
いずれも、新型コロナウイルス感染症に感染していないのにもかかわらず、「感染した」とうそをついたことで、飛行機や公共交通機関の運行を妨げたことが、「偽計を用いて、…その業務を妨害した」として、偽計業務妨害罪にあたると判断されたようです。
【事案の特殊性から不起訴獲得は難しい】
今回と類似する事案は、新型コロナウイルス感染症が流行して以降、たびたび報道されています。
そして、今回の事案のように、警察官(公務員)の業務を妨害した場合は、不起訴処分の獲得は非常に難しいです。
警察などの公的機関が被害者である場合、基本的に示談には応じてくれないことがほとんどです。
これは、警察官(公務員)の業務を妨害していますので、公務員の公務を侵害された「国」が被害者だと考えられるためです。
したがって、示談交渉による不起訴処分の獲得はほぼ見込めません。
さらに、起訴された場合には、裁判所による厳しい判決が下されることが予想されます。
裁判所は、類似する事案の判決理由に、「新型コロナウイルスが深刻な社会問題となっていたこと」から、「社会全体に及ぼした影響は大きく、発生した結果は相当に重大である」ことを挙げていることが多く、新型コロナウイルスに関連する刑事事件については、厳しい態度で臨んでいることがわかります。
【実刑を回避するためには適切な弁護活動が不可欠】
示談が出来ない場合であっても、罰金刑を求めたり、公判になったとしても執行猶予付き判決を求めるなど、実刑を回避する弁護活動は可能です。
具体例として、示談の申入れをしていた経緯を書面で残すことにより誠意をもって被害回復に努めたことや、直接被害弁償が出来なかった代わりに贖罪寄付をすることが考えられます。
また、情状証人による嘆願などの情状弁護により減刑を求めたり、きちんと反省をしている態度を示すことも大切です。
このように、刑事事件に強い弁護士が適切な弁護活動を行うことで、不起訴や執行猶予を獲得できる場合があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、年間多数の刑事事件への対応をしてきた刑事事件専門の法律事務所です。偽計業務妨害罪事件に詳しい弁護士も在籍しております。是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。