離婚届の偽造で文書偽造事件に発展してしまったら

離婚届の偽造で文書偽造事件に発展してしまったら

離婚届偽造文書偽造事件に発展してしまった場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【刑事事件例】

愛知県碧南市に住むAさんは夫であるVさんと不仲になり、別居状態にありました。
Aさんは離婚届にVさんを装って署名捺印(Vさんの印鑑を使用)し、碧南市役所に提出しました。
碧南市役所は窓口への届け出が夫婦そろってなされたものでなかった場合、離婚届の受理後に、夫婦の一方に通知しており、この通知でVさんはAさんによる離婚届の提出に気付きました。
その後、民事訴訟により離婚の無効が確認されましたが、VさんはAさんの処罰を求めて、愛知県碧南警察署に刑事告訴しました。
その結果、Aさんは愛知県碧南警察署の警察官により有印私文書偽造罪・同行使罪、電磁的公正証書原本不実記録罪・同供用罪の容疑で逮捕されました。
(2019年1月24日に朝日新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

今回の事例のAさんには、有印私文書偽造罪・同行使罪、電磁的公正証書原本不実記録罪・同供用罪と、4つもの犯罪が成立しているようです。
一度に異なる4つの犯罪が成立し逮捕されてしまうとなれば、被疑者であるご本人はもちろん、そのことを知った周囲の方も困惑されることでしょう。
まずは今回のAさんの逮捕容疑である4つの犯罪それぞれついて簡単に見ていくことにしましょう。

【有印私文書偽造罪とは】

刑法159条1項
行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書…を偽造し…た者は、3月以上5年以下の懲役に処する。

有印私文書偽造罪の「偽造」とは、名義を偽ることをいいます。
刑事事件例では、AさんはVさんを偽って離婚届を作成しており、ここに有印私文書偽造罪の「偽造」があったと考えられます。

また、有印私文書偽造罪の「権利、義務若しくは事実証明に関する文書」とは、社会生活に交渉を有する事項を証明するに足りる文書をいいます。
離婚届は、この有印私文書偽造罪の「権利、義務若しくは事実証明に関する文書」に該当します。

以上より、Aさんには有印私文書偽造罪が成立すると考えられます。

【偽造私文書行使罪とは】

刑法161条1項
前2条の文書…を行使した者は、その文書…を偽造し…た者と同一の刑に処する。

偽造私文書行使罪の「行使」とは、偽造した文書を真正な文書として使用することをいいます。
具体的には、偽造私文書行使罪の「行使」とは、人に偽造した文書の内容を認識させ、または認識可能な状態に置くことをいいます。

刑事事件例では、Aさんは実際に偽造した離婚届を提出しており、偽造私文書行使罪の「行使」があったといえると考えられます。

以上より、Aさんには偽造私文書行使罪が成立すると考えられます。

【電磁的公正証書原本不実記載罪とは】

刑法157条1項
公務員に対し虚偽の申立てをして、…戸籍簿…その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記載をさせた者には、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

公正証書原本不実記載罪の「公正証書」とは、公務員がその職務上作成する文書であって、権利、義務に関するある事実を証明する効力を有するものをいいます。
そして、戸籍簿は公正証書原本不実記載罪の「公正証書」の代表例です。

そして、公正証書原本不実記載罪の「公正証書の原本として用いられる電磁的記録」とは、その公正証書のコンピュータ上の記録のことをいいます。

刑事事件例では、Aさんは公務員に離婚したとの虚偽の申立てをし、戸籍簿のコンピュータ上の記録に不実の記載をさせています。

以上より、Aさんには電磁的公正証書原本不実記載罪が成立すると考えられます。

【不実記載電磁的公正証書原本供用罪とは】

刑法158条1項
…前条第1項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、…不実の…記録をさせた者と同一の刑に処する。

不正記録電磁的公正証書原本供用罪の「原本としての用に供」するとは、虚偽のデータを入力し、閲覧可能な状態にすることをいいます。

刑事事件例では、Aさんによる虚偽の申立てにより、不正に記録された公正証書である戸籍簿が閲覧可能な状態になっていると考えられます。

よって、Aさんには不実記載電磁的公正証書原本供用罪が成立すると考えられます。

【離婚届の私文書偽造事件の刑事弁護活動】

以上のように、離婚届の偽造は犯罪となります。
刑事事件例ではVさんが愛知県碧南警察署離婚届の偽造を刑事告訴したことにより、離婚届私文書偽造事件が発覚し、Aさんは逮捕されるに至っています。

Aさんの身柄は今後検察官に送られ、検察官による起訴するか否かという判断を受けることになります。
仮にAさんが離婚届の偽造の罪(有印私文書偽造罪・同行使罪、電磁的公正証書原本不実記録罪・同供用罪)で起訴され有罪となってしまった場合、Aさんは罰金刑ではなく懲役刑を科されることになります。

もちろんAさんには執行猶予を得られる可能性がありますので、もしAさんが離婚届の偽造の罪(有印私文書偽造罪・同行使罪、電磁的公正証書原本不実記録罪・同供用罪)で起訴されてしまった場合には、刑事弁護士は執行猶予が得られるよう裁判の対応をしていくことになります。
例えば、Aさんの行為によって損害が生じているような場合にはその弁償を行ったり、再犯防止のための環境を作ったり、それらを証拠かすることが必要となってくるでしょう。
刑事事件に強い弁護士にサポートしてもらいながら、裁判に向けた準備もいち早く始めていくことが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
離婚届偽造事件で逮捕された場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。

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