占有離脱物横領罪と示談

占有離脱物横領罪と示談について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。 

【刑事事件例】

Aさんは名古屋市中村区にある百貨店の7階にある休憩所のソファにカバンが置いてあるのを見つけ、周りに誰もいないことからそのカバンを持ちさりました。
このカバンはVさんのもので、Vさんは7階の休憩所のソファにカバンを置いたものの、そこで地下2階の食料品売り場で買い忘れたものがあることに気付きました。
Vさんはカバンのことをすっかり忘れて、地下2階に向かったのですが、10分後にカバンを置き忘れたことに気付き、すぐに7階に戻ったものの、カバンはすでにAさんに持ち去られた後でした。
後日、Aさんの自宅に愛知県中村警察署から「百貨店の防犯カメラを確認しました。占有離脱物横領罪で話を聞かせてください。」と電話がかかってきました。
Aさんは家族に迷惑がかかるし、被害者に謝罪して示談にできないかと考えています。
(東京高等裁判所平成3年4月1日判決を参考にしたフィクションです)

【Aさんの行為は泥棒だから窃盗罪ではないのですか】

Aさんは確かにVさんのカバンを泥棒しているので窃盗罪が成立するように見えます。
しかし今回、Aさんの行為は占有離脱物横領罪が成立する可能性があります。
それでは窃盗罪と占有離脱物横領罪について詳しく見ていきましょう。

【窃盗罪】

それでは窃盗罪についてみていきましょう。
条文は
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する。(刑法第235条)
です。
窃盗罪は
①犯行の主体は、特に制限はなく、誰でも行えます。
②犯行の対象は、他人の占有する財物です。
③行為は窃取することで、財物の占有者の意思に反してその占有を侵害し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。
④結果は占有を取得することです。
⑤不法領得の意思が必要です。

【占有離脱物横領罪】

続いて占有離脱物横領罪についてみていきましょう。
条文は
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金若しくは科料に処する。(刑法第254条)
です。
占有離脱物横領罪は
①犯行の主体は、特に制限はなく、誰でも行えます。
②犯行の対象は、他人の占有を離れた他人の財物で、例としては「遺失物」「漂流物」があります。
※「遺失物」…占有者の意思に基づかずに占有を離れ、いまだ誰の占有にも属しないもの
※「漂流物」…占有者の意思に基づかずに占有を離れ、いまだ誰の占有にも属しないもので、水面または水中に存在するもの
③行為は横領することで、不法領得の意思をもって、占有を離れた他人のものを自己の事実上の支配内に置くことをいいます。
④結果は占有を取得することです。
⑤不法領得の意思が必要です。

【窃盗罪と占有離脱物横領罪の違い】

この2つの罪で大きく違うところは、犯行の対象です。
よって泥棒の行為をした時に、他人の占有があるか否かでどちらの罪になるかがほぼ決まります。
なおここでいう他人の「占有」とは、物を持っているというだけではなく、物に対する「事実上の支配」、つまり持ち主が物を目に見える形など客観的に支配しているだけではなく
例えば持ち主の自宅内にある物など、持ち主が物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態も含みます。

さらに物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態にあるか否かは
①支配の事実の観点(置き忘れてから気づくまでの時間的場所的な近さ)
②占有の意思の観点(存在していた場所をどれくらい認識していたか)
で判断される傾向があります。

【刑事事件例について】

Vさんがバッグを置き忘れ、気が付くまでには約10分程度でしたが、置き忘れた場所と気付いた場所はそれぞれ百貨店の地下と7階でした。
それは気付いた時点で置き忘れたあ署にすぐに戻って取り戻せることができる時間的場所的な近さにあったとはいえず、
Vさんはカバンを取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態にあったとはいえません。
よってカバンの占有はVさんから離れて遺失物と認められるため、Aさんは遺失物であるVさんのカバンを持ち去って自己の物としたため占有離脱物横領罪が成立する可能性があります。

【被害者と示談がしたい】

窃盗罪であっても、占有離脱物横領罪であっても、被害者がいる事件には変わりありません。
Aさんは被害者に謝罪し、示談がしたいと思っていますが、当事者同士で示談を行うのは大変難しいことです。
刑事事件に強い弁護士を通して、被害者に謝罪や弁償を行い、示談を成立させていくことになるでしょう。
示談が成立すれば、Aさんのように警察が介入している場合は起訴猶予による不起訴処分を目指していくことも可能ですし、不起訴処分となれば前科にはなりません。
また、警察が介入する前に示談が成立すれば事件化する前に解決することもできます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、年間多数の刑事事件への対応をしてきた刑事事件専門の法律事務所です。
窃盗罪や占有離脱物横領罪に詳しい弁護士も在籍しております。
ご家族やご自身が窃盗罪や占有離脱物横領罪で話を聞かれることになった、逮捕されてお困りの方、被害者と示談がしたいという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。

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