捜索手続の適法性が注目された事例を解説

今回は、過去の判例をもとに、捜索手続の適法性が争われたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説いたします。

【ケース】

現在、名古屋市南区のAさんの自宅において、Aさんが違法薬物であるMDMAを譲り受け、これを所持、使用した疑いで愛知県南警察署の捜索が行われています。
当日の午前8時頃に捜索差押許可状が呈示され、捜索手続が開始されましたが、同日午前11時頃、Aさんの自宅に宅配便が届きました。
荷物は小包のようです。
警察官らは「今回の捜索差押許可状の効力により小包を開封し中を調べる」として同小包を開封したところ、MDMA様の錠剤が発見されました。
後に前記錠剤はMDMAであることが判明したため、警察官らはMDMAを譲り受けた疑いでAさんを逮捕しました。
Aさんは捜索開始の後に届いた荷物が開封され、中身を調べられたことに不満を抱いており、法律上適正な捜索であったのか疑問に感じています。
(最高裁平成19年2月8日決定をもとにしたフィクションです)

【捜索差押許可状とは】

警察官などの捜査機関が被疑者または関係各所を強制的に捜索できることはよく知られていることでしょう。
この場合、関係者が拒絶したとしても、令状による捜索・差押は拒否することができません。
ただし、強制的な捜索・差押を行うためには、原則として、その処分を受ける者に対し、捜索差押許可状が呈示されなければなりません(刑事訴訟法第222条1項・第110条)。

通常、令状を呈示して捜索差押に着手した後、捜査に必要な捜索・差押を行い、捜索差押手続が終了しますが、ケースの場合、捜査官らは令状呈示後に配達された小包の捜索・差押えを行っています。
Aさんはこのような順序の手続であったことに不満、疑問を感じているようです。

【ケースのモデルになった事件についての見解】

※最高裁平成19年2月8日決定要旨
「警察官が,被告人に対する覚せい剤取締法違反被疑事件につき,捜索場所を被告人方居室等,差し押さえるべき物を覚せい剤等とする捜索差押許可状に基づき,被告人立会いの下に上記居室を捜索中,宅配便の配達員によって被告人あてに配達され,被告人が受領した荷物について,警察官において,これを開封したところ,中から覚せい剤が発見されたため,被告人を覚せい剤所持罪で現行犯逮捕し,逮捕の現場で上記覚せい剤を差し押さえたというのである。所論は,上記許可状の効力は令状呈示後に搬入された物品には及ばない旨主張するが,警察官は,このような荷物についても上記許可状に基づき捜索できるものと解するのが相当である」

前記最高裁決定には明確な理由付けがなされていませんが、前記判例によれば、ケースのような捜索・差押手続も適法とされる可能性が高いでしょう。

刑事手続の適法性が争われる、あるいは、争いうるケースは、捜索手続に関連する事件以外にも多々あります。
既存の判例のみでは説明しきれないケースもあるかもしれません。
新しい問題点が争われ、判断がなされた場合には、新規の判例となることもあります。

ただし、このようなケースに対処するためには、刑事事件に関する高度な法律的知識を要します。
捜索・差押手続の適法性に疑問を抱いた場合は、刑事事件に詳しい弁護士と相談し、今後の対策についてアドバイスを受けることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
捜索・差押手続の適法性に疑問を感じ、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。

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