失火罪と執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
名古屋市守山区で飲食店を経営しているAさんは、営業時間が終了した後、その日の売上金を金庫に入れて店を後にしました。その際、Aさんは仕込みのために鍋を火にかけていたことをすっかり忘れていました。それから数時間後、消防車のサイレンの音で目を覚ましたAさんは、出火場所が自身の店であることを知って上記事実を思い出しました。火は幸いにも早期に消し止められ、守山警察署は失火罪の疑いがあると見て捜査を進めることにしました。Aさんから相談を受けた弁護士は、被害がさほど大きくないことから、裁判になっても執行猶予になる可能性があることを指摘しました。
(フィクションです。)
~失火罪について~
同罪の失火とは、過失によって出火させること、をいいます。
ここでいう「過失」とは、物を燃やす認識、認容がないまま、「不注意」によって一定の作為・不作為を行うことをいいます。そして、「不注意」とは、一定の行為をするべきではない、あるいはすべき義務があるにもかかわらず、その義務に違反すること、つまり注意義務違反のことをいいます。
これに対し放火とは、故意に目的物の焼損に原因力を与えることをいいます。ライターで紙などに火をつけ、これを目的物に投げ入れる行為がその典型です。
失火は「過失」により、放火は「故意」により、火を点けるということになります。
事例では、Aさんは、経営者として、あるいは店を最後に出る者としてコンロの火を消すべき義務があったといえます。
にもかわらず、コンロの火を消し忘れたまま店を後にしていることから、Aさんは過失を認めることができます。
なお、仮に、Aさんがコンロの火が消されてないことを認識しながら、あえてその状態を放置した場合は「放火」に当たる可能性があります。
失火罪の罰則は50万円以下の罰金です。
なお、事例の場所が飲食店であることやAさんが飲食店の経営者であることから、Aさんは失火罪ではなく業務上失火罪に問われる可能性もあります。
業務上失火罪の罰則は3年以下の禁錮または150万円以下の罰金です。
~執行猶予の可能性~
裁判で有罪となって刑罰が科されたとしても、その刑罰に執行猶予が付くことがあります。
以下では、多くの罪において見かける、刑の全部執行猶予について説明します。
執行猶予は、判決で、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金を言い渡す場合において付すことができるとされています。
なお、実務上、罰金を言い渡す場合に執行猶予がつくことはありません。
判決で、「懲役1年6月で執行猶予が3年」と言い渡された場合、ひとまず3年間は刑務所に行かなくて済みます。
更に、執行猶予が取り消されることなく一定期間が経過すれば、刑の言い渡しの効力を失われる、すなわち、刑務所に行かなくて済みます。
執行猶予を獲得するには、刑の執行を猶予するのが相当な程度に事件の重大性が低いことをきちんとアピールしなければなりません。
たとえば、犯行が悪質でないこと、きちんと反省していること、これまでの素行が良いこと、被害弁償がきちんとなされたこと、などを主張することが考えられます。
このような主張は様々な角度から行いうるものなので、もし執行猶予を目指すなら刑事事件を熟知した弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスの予約受付を承っております。