性感染と傷害について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
名古屋市緑区に住むAさんは出会い系サイトで知り合ったVさん(当時20歳)と市内のホテルで性交に及びました。その際、Aさんは自身がHIVに感染していましたが、1回の性交で感染させることはないだろうと考え、Vさんには隠していました。後日、Vさんはエイズを発症し、Aさんを告訴しました。告訴を受けた緑警察署はAさんを取調べることにしました。
(フィクションです)
~傷害罪~
刑法第204条は「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処す」と規定しています。
傷害と聞くと、ナイフなどで人を傷つけたり、殴って怪我をさせたりといったことを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
傷害罪にいう傷害とは、人の生理的機能に障害を与えることをいいます。
つまり、殴ったりするなどして人を傷つけずとも、病気にかからせたりした場合には傷害罪が成立し得るということです。
また、傷害罪は暴行罪(刑法第208条)の結果的加重犯としての性質も有しています。
結果的加重犯とは、基本となる犯罪(基本犯)から重い結果(加重結果)が生じたときに成立する犯罪です。
例えば、強盗致死傷罪(刑法第240条)、強制性交等致死傷罪(刑法第181条第2項)などがあります。
これらでは強盗罪(刑法第236条)や強制性交等罪(刑法第177条)が基本犯で、これらの犯罪の機会に人に死傷結果が生じた場合に強盗致死傷罪や強制性交等致死傷罪が成立するということになります。
強盗罪と強制性交等罪の法定刑が5年以上20年以下の懲役であるのに対して、強盗致傷罪と強制性交等致死傷罪の法定刑は無期または6年以上20年以下の懲役で、強盗致死罪に至っては死刑または無期懲役とかなり重い刑が設定されています。
原則として、過失犯を除いて犯罪が成立するためには故意が必要とされます。
しかし、結果的加重犯については、基本犯の故意のみが要求されているにすぎず、加重結果が生じたことについて故意は必要とされません。
傷害罪については、暴行の故意しかないにもかかわらず、傷害結果が生じた場合は傷害罪が成立しうるということになります。
さらに言えば、傷害罪の結果的加重犯である傷害致死罪(刑法第205条)と暴行罪は二重の結果的加重犯の関係になり、暴行の故意のみで行った暴行で人が死亡した場合は傷害致死罪が成立する可能性があるということにもなります。
ちなみに、暴行罪の法定刑は2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料で、傷害致死罪の法定刑は3年以上20年以下の懲役です。
~傷害と示談~
傷害罪で被害者と示談したいという方にとって、一番関心が高いのは
示談金いったいはいくらかかるのか(示談金の相場は)?
慰謝料はいくらかかるのか(慰謝料の相場は)?
ということではないでしょうか?
まず、前提として慰謝料は示談金の一部であるということです。
示談金は正確には「損害賠償金」のことであり、慰謝料はその損害賠償金の一部です。
暴行・傷害行為は民法上の不法行為に当たり、加害者は暴行・傷害行為によって被害者に生じさせた「損害」を賠償する義務を負います(民法709条)。
この損害については「身体的損害」と「精神的損害」に分けることができます。
身体的損害は、治療費などの積極損害から休業損害などの消極損害まで様々です。
他方、精神的損害に当たるのが慰謝料というわけです。
なお、示談金(損害賠償金)の相場というものはありません。
なぜなら、示談金は傷害事件で現れた諸情状により変動するからです。
「情状」には
・被害者の怪我の程度
・被害者の処罰感情
・犯行態様(武器使用か否か)
・犯行に至るまでの経緯、動機(計画的か偶発的か)
などがありますが、このうち傷害罪で最も重要視されるのは「被害者の怪我の程度」です。
なぜなら、被害者の怪我の程度が重たければ重たいほど、上記でご紹介した治療費、休業損害、慰謝料も大きくなり、結果として損害賠償金(示談金)も大きくなるからです。
示談とは被害者側との話し合いです。
しかし、傷害罪の場合、加害者が示談交渉に乗り出しても、ほとんどの場合、被害者は示談交渉のテーブルには乗ってくれないでしょう。
また、どこまでの損害を賠償をするのか被害者側とよく話し合わなければなりません。
それには大変な知識と経験が必要ですし、労力・時間もかかります。
傷害罪で示談をご検討中の方は傷害罪に詳しい弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。