12歳の息子に高級時計を窃盗させた事件を参考に、間接正犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

参考事件
名古屋市瑞穂区に住むAさんは、お金に困っており、友人が所有している高級時計を盗んでお金に変えようと考えました。
Aさんは、自ら犯行を実行して捕まることを避けるために、12歳の息子に、友人の家に侵入させて、時計を盗むように命じました。
息子は、人の物を盗むことは悪いことと知っていましたが、Aさんから日常的に虐待を受けていたことから、逆らうとまた殴られてしまうと考え、Aさんの言うとおりに犯行を実行しました。
(フィクションです。)
刑事未成年者
刑事未成年者とは、14歳未満の者をいい、法律上刑罰を科されない者のことです。
本件では、Aさんの息子は、被害者宅に侵入して、時計を窃取しているので、息子の行為には住居侵入罪(刑法130条)と窃盗罪(刑法235条)が成立するように思われますが、12歳の息子は、刑法41条に「14歳に満たない者の行為は、罰しない。」と定めがあるため刑事罰の対象とはなりません。
間接正犯
間接正犯とは、他人を道具として利用して犯罪を実現した場合には正犯として扱われるというものです。
この間接正犯は、自ら手を下して犯罪を実行したわけではないにも関わらず犯罪が成立するので、間接正犯が成立するには
・正犯意思を持っていて
・他人の行為を道具として一方的に支配・利用していることが必要
であると考えられています。
Aさんは、実際に犯罪にあたる行為を行ったわけではないので、窃盗罪の正犯(自ら犯罪を実現した者)が成立しないようにも思えます。
しかし、自分の利益のために息子に犯罪行為を命じ、Aさんが正犯として処罰されないのは妥当ではありません。
正犯意思について
正犯意思とは、自ら犯罪を実現する意思のことを言います。
本件でAさんは自身がお金に困っているのを解消するために、友人の時計を盗んでいることから、自分のために窃盗行為を行う意思を有していたといえます。
したがって、Aさんには正犯意思が認められます。
他人の行為を道具として一方的に支配・利用していたか
息子は、人の物を盗むことは悪いことであると知りながらも、Aさんに逆らうことが出来ずに、本件犯行を実行しています。
このような場合においては、息子の行為は畏怖・抑圧された状況下でなされており、息子はAさんから新たな暴行を受けることを恐れて窃取行為の命令に応じたといえます。
その為、日常的な暴行を行っていたAさんは、息子の行為を道具として一方的に支配・利用していたと認められるでしょう。
上記理由により、Aさんに住居侵入罪と窃盗罪が成立することになります。
窃盗目的で住居侵入が行われているので、両罪はけん連犯(刑法54条1項後段)として扱われます。
参考条文
住居侵入(刑法130条)
「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入した者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
窃盗(刑法235条)
「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
けん連犯(刑法54条1項)
けん連犯とは、1個の行為が2個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
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