■事件概要
岐阜県内を走行中の名古屋鉄道の電車内で、依頼者の息子(40代男性、公務員、前科なし)が、制服を着た女子高生の胸に腕を押し当てるなどした岐阜県迷惑防止条例違反の痴漢事件です。依頼者の夫は、電車が駅に停車した際に電車から降りましたが、駅員に声をかけられて駅事務室に連れて行かれました。駅事務室では、痴漢行為を否定していましたが、駅員からの通報を受けて臨場した警察官に逮捕されました。
■事件経過と弁護活動
本件痴漢事件は依頼者の息子が仕事での出張中に起こした事件でした。息子が逮捕されたとの連絡を受けた両親は、事件詳細や捜査状況についての情報がほとんどなかったことから、刑事事件を専門に扱う当事務所に初回接見(面会)の要請をされました。息子の逮捕から既に5日が過ぎており、留置場に身体拘束(勾留)された状態での接見でした。
当事務所の弁護士がただちに警察署の留置場に赴き被疑者である息子と接見(面会)をしたところ,息子本人は犯行を認めていること、仕事上のストレスと性的欲求の昂ぶりから犯行を行ってしまったこと、身体拘束が長期間になれば職場を退職しなければならなくなることが確認できました。被疑者である息子は公務員の給料収入で家族を養っており、刑事処分によって前科が付くこと及び事件内容が職場に伝わって懲戒免職処分になることを心配されて,当事務所の弁護士に刑事弁護活動の依頼をされました。
依頼者は,刑事事件の手続きや処分に不安を感じる一方で,被害者女性への謝罪と反省の気持ちを有しておられました。そのため,依頼を受けた弁護士は,刑事手続きの流れや取調べ対応をアドバイスすることで依頼者の不安を少しでも取り除くよう努めるとともに,被害者女性への謝罪と弁償による示談交渉を勧めました。
弁護士のアドバイスに基づく取り調べ対応と検察官への働きかけによって勾留期間の延長は阻止され、被疑者である息子は依頼から5日後には釈放されました。
被害者の女子高生とそのご両親に対しては、早急に、謝罪と賠償による示談交渉を提案させていただきました。当初、女子高生のご両親は被害感情が非常に強く、示談交渉は難航が予想されました。被害者の方への示談交渉では、被疑者に謝罪文を作成していただき、謝罪と反省の意思を被害者女性のご両親にお伝えする一方で、犯行現場となった電車路線を使用せず被害者の女子高生にも近づかない旨の誓約をして接触可能性や2次被害防止のためのを対策を講じることで被害者の方に安心してもらえるよう努めました。早急且つ粘り強い交渉の末、被害者のご両親と示談をまとめることに成功し、被害者やそのご両親からはお許しの言葉をいただくことができました。
示談を成立させた担当弁護士は、検察官に対して、被害者との間で謝罪と賠償のうえで示談が成立していること、被害者が被害届を取り下げていること、依頼者には前科前歴がなく依頼者である妻の監督が行き届く環境であることから痴漢行為の再犯可能性がないことを主張して刑事処罰の必要性がないことを訴えました。
弁護活動の結果、本件痴漢事件は示談成立及び依頼者の反省と再発防止策が重視されて不起訴処分となりました。依頼者の息子は前科がつくことなく無事に事件を終えることができました。また、勾留延長を阻止して早期釈放を実現できたこと及び不起訴処分によって刑事裁判を回避できたことで、ご依頼者様は懲戒免職や退職処分を受けることなく公務復帰を果たされました。