名古屋市南区の不退去罪なら

名古屋市南区の不退去罪なら

~ケース~

名古屋市南区在住のAさんは、委託を受けて代金回収を代行する会社に勤めている。
給料には歩合があり,代金回収をした件数によって給料が増加する仕組みであった。
ある日Aさんは,Vさん宅にX社の代金の回収に赴いた。
Aさんは玄関ドアに設置されていた呼出しチャイムを押したところVさんが対応した。
Aさんは玄関ドアから玄関口に上がりそこでAさんにX社の代金を支払うように説明した。
Vさんは自分は払う義務もないし払う意思もないので帰って欲しいとAさんに伝えた。
Aさんはあと1件回収できれば歩合の割合がアップすることからその場に留まり、Vさんに代金を支払うよう要求した。
Aさんがなかなか帰らないため、Vさんは110番通報し,Aさんは駆けつけた愛知県警察南警察署の警察官に不退去罪の疑いで現行犯逮捕された。
現在,交通事故を起こしてしまい執行猶予中のAさんは、なんとかして執行猶予の取消しとならないようにできないかと、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に弁護を依頼した。
(フィクションです)

~侵入罪と不退去罪~

刑法130条は「正当な理由がないのに,人の住居若しくは人の看守する邸宅,建造物若しくは艦船に侵入し,又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は,3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。」と規定しています。
前段が侵入罪,後段が不退去罪となります。

◇侵入罪◇

「侵入」の意義について,判例は,管理権者の意思に反した建造物等への立ち入りをいうと解しています(最判昭和58・4・8刑集37巻3号215頁)。
この見解からすると,許諾権者の立ち入りについての許諾の有無によって住居侵入罪の成否は決せられます。
許諾権者は住居であれば居住者であり,今回のケースではVさんは許諾権者であるといえるでしょう。
AさんはVさん宅の玄関口に上がっていますがAさんに住居侵入罪は成立するのでしょうか。
Vさんが明確に玄関口に上がらせない意思を示していた場合には住居侵入罪が成立すると考えられますが,今回のようなケースでは玄関口に上がること自体は許諾しているとも考えられます。
したがって,Aさんに住居侵入罪は成立しないといえるでしょう。

◇不退去罪◇

不退去罪は,住居に立ち入った者が,退去の要求を受けたにも関わらず,その場所から退去しなかった場合に成立します。
不退去罪は立ち入り時に住居侵入罪が成立しない場合について認められる補充的な犯罪であると解されています(最決昭和31・8・22刑集10巻8号1237頁)。
不退去罪は構成要件自体が不作為の形式で定められている真正不作為犯(~~しない者を罰するという規定)であり,退去要求がなされた後に,退去に必要な時間が経過した時点で成立します。

今回のケースでAさんはVさんから帰って欲しいと伝えています。
しかしAさんは,退去の要求に応じることなく,その場に留まりVさんに代金を支払うように要求しています。
したがって,Aさんは退去に必要な時間が経過してもなおその場に留まっているので,Aさんには不退去罪が成立します。

~弁護活動~

執行猶予期間中にさらに罪を犯し,執行猶予が付かない禁錮以上の刑に処せられた場合には執行猶予は取り消されます。
一方で,執行猶予期間中であっても罰金刑の場合には裁量により執行猶予が取り消されることになります。

不退去罪の法定刑は3年以下の懲役または10万円以下の罰金ですので執行猶予のつかない懲役刑となった場合には執行猶予が取り消されてしまうことになります。
また,罰金刑であっても裁量によって執行猶予が取り消されてしまう可能性もあります。
Aさんが執行猶予を取り消されないためには,不起訴処分,罰金刑,再度の執行猶予付き判決のいずれかとなる必要があります。
執行猶予期間中であっても1年以下の懲役または禁錮の場合には情状に特に酌量すべきものがある場合には再度の執行猶予を付けることが出来ます。

不退去罪は住居侵入罪に比べて立ち入り自体は許諾されていますので犯情は軽く,いきなり実刑判決が出ることは少ないでしょう。
しかしAさんは執行猶予中の身ですので,そういった点から実刑判決となり執行猶予が取り消されてしまう可能性もあります。
一方,不退去罪は事件が1件だけであれば示談を成立させることができれば不起訴処分となる可能性も高いでしょう。
執行猶予中であることが考慮されたとしても再度の執行猶予付き判決となる可能性は高く,執行猶予が取り消される可能性は低いでしょう。
まずは弁護士に相談されることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件に強い法律事務所です。
執行猶予中に事件を起こしてしまった場合でも0120-631-881までご相談ください。

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