業務上堕胎罪と保護責任遺棄致死罪で逮捕・勾留②

業務上堕胎罪と保護責任遺棄致死罪で逮捕・勾留②

業務上堕胎罪と保護責任遺棄致死罪で逮捕・勾留された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
業務上堕胎罪と保護責任遺棄致死罪で逮捕・勾留①の続きとなります。

保護責任者遺棄致死罪の法定刑

老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときには、保護責任者遺棄罪が成立します(刑法218条)。
法律に定められた刑(法定刑)は、3月以上5年以下の懲役です。

また、刑法218条の罪(保護責任者遺棄罪)を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により、保護責任遺棄致死罪として処断されます(刑法219条)。
保護責任遺棄致死罪の場合,「傷害の罪と比較して、重い刑によ」るとは、傷害致死罪(刑法205条)と保護責任者遺棄罪(刑法218条)に定められた刑(法定刑)の上限及び下限を比較して、その重い方を選択するということを意味します。

保護責任者遺棄致死罪によってAさんが未成熟児(Vさん)を死亡させるに至った場合を見てみると、傷害致死罪(刑法205条)の下限は3年以上の懲役、上限は20年の懲役です(刑法205条・刑法12条)。
それに対して、保護責任者遺棄罪(刑法218条)の下限は3月以上の懲役、上限は5年以下の懲役です。
ここで、上述した傷害致死罪(刑法205条)と保護責任者遺棄罪(刑法218条)の下限及び上限について、それぞれ重い方を選択します。
したがって、保護責任者遺棄致死罪の法定刑は、下限が3年以上の懲役、上限は20年以下の懲役だと考えられます。

遺棄の意義

保護責任遺棄致死罪における「遺棄」は、①要救助者(要扶助者)の場所を移動させるという移置行為と、②保護しなければ生命の危険が生じ得る要救助者(要扶助者)を放置したまま立ち去るという置き去り行為をいうと解されています。

また、保護責任遺棄致死罪において「必要な保護をしなかった」とは、場所を移動させたり立ち去ったりするように物理的に離れずに、要扶助者に対し生存に必要な保護をしないという不保護行為をいいます。

ケースにおいて、Aさんは医師として未成熟児であるVさんを保護する必要があるにも関わらず、Vさんを放置したまま立ち去ったことから、置き去りによる遺棄が行われたといえます。
よって、Aさんには保護責任遺棄致死罪が成立すると考えられます。

以上より、Aさんには業務上堕胎罪と保護責任者遺棄致死罪が成立すると考えられ、愛知県北警察署による逮捕・勾留が行われたのだと考えられます。
ちなみに,AさんがVさんを殺すつもりで遺棄に及んだ場合,保護責任者遺棄致死罪ではなく殺人罪に当たる余地が出てきます。
そうなった場合,殺人罪として法定刑の上限が死刑,下限が5年の懲役という非常に厳しいものになるおそれがあります。

勾留の要件と身柄解放活動

勾留とは、逮捕した被疑者の身柄を一定の事由がある場合に留置することをいいます。
その一定の事由とは、刑事訴訟法60条1項と87条1項に記載されている事由を指します。
具体的には、以下の①から③の全てに該当する場合に勾留が認められます。

①被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるとき
②次のうち最低でも1つに該当するとき
被疑者が定まった住居を有しない
被疑者が罪証を隠滅すると疑うにつき相当な理由がある
被疑者が逃亡し、又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある
(上記①②をまとめて「勾留の理由」と呼ぶことがあります)
③勾留の必要があるとき

③については,その具体的な意味が日本語の一般的な意味とは少し異なる点に注意が必要です。
ここで言う「勾留の必要があるとき」とは,勾留の利益(たとえば円滑な捜査が行えること)と不利益(たとえば被疑者が会社に行けないこと)を比較し,不利益より利益の方が大きいことを指すと考えられています。
そのため,仮に①②に該当しても,勾留による不利益の大きさ次第では③が否定され,結果的に勾留されないということもありえます。

以上に対して、勾留中の被疑者の身柄拘束を解く刑事弁護活動には、
①勾留の理由または必要があると判断した裁判官の判断を争う準抗告(刑事訴訟法429条1項2号)
②その後の状況の変化により、勾留の理由または必要がなくなったことを主張する勾留取消請求(刑事訴訟法87条)
③裁判官の職権による勾留の執行停止を求める活動
などが挙げられます。

また、この前提として、
④勾留された理由を公開の法廷において裁判官が告げることを求める勾留理由開示請求(刑事訴訟法82条)
も、勾留中の被疑者の身柄拘束を解く刑事弁護活動において重要な役割を果たします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部では、逮捕されている被疑者のもとに出向き、拘束されている身柄の解放に向けた刑事弁護活動を行っています。
業務上堕胎罪や保護責任者致死罪で逮捕された被疑者の身柄解放をお考えの方は、まずは刑事事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部にご連絡ください(フリーダイヤル0120-631-881)。

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