業務上堕胎罪と保護責任遺棄致死罪で逮捕・勾留①

2020-04-30

業務上堕胎罪と保護責任遺棄致死罪で逮捕・勾留①

業務上堕胎罪と保護責任遺棄致死罪で逮捕・勾留された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

ケース

愛知県名古屋市北区内の病院に勤務するAさん(医師)は、旧友のBさん(女性)から、母体保護法による適法な堕胎の期間を過ぎてしまっているにも関わらず、Bさんが妊娠している胎児の堕胎を依頼された。
Aさんが同病院内で堕胎を行った結果、母体外に胎児が排出されたが、Aさんの病院には保育器等の未熟児医療設備が整っており、堕胎により排出された未熟児(Vさん)は適切な処置を施せば生育可能な状態であった。
しかし、Aさんは、未成熟児を処置室にそのまま放置したため、未成熟児(Vさん)は死亡した。
その後、愛知県警北警察署の捜査によりAさんは業務上堕胎罪と保護責任遺棄致死罪の容疑で逮捕され、またそれに引き続く勾留がなされた。
(この事例は、フィクションです。)

業務上堕胎罪と母体保護法

医師、助産師、薬剤師又は医薬品販売業者が女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させたときには、業務上堕胎罪が成立します(214条)
法律に定められた刑(法定刑)は、3月以上5月以下の懲役です。

業務上堕胎罪における「堕胎」とは、①胎児を母体内で殺すか、あるいは、②自然の分娩期に先立って人工的に胎児を母体から分離・排出することです。
ケースでは、医師であるAさんが自然の分娩期に先立って母体外に胎児を排出しています。
そして,このような行為は妊婦であるBさんの依頼を受けて行っているため,「医師」が「女子の嘱託を受け」「堕胎」を行ったといえます。
そうすると,Aさんの行為は業務上堕胎罪に当たると考えられます。

ただし,形式的には業務上堕胎罪に当たる行為であっても,母体保護法が定める人工妊娠中絶に該当すれば不可罰となる余地があります。

まず,母体保護法2条2項は、「人工妊娠中絶」の定義について、「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期(注:行政機関の通知によれば受胎後満22週間未満)に、人工的に、胎児及びその付属物を母体外に排出すること」と定めています。
そのため,第一にこの定義に該当することが必要となるでしょう。

そのうえで,母体保護法14条1条1号は、次の要件を満たす場合に限って適法に「人工妊娠中絶」を行えるとしています。
①医師会が指定した医師の手によること
②妊婦が次のいずれかに該当すること
・妊娠の継続または分娩が身体的または経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれがある
・暴行もしくは脅迫によって、または抵抗もしくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠した
③妊婦と配偶者の双方が同意していること(ただし一定の場合は妊婦のみで可能)

以上の各要件を満たす場合には,適法な行為と評価される結果,業務上堕胎罪の成立も否定されるでしょう。

ケースでは、母体保護法による適法な堕胎の期間を過ぎています(受胎後満22週間を過ぎています)。
また、上記の身体的・経済的理由や倫理的理由は存在しないと考えられます。
したがって、適法な「人工妊娠中絶」とは見られず、Aさんには業務上堕胎罪が成立すると考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
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次回の記事では、業務上堕胎罪と保護責任遺棄致死罪で逮捕・勾留(後編)を解説します。
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