自殺関与罪と逆送について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【刑事事件例】
17歳のAさんは、SNSを見ていたところ、「死にたいです」という女性Vさんの書き込みを見つけました。
Aさんはこの女性と仲良くなりたいと思い、Vさんにメッセージを送り、後日名古屋市港区にあるVさんの自宅で会うことになりました。
Vさんの自宅でVさんが「つらくて死にたいけど勇気が出ない」と言ったため、Aさんは「死んだほうがVさんが幸せならしょうがないね、このロープはとても丈夫だから首を吊るにはいいと思う」と言い、Vさんに準備しておいた丈夫なロープを渡したところ、「ありがとう」とVさんに言われました。
その後Aさんは帰宅しましたが、その日の夜にVさんはAさんに渡されたロープで首を吊って亡くなりました。
後日、Aさんは愛知県港警察署に自殺関与罪の疑いで逮捕されることになります。
(フィクションです)
【自殺することを助けると罪になりますか】
人が自殺することをそそのかしたり、助けたりすると「自殺関与罪及び同意殺人罪」に問われる可能性が有ります。
刑法第202条に
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。
とあります。
【自殺関与罪とは】
自殺関与罪等のうち、自殺教唆・幇助罪は、人を教唆あるいは幇助して自殺させた場合に成立する罪です。
【自殺教唆とは】
自殺の意思のない者に対し、自殺の決意を与えて自殺を遂行させることをいいます。
教唆の手段には制限はなく、黙示的な方法でも良いとされています。
ただし、欺罔や脅迫などの程度が著しい時には、殺人罪の間接正犯となります。
【自殺幇助とは】
既に自殺の決意のある者に対して、その自殺行為に援助を与えて自殺の実現を容易にすることです。
Aさんは既に自殺を決意しているVさんに対し、自殺行為を行ないやすくするためにロープを渡しており
それを使用してVさんは自殺をしているので、Aさんには自殺関与罪(自殺幇助)が成立する可能性が有ります。
【少年事件の流れ】
検察官は犯罪の嫌疑のある少年の被疑事件について、捜査後に家庭裁判所に送致しなければならないと少年法で定められています。
ですが、家庭裁判所に送致後、家庭裁判所が少年事件を家庭裁判所から検察官に送致することがあります。
家庭裁判所から検察官に送致することが、通常の検察官から家庭裁判所への送致と比べて逆向きの送致であるため、このことを通称「逆送致(逆送)」というのです。
逆送致(逆送)された場合は、成人と同じく一般の刑事手続を行うことになります。
どういう場合に逆送となるのかにつきましては
①調査または審判の結果、調査や審判時の本人の年齢が20歳以上であることが判明した時
②刑事処分相当と判断された時
(ただし、行為時16歳以上の少年が故意の犯罪行為によって、被害者を死亡させた事件については、原則として逆送することとされています。)
があります。
ただし、②の場合であっても、家庭裁判所の調査の結果、犯行の動機および態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状および環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認める時は、逆送しなくてもよい、と例外も少年法で定められています。
また、令和4年4月1日施行の少年法改正により、「特定少年(18歳と19歳)の時に犯した死刑、無期又は短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪の事件」が原則、検察官送致がされる事件となります。
少年は成人に比べて、自分の気持ちや記憶を正直に、適切に表現することが難しいことも多いため、捜査初期から弁護士のサポートを受け、家庭裁判所送致後は付添人活動の経験豊富な弁護士のサポートを受け、それぞれの少年にとって最も良い処遇へ導いていくことがとても大切です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件・刑事事件専門の法律事務所です。
ご家族やご自身が自殺関与罪や自殺幇助で話を聞かれることになった、付添人経験が豊富な弁護士を探している方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。