Archive for the ‘財産犯・経済事件’ Category

ホテルにおける窃盗事件で逮捕

2022-04-13

ホテルにおける窃盗で逮捕された事例を題材に、刑事弁護士が行う弁護活動等について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

【刑事事例】

Aは、適法に宿泊していたホテル内の備品(ドライヤー等)を、チェックアウトする際にホテルに無断で持ち出した。
愛知県東警察署警察署の警察官は、Aを窃盗の疑いで逮捕した。
Aの家族は、窃盗事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。

【窃盗罪か(単純)横領罪か】

第38章 横領の罪
(横領)
第252条 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。
2(略)

刑法252条1項は、いわゆる横領罪(単純横領罪・委託物横領罪)を定めた規定です。
これに対し、刑法235条は「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と規定しています。
窃盗ではなく横領に当たる場合、上記のとおり横領罪には窃盗罪と違い罰金刑が定められていないため、どちらに当たるのか判断することは被疑者や弁護活動を行う弁護士にとって極めて重要な事項となります。
では、本件では横領罪が成立する余地はあるのでしょうか。

上記252条1項が示すとおり、横領罪が成立するためには被害客体が「自己の占有する他人の物」である必要があります。
ホテルの備品たるドライヤー等は、ホテル側の所有物であることは明らかであり、「他人の物」であることに間違いはありません。
また、Aは金銭を払ってホテル内の部屋に宿泊しているのですから、「他人の物」を「占有」しているともいえそうです。
もっとも、「占有」とは物に対する事実的支配をいうところ、これは社会通念に照らして判断されることになります。
この点、ホテル側が提供した備品はあくまで、宿泊客の利用に供されているだけであり、室内の備品に対する事実的支配は未だホテル側にあると解するのが通常でしょう。
したがって、Aの行為は横領罪ではなく、「他人の財物」をその所有者・占有者の意思に反して「窃取」したものとして窃盗罪を構成することになります。

【逮捕後の弁護活動について】

ここまで、法定刑等の違いに着目した上で、窃盗罪と横領罪の成否について見てきましたが、以下ではより弁護活動に直結する我が国における具体的な事件処理について見てみましょう。
多くの方は逮捕等の身体拘束がされた刑事事件においては、我が国の有罪率が99.9パーセントともいわれることから、ほぼ間違いなく刑罰が下されると思われているかもしれません。
しかし、刑事事件のうち検察官が起訴するのは実はその一部にすぎず、統計上は6割近くが不起訴処分となっています。
つまり、逮捕等がされたとしても、被害弁償や弁護士を通じたその後の対応によって、多くの事件は刑事裁判になることなく終了しているのです。
逮捕・勾留された場合には、(原則として)最大23日間の身体拘束が法律上認められていますが、検察官はこの期間までに起訴・不起訴の判断をする必要があります。
したがって、刑事事件はよくいわれるように時間との勝負に他なりません。
窃盗事件で逮捕された場合も、早い段階から弁護士とのコンタクトをとることが何よりも重要であるといえます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗事件を含む刑事事件を専門的に扱っている法律事務所です。
多数の刑事弁護士が、日々精力的に刑事弁護活動を行っています。
窃盗事件で逮捕された方のご家族は、まずは24時間/365日対応のフリーダイヤル(0120-631-881)までご連絡ください。
担当者が、弁護士による逮捕されてしまった方との接見(面会)サービス等についてご案内差し上げます。

【解決事例】安城市の詐欺未遂事件で一部接見禁止解除と不起訴獲得

2022-04-10

【事案の概要】

ご本人様(20代女性)は特殊詐欺事件の現金受け取り役をしたとして、愛知県安城警察署で逮捕・勾留され、接見禁止がつきました。
ご両親は、一刻も早く娘と面会がしたい、娘は受取った郵便物の中身が詐欺のお金だと知らなかった、受取る荷物は書類だと信じていたと言っていたと、相談時にお話されました。
(※守秘義務の関係で一部事実と異なる表記をしています。)

【弁護活動】

裁判所に対し、①両親と面会をしても罪証隠滅のおそれやその余地がないこと、②両親と面会しても逃亡のおそれがないこと、③家族と面会する必要性が高いこと、④弁護士と被疑事実の打ち合わせを十分行うために必要である、などのため、ご両親との接見禁止を解除するように主張しました。
その結果、ご両親に対して接見禁止等一部解除決定がなされ、ご本人様はご両親との面会や手紙のやり取りができるようになりました。
また、弁護士が検察庁に対し、本人は受取った郵便物の中身が詐欺によるお金であると知らなかった、受取る荷物は書類だと信じていたことから、詐欺の故意や共謀は認められない旨を主張した結果、ご本人様は不起訴処分となりました。

【まとめ】

組織的な特殊詐欺事件など共犯者がいる事件では、勾留時に接見禁止がつくケースが多くなります。
しかし、事件に無関係な家族(配偶者、両親、子供など)に対しては、家族は事件には無関係であることや、面会の必要性を裁判所に適切に主張していくことにより、接見禁止が解除されることも多いのです。
また、ご本人様の行ったことが犯罪にはあたらない、その他、被害者様と示談が成立している、再犯防止の環境が整っている、本人も反省している、などを検察庁に適切に主張していくことにより、不起訴処分を獲得する可能性が高まります。

接見禁止一部解除や不起訴処分を得るための、裁判所や検察庁への主張・申立ては、法律の専門家である弁護士に任せるのがよいでしょう。

特殊詐欺事件、詐欺事件で家族だけでも接見禁止を解除したい、不起訴処分を受けたいという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
事件について詳細に確認をとったうえで、接見禁止一部解除の可能性や不起訴処分が下されるかどうかの見通しについてご説明致します。

業務上横領事件の「横領」行為と弁護活動

2022-04-07

業務上横領事件の「横領」行為と弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【刑事事件例】

Aさんは、愛知県名古屋市名東区内にあるIT企業(V会社)に従業員として勤務していました。
Aさんの仕事内容としては、経理としてV会社の預金(預金口座)を管理することが含まれていましたが、Aさんは約40回にわたり、勝手に会社の預金口座からAさん自身の銀行口座に合計約1億5000万円を送金しました。
その後、V会社が被害を届け出たことで、Aさんは愛知県名東警察署の警察官により業務上横領罪の容疑で逮捕されました。
Aさんは、「横領した約1億5000万円には一切手を付けていない。何とか被害を弁償したり示談をしたりすることはできないか」と話しています。
Aさんの話を聞いたAさんの家族は、被害弁償や示談を含めた業務上横領事件の対応や、業務上横領罪自体について詳しく聞きたいと思い、名古屋市刑事事件に対応している弁護士に相談してみることにしました。
(2020年9月10日に中國新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【業務上横領罪の「横領」とは】

業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する(刑法253条)。

前回の記事では、業務上横領罪の条文上にある「占有」について詳細に確認をしました。
今回の記事では、まずは残りの条件について確認していきましょう。

業務上横領罪の「自己の占有」(刑法253条)は、所有者その他の権限者からの委託に基づいてなされている必要があります。
簡単に言うと、その物の所有者などから任されてその物を「占有」しているという委託関係の状態が必要なのです。
業務上横領罪の要件である委託関係は、委任、寄託、賃貸借、使用貸借のような物の保管を内容とする契約のほかに、売買契約や雇用契約などによって発生するものであっても差し支えないと考えられています。

刑事事件例に当てはめて考えてみましょう。
AさんはV会社との雇用契約により、V会社の経理担当としてV会社の預金口座の管理を行っていました。
よって、V会社の預金口座の管理について、AさんとV会社との間には委託関係があったといえると考えられます。

さらに、業務上横領罪に該当する行為は、自己の占有する他人の物を「横領」することです。
業務上横領罪の「横領」とは、自己の占有する他人の物を不法に領得すること、すなわち、「不法領得の意思」を実現するすべての行為をいうと考えられています。
「不法領得の意思」の定義は、「他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思」であるとされています(最高裁判決昭和24年3月8日)。

今回のAさんの刑事事件例で考えてみましょう。
本来、V会社の預金をAさんの口座に送金することは、預金の所有者であるV会社の意思に基づかなければできない行為です。
会社の預金を送金するということは会社の預金を外部に移すということですから、会社の意思に基づかなければできないことは当然であると考えられます。
また、無断でV会社の預金をAさんの口座に送金することは、経理担当の従業員の職務内容には含まれているとは考えられませんから、AさんとV会社の委託関係の範囲を超えることになるでしょう。

それにも関わらず、Aさんは無断でV会社の預金を自分の口座に送金しています。
これは、「他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分を」していたといえます。
よって、Aさんの行為は業務上横領罪の「横領」に該当すると考えられます。

最後に、業務上横領罪は、今まで検討してきた自己の占有する他人の物を横領する行為が「業務上」なされる必要があります。
業務上横領罪の「業務」とは、人がその社会生活上の地位に基づき反復継続して行う事務であるところ、刑事事件例のAさんの経理担当としての職務は、業務上横領罪の「業務」に該当すると考えられます。

以上より、Aさんには業務上横領罪が成立すると考えられます。

【業務上横領罪と示談】

会社の金を横領した業務上横領事件を起こしてしまった場合、被害を受けた会社に被害金を返還することが重要な弁護活動の1つとなることが予想されます。

刑事事件例では、Aさんは横領した約1億5000万円には手を付けていないと話しています。
刑事弁護士の活動としては、すみやかにV会社の担当者又は代理人弁護士と連絡を取り、上記の被害金の全額を返還するための交渉を開始するといった弁護活動が考えられるでしょう。
そして、V会社の担当者又は代理人弁護士との示談交渉の結果として示談が締結出来れば、検察官の起訴・不起訴の判断や、裁判になった際の刑罰の重さの判断に際して有利な事情となり得ます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を中心に取り扱う法律事務所です。
会社の金を横領した業務上横領事件を起こしてお困りの場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。

業務上横領罪と「占有」

2022-04-02

業務上横領罪と「占有」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【刑事事件例】

Aさんは、愛知県名古屋市名東区内にあるIT企業(V会社)に従業員として勤務していました。
Aさんの仕事内容としては、経理としてV会社の預金(預金口座)を管理することが含まれていましたが、Aさんは約40回にわたり、勝手に会社の預金口座からAさん自身の銀行口座に合計約1億5000万円を送金しました。
その後、V会社が被害を届け出たことで、Aさんは愛知県名東警察署の警察官により業務上横領罪の容疑で逮捕されました。
Aさんは、「横領した約1億5000万円には一切手を付けていない。何とか被害を弁償したり示談をしたりすることはできないか」と話しています。
Aさんの話を聞いたAさんの家族は、被害弁償や示談を含めた業務上横領事件の対応や、業務上横領罪自体について詳しく聞きたいと思い、名古屋市刑事事件に対応している弁護士に相談してみることにしました。
(2020年9月10日に中國新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【業務上横領罪とは】

刑法253条は以下のように業務所横領罪を規定しています。

業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する(刑法253条)。

業務上横領罪は、被疑者自身が占有(濫用のおそれのある支配)をしている被害者の財物を領得することにより成立する犯罪です。
同じ財産に対する犯罪としては窃盗罪が思い浮かびやすいですが、窃盗罪とは異なり、被害者の占有(事実上の支配)を排除して被害者の方の財物を領得することにより成立する犯罪ではないことが、業務上横領罪の特徴です。

以下では、業務上横領罪が成立するための具体的な要件である「占有」に注目してみましょう。

【業務上横領罪の要件~「占有」】

業務上横領罪の客体(対象)は「自己の占有する他人の物」(刑法253条)です。

まず、V会社の預金が、Aさんにとっては「他人の物」(刑法253条)に該当するということは理解できるでしょう。

業務上横領罪の要件の理解が少々難解な部分は「自己の占有する」(刑法253条)という要件にあります。

業務上横領罪の「占有」(刑法253条)とは、濫用のおそれのある支配力であると考えられています。
濫用するおそれのある支配力を有していればよいことから、業務上横領罪の「占有」(刑法253条)は、物に対する事実的支配に加えて、法律的支配も含むとされています。
法律的支配の分かりやすい例としては、不動産の登記を有している場合が想定できるでしょう。
不動産の登記がある場合、必ずしも不動産に対する事実的支配もあるとは言えませんが、法律的支配があるとして、業務上横領罪の「占有」(刑法253条)に該当するのです。
対して、同じ財産に対する罪である窃盗罪では、「占有」の考え方は物に対する事実上の支配を指すと考えられています。

なお、今回の事例のように、預金を銀行に預けていたという場合には、銀行に預けているお金なのだから、その預金の事実上・法律上支配=「占有」は銀行のものではないかと疑問に思われるかもしれません。
しかし、現在の通説では、預金債権の支配が、性質上金銭その物の支配を同一視できると考えられています。
つまり、銀行に預金しているというケースであっても、その預金を操作できる立場にある場合には、預金に対する「占有」(濫用のおそれのある支配力)(刑法253条)を有していると考えられています(大審院判決大正9年3月12日)。
学説によっては、先に述べたように、銀行に預けている預金は銀行の「占有」のもとにあるとしているものもありますが、現状はこうした考えが通説となっています。

今回の刑事事件例では、AさんはV会社から預金の管理を任されています。
このとき、上記の考え方に照らせば、AさんはV会社の預金口座内の預金について占有(濫用のおそれがある支配)をしていたといえることになります。

刑事事件では、犯罪に当たるかどうかを考える時、この業務上横領罪の「占有」のように、1つ1つ条件の定義を考えた上でそれに当てはまるかどうかを検討し、判断していきます。
自分の行為のどこかどのように犯罪に該当しているのかといったことを正しく把握しておくことも、取調べで意図していない供述をしないようにするなどの防御においては重要なことです。
しかし、こうした検討・判断をするには、刑事事件の経験や知識が必要不可欠ですから、専門家の弁護士の力を借りることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を中心に取り扱っている法律事務所です。
名古屋市業務上横領事件でお悩みの場合、刑事事件への対応にお困りの場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。

愛知県犬山市の商標法違反事件で任意同行を相談

2022-02-11

愛知県犬山市の商標法違反事件で任意同行を相談

愛知県犬山市商標法違反事件任意同行をする場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【刑事事件例】

愛知県犬山市に住んでいるAさんは、有名ブランドであるXの偽ブランド品を大量に輸入して、近日自分で運営する個人サイトで販売する予定でした。
数日後、愛知県犬山警察署の警察官がAさんの自宅を訪ね、「インターネットであなたの個人サイトを拝見しました。商標法に関連して、販売予定のXの商品で聞きたいことがあります。警察署で詳しく話を聞かせてください。」などと言い、Aさんは愛知県犬山警察署任意同行することになりました。
(フィクションです)

【商標法(侵害の罪)】

今回Aさんが任意同行される際に警察官から伝えられている商標法という法律には、以下の規定があります。

商標権または専用使用権を侵害した者(第37条又は第67条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行った者を除く。)は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(商標法第78条)

第37条または第67条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行った者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(商標法第78条第2項)

このようにして、偽ブランド品やコピーした商品などの商標権等を侵害した商品を輸出・輸入・所持・譲渡等した場合、商標法第78条第2項により処罰されます。

1 商標とは

商標法で保護されている商標とは、具体的な商品について使用される標章(人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的若しくは色彩またはこれらの結合、音など)(商標法第2条1項)を指します。
商品だけでなく、役務(いわゆるサービス)についても認められます。

2 犯行の主体

商標権を侵害する行為の主体に特に制限はなく、誰でも行えます。

3 犯行の対象

犯行の対象とされているものは、指定商品、指定商品や指定役務に類似する商品、その商品やその商品の個装に登録商標またはこれに類似する商標を付したものです。
「指定商品」、「指定役務」とは、商標出願にあたり、その商標を使用しているまたは使用を予定している商品や役務を指定する必要がありますが、この指定された商品や役務のことをいいます。
「登録商標」とは、商標登録を受けている商標をいいます(商標法第2条5項)。
類似する商標に該当するかは、商標の見た目(外観)、読み方(呼称)、一般的な印象(観念)の類似性や、取引の実情を踏まえ、総合的に出所混同のおそれがあるのかを取引者や一般の人を基準に判断していくことになります。

4 行為

今回の商標法違反に該当する行為は「所持」で、人が物を保管する実力的支配関係を内容とする行為をいいます。

5 目的

先ほど触れた「所持」については、譲渡、引渡し、輸出のために所持する目的が必要です。

【刑事事件例について】

Aさんは有名ブランドの偽ブランド品を輸入して、販売目的で所持していました。
上述の理由によりAさんには商標法違反の罪が成立すると思われます。

【Aさんに対する弁護活動】

偽ブランド品を所持していても、それを自分で使うためだけに所持していたり、そもそも偽ブランド品であることに気づかなかった・知らなかった場合は商標法違反は成立しません。
例えば、このような事実がある場合には、まずはこのことを客観的な証拠から主張していくことが考えられます。

商標法違反の成立に争いがない場合は、被害者への被害弁償や示談交渉を行うことが大切です。
被害金額が大きくなく、商標法違反や不正競争防止法違反などの同種前科が無ければ被害者との示談成立により起訴猶予による不起訴処分を目指すことも可能です。
仮に裁判になった場合でも、被害弁償や示談成立がされれば、執行猶予付き判決を獲得できる可能性が高まります。
また、被害弁償や示談成立がされれば、逮捕・勾留などの身柄拘束を回避できる可能性を高めることができます。

いずれにせよ、弁護士のサポートがあることで有利な結果を得る手助けになりますから、早期に刑事事件に強い・示談交渉に強い弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
示談交渉を数多く行った経験のある刑事弁護士も多数在籍しております。
愛知県犬山市商標法違反事件で相談をしたい、家族が商標法違反事件任意同行をすることになった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。

交際あっせん詐欺事件で逮捕されたら

2021-12-31

交際あっせん詐欺事件で逮捕されたら

交際あっせん詐欺事件逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【刑事事件例】

Aさんは、出会い系サイトで、Vさん(愛知県名古屋市守山区在住)に「連絡先交換費用を支払えば、女性の携帯番号が提供される」などと虚偽の内容のメッセージを送りました。
これに騙されたVさんは、合計60回にわたり、Aさんの銀行口座に合計3000万円を振込みました。
振込み後もAさんから連絡がなかったため、Vさんは交際あっせん詐欺に遭ったと自覚し、愛知県守山警察署の警察官に被害を訴えました。
その後、Aさんは愛知県守山警察署の警察官により詐欺罪の容疑で逮捕されました。
(2021年1月5日にSTVNEWSに掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【詐欺罪とは】

人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する(刑法246条1項)。

詐欺罪は、①被疑者の方による被害者の方を「欺く行為」→②被害者の方の「錯誤」→③被害者の方の「交付行為」→④被疑者の方の「取得行為」という経過を経ることによって成立する犯罪です。

【詐欺罪の各要件】

以下では、詐欺罪の各要件を見ていきます。

詐欺罪の①被疑者の方による被害者の方を「欺く行為」とは、被害者の方が真実を知っていれば財産の交付を行わないような重要な事実を偽ることをいいます。

詐欺罪の②被害者の方の「錯誤」とは、上記①被疑者の方による被害者の方を「欺く行為」により、被害者の方が瑕疵ある意思を有すること(騙されたこと)をいいます。

詐欺罪の③被害者の方の「交付行為」とは、上記瑕疵ある意思に基づいて財産を被疑者の方に移転させることをいいます。

詐欺罪の④被疑者の方の「取得行為」とは、被疑者の方が財産を取得することをいいます。

【詐欺罪と刑事事件例】

以下では、刑事事件例のAさんの行為が上記詐欺罪の各要件を満たすかについて見ていきます。

刑事事件例では、AさんはVさんに「連絡先交換費用を支払えば、女性の携帯番号が提供される」などと虚偽の内容のメッセージを送っています。
このメッセージが虚偽であること、すなわち連絡先交換費用を支払っても本当は女性の携帯番号など提供されないという真実を知っていれば、Vさんはお金を支払わなかったと考えられます。
よって、Aさんの行為は、詐欺罪の①「欺く行為」に当たると考えられます。

また、VさんはAさんから送られてきた虚偽のメッセージに騙されて、「連絡先交換費用を支払えば、女性の携帯番号が提供される」と騙されてしまっています。
ここに、Vさんは詐欺罪の②「錯誤」状態にあったといえると考えられます。

さらに、VさんはAさんの銀行口座に合計3000万円を振込んでいます。
ここに詐欺罪の③「交付行為」及び詐欺罪の④「取得行為」があると考えられます。

以上より、Aさんには詐欺罪が成立すると考えられます。

【詐欺事件と刑事弁護活動】

詐欺事件において有効な刑事弁護活動のひとつとして「示談」があります。
詐欺事件の示談では、Vさんに刑事弁護士を通して正式に謝罪をし、示談金を支払い、被害の弁償を行います。

詐欺事件の示談金としては、振り込まれた金額が手元に残っていればその返還を行った上、一定の慰謝料を支払うのが一般的だといえます。
振り込まれた金額が手元に残っていない場合は、被疑者の方自身が準備するか、ご家族の協力を得て工面する必要があると考えられます。

示談により、執行猶予が得られたり、刑が軽くなったりするため、示談交渉に強い刑事弁護士を選ぶことは非常に重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
交際あっせん詐欺事件で逮捕された場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。

愛知県名古屋市天白区の遺失物等横領事件と微罪処分(後編)

2021-12-10

愛知県名古屋市天白区の遺失物等横領事件と微罪処分(後編)

愛知県名古屋市天白区遺失物等横領事件微罪処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
愛知県名古屋市天白区遺失物等横領事件微罪処分(前編)の続きとなります。

【遺失物等横領罪の要件(その2)】

遺失物等横領罪を規定した刑法254条を再度引用します。

刑法254条
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。

遺失物等横領罪における「横領」とは、領得行為をいうと考えられています。
すなわち、不法に領得する意思を持って、遺失物等を自己の事実上の支配下に置くことをいうと考えられています。
そして、不法に領得する意思の意義については、物の経済的用法に従って、所有者でなければできない処分をする意思を指します。

刑事事件例について見てみると、Aさんは、本件自転車を持ち去り、遺失物横領事件が発覚する日までの間、本件自転車に乗っています。
こAさんの行為は、まさに本来の所有者でなければできないであろう経済的な使用であり、Aさんは本件自転車を不法に領得しようという意思を持って自己の支配下に置いていたといえます。
よって、Aさんの行為は遺失物等横領罪の「横領」に該当すると考えられます。

以上より、Aさんには遺失物等横領罪が成立すると考えられます。

【遺失物等横領罪と微罪処分】

本件遺失物等横領罪微罪処分の対象事件に該当する可能性があります。

微罪処分とは、検察官により指定された極めて軽微な事件についてのみ認められた処分であり、検察官に事件の送致をすることなく刑事手続を終局させる処分をいいます。
すなわち、微罪処分となれば警察の捜査段階で事件が終了し、裁判を受けたり刑罰を受けたりということはないということです。

微罪処分については、刑事訴訟法246条や犯罪捜査規範198条1項が以下のように規定しています。

刑事訴訟法246条
司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。
但し、検察官が指定した事件については、この限りではない。

犯罪捜査規範198条1項
捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。

微罪処分の対象となるのは、通常、犯情が軽微、被害額が僅少で、被害回復が行われ、被害者の宥恕(許し)があり、かつ偶発的犯行であって再犯のおそれがない事件です。
遺失物横領事件も、事情によっては上記微罪処分の対象事件の要件を満たす余地があります。

先ほど触れたように、微罪処分となれば、検察官に事件が送致されないため、当該事件の被疑者の方が起訴されることはありません。
そこで、刑事弁護士を選任し、遺失物横領事件の被害者の方と示談交渉を経て、被害弁償や示談を行うことが重要です。
遺失物横領事件の被害者の方の宥恕(許し)を得ることができれば、検察官へ事件が送検されることなく、刑事手続を終局させることができる可能性があると考えられます。
微罪処分とならなくとも、示談締結の事実は不起訴処分の獲得や刑罰の減軽に有利に働く事情となりますから、いずれにせよ遺失物横領事件の当事者となってしまったら早めに弁護士に相談・依頼することがおすすめです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
遺失物等横領事件のような微罪処分対象事件を取り扱った経験のある刑事弁護士も多数在籍しております。
愛知県名古屋市天白区遺失物等横領事件でお困りの場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください

愛知県名古屋市天白区の遺失物等横領事件と微罪処分(前編)

2021-12-07

愛知県名古屋市天白区の遺失物等横領事件と微罪処分(前編)

愛知県名古屋市天白区遺失物等横領事件微罪処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【刑事事件例】

愛知県名古屋市天白区内に住むAさんは、深夜、同市内の路上を歩いていると、1台の自転車(以下、本件自転車と呼びます)が無施錠の状態で路上のわきに放置されていることに気付きました。
Aさんはこの自転車が盗難車で乗り捨てられているのだろうということにすぐに気が付きましたが、「盗まれるやつが悪い」と思い、そのまま自転車を持ち去りました。
後日、Aさんが深夜に本件自転車に乗っていると、愛知県天白警察署の警察官から職務質問を受け、Aさんが自転車を持ち去ったことが発覚しました。
愛知県天白警察署の警察官によると、自転車は本来Vさんが所有していたものであったといいます。
その後、Aさんは愛知県天白警察署の警察官により遺失物横領罪の容疑で取調べを受けました。
(2020年7月30日に千葉日報オンラインに掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【遺失物等横領罪の要件(その1)】

刑法254条は遺失物等横領罪を規定しています。

刑法254条
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。

実務では、「遺失物」「を横領した者」には遺失物横領罪、「漂流物」「を横領した者」には漂流物横領罪、「その他占有を離れた他人の物を横領した者」には占有離脱物横領罪というように、名称が区別されることがあります。

遺失物等横領罪の「占有を離れた他人の物」とは、占有(物を事実上支配する)者の意思に基づかずにその占有(事実上の支配)を離れた物で、誰の占有(事実上の支配)にも属していないもの、および、偶然に被疑者の方の占有(事実上の支配)に帰属したものをいうと考えられています。

そして、遺失物等横領罪の「遺失物」や「漂流物」は、上記「占有を離れた他人の物」の例であると考えられています。
つまり、遺失物等横領罪の「占有を離れた他人の物」のうち、占有(物を事実上支配する)者の意思に基づかずにその占有(事実上の支配)を離れた物で、誰の占有(事実上の支配)にも属していないものを「遺失物」といい、その中でも水面又は水中に存在するものを「漂流物」といいます。

その他、「占有を離れた他人の物」の例としては、誤配達された郵便物、隣家から飛んできた洗濯物、誤って多く渡された釣り銭などが考えられます。
これらは、占有(物を事実上支配する)者の意思に基づかずにその占有(事実上の支配)を離れた物で、偶然に被疑者の方の占有(事実上の支配)に帰属したものに該当します。

刑事事件例において、自転車は、本来Vさんが所有していたものであり、Aさん以外の何人かにより盗み取られ、愛知県名古屋市天白区内の路上に放置されていたものです。
これは、Vさんの意思によらずにその占有(事実上の支配)が離れ、何人かの乗り捨て行為を経て、まだ誰の占有(事実上の支配)にも属していないものであると考えられます。
よって、本件自転車は遺失物等横領罪の「遺失物」に該当すると考えられます。

遺失物横領事件では、示談交渉などの弁護活動が考えられます。
弁護士に事件の詳しい事情を話すことでより具体的な弁護活動を聴くことができますから、まずは弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
遺失物等横領事件のような微罪処分対象事件を取り扱った経験のある刑事弁護士も多数在籍しております。
愛知県名古屋市天白区の遺失物等横領事件でお困りの場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。

愛知県名古屋市天白区の遺失物等横領事件と微罪処分(後編)に続きます。

愛知県豊田市の強盗致傷事件で逮捕

2021-11-23

愛知県豊田市の強盗致傷事件で逮捕

愛知県豊田市強盗致傷事件逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【刑事事件例】

Aさん(21歳・男性)は、交際相手であるBさん(21歳・女性)に対してVさん(20歳・男性)が連絡を取るなどしたことに立腹し、愛知県豊田市内の公衆トイレでVさんの髪をつかみ、壁に頭をぶつけるなどして「ぼこられるか金を出すか」などと脅迫し、現金を奪おうとしました。
しかし、Vさんが所持金をほとんど持っていなかったため、何も取らずに逃走しました。
Vさんは全治2週間の怪我を負ったといいます。
その後、愛知県豊田警察署の警察官は、Aさん(とBさん)を強盗致傷罪の容疑で逮捕しました。
強盗致傷罪の容疑での逮捕の連絡を受けたAさんの両親は、愛知県豊田市に近い刑事事件に強い法律事務所への法律相談を検討しています。
(10月15日に産経新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【強盗致傷罪とは】

刑法240条は強盗致傷罪を規定しています。

「強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する」(刑法240条)

刑法240条の「強盗」とは、刑法236条の強盗罪の犯人や、刑法238条の事後強盗罪の犯人、刑法239条の昏睡強盗罪の犯人を指し、それぞれ既遂犯・未遂犯は問わないとされています。

ここで、刑法236条1項を見てみると、以下のように規定されています。

「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する」(刑法236条1項)
強盗罪の未遂犯は強盗未遂罪として処罰されます(刑法243条)。

刑法236条1項の強盗罪の成立には「暴行又は脅迫を用いて」「強取」がなされる必要があります。
そして、強盗罪における「暴行又は脅迫」を用いた「強取」とは、被害者の反抗を抑圧するものに足りる暴行又は脅迫により、財物を奪取することをいいます。

刑事事件例では、愛知県豊田警察署の警察官は、AさんによるVさんの髪をつかみ、壁に頭をぶつけるなどして「ぼこられるか金を出すか」などと脅迫する行為は、強盗罪における「暴行又は脅迫」に該当すると考えたのでしょう。
そして、結局AさんはVさんから現金などの財物を奪取するに至っていません。
よって、愛知県豊田警察署の警察官の判断を前提にすると、Aさんは強盗未遂罪の犯人である、すなわち刑法240条の強盗致傷罪の主体である「強盗」に該当すると考えられます。

この刑法240条の強盗致傷罪の主体である「強盗」が、強盗の機会に「人を負傷させた」とき、その者には強盗致傷罪が成立することになるのです。

刑事事件例をみてみると、Aさんは、上記のような「暴行又は脅迫」により、Vさんに全治2週間の怪我を負わせています。
よって、Aさんには強盗致傷罪が成立すると考えられます。

なお、確かにAさんはVさんから現金などの財物を奪取するに至っていません。
しかし、強盗致傷罪の既遂犯・未遂犯は、財物を奪取したか否かではなく、負傷の結果を生じさせたか否かで決まると考えられています。
そのため、Aさんには強盗致傷罪の既遂犯が成立すると考えられるのです。

【強盗致傷罪と示談】

強盗致傷事件を起こした場合において、少しでも刑を軽くさせたい場合は、強盗致傷事件の被害者の方であるVさんと示談をすることが重要となります。

本件強盗致傷事件では、共犯者としてBさんがいます。
そのため、Aさんの刑事弁護士としては、Bさん又はBさんの選任された刑事弁護士と連絡を取った上、被害弁償額を按分する方向性で示談交渉を開始するなど、円滑な示談交渉に向けた迅速な対応を行うことができると考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
愛知県豊田市の強盗致傷事件で逮捕された場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。

加重収賄罪の容疑の収賄事件を弁護士に相談

2021-11-19

加重収賄罪の容疑の収賄事件を弁護士に相談

加重収賄罪の容疑の収賄事件弁護士に相談するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

【刑事事件例】

Aさんは愛知県刈谷市の農業林業振興課に勤務していました。
愛知県刈谷市の農業林業振興課では林道工事を計画していましたが、その発注の際、AさんはB建設会社から有利な取り計らいをしてほしい旨の依頼を受けました。
このB建設会社からの依頼を受け、Aさんは、B建設会社が入札できるよう違法に有利な取り扱いをしました。
そして、AさんはB建設会社から賄賂として現金30万円を受け取り、自己のために消費しました。
その後、Aさんは愛知県刈谷警察署の警察官により加重収賄罪の容疑で逮捕されました。
(2020年11月19日に福井新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【加重収賄罪とは】

刑法第197条の3第1項は、加重収賄罪について、以下のように規定しています。

刑法第197条の3第1項
公務員が前2条(注:刑法第197条・第197条の2)の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当な行為をしなかったときは、1年以上の有期懲役に処する。
第2項
公務員が、その職務上不正な行為をしたと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項を同様とする。

加重収賄罪(刑法第197条の3第1項)が「前2条」として引用する刑法第197条第1項は、単純収賄罪と受託収賄罪を規定しています。

刑法第197条第1項
公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。
この場合において、請託を受けたときは、7年以下の懲役に処する。

これらの条文を整理すると、以下のような関係があるといえます。
まず、「公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたとき」は、単純収賄罪(刑法第197条第1項前段)が成立します。
次に、「公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をした」うえ、「請託を受けた」場合には、受託収賄罪(刑法第197条第1項後段)が成立します。
さらに、これらの単純収賄罪(刑法第197条第1項前段)・受託収賄罪(刑法第197条第1項後段)を犯した者が、「よって不正な行為をし、又は相当な行為をしなかったとき」は、加重収賄罪(刑法第197条の3第1項)が成立します。

以上のような関係を前提に、Aさんに加重収賄罪が成立するか考えたいと思います。

【加重収賄罪の各要件】

まず、Aさんは単純収賄罪(刑法第197条第1項前段)・受託収賄罪(刑法第197条第1項後段)を犯した者であるといえるか考えます。

単純収賄罪の要件である「賄賂」(刑法第197条第1項前段)とは、公務員の職務行為に対する対価としての不正な報酬をいいます。

刑事事件例でAさんがB建築会社から受け取った現金30万円は、公務員であるAさんの職務行為に対する対価としての不正な報酬であるといえます。
よって、AさんがB建築会社から受け取った現金30万円は、単純収賄罪の「賄賂」(刑法第197条第1項前段)に該当すると考えられます。

また、同じく単純収賄罪の要件である賄賂の「収受」(刑法第197条第1項前段)とは、供与された賄賂を自己の物とする意思で取得することをいいます。
刑事事件例では、AさんはB建築会社から現金30万円を受け取り、まさに自分のために消費していますので、単純収賄罪の賄賂の「収受」(刑法第197条第1項前段)に該当すると考えられます。

そして、受託収賄罪の要件である「請託を受けた」(刑法第197条第1項後段)とは、一定の職務行為を行うことの依頼を受けたことをいいます。
刑事事件例では、AさんはB建設会社から有利な取り計らいをしてほしい旨の依頼を受けています。
よって、Aさんは、受託収賄罪の「請託を受けた」(刑法第197条第1項後段)といえると考えられます。

以上より、ひとまずAさんは受託収賄罪を犯したものであるといえると考えられます。

次に、Aさんに加重収賄罪が成立するかを考えます。

加重収賄罪の要件である「不正な行為」(刑法第197条の3第1項)とは、積極的行為により職務に違反することをいいます。

刑事事件例では、Aさんは、B建設会社からの依頼を受け、B建設会社が入札できるよう違法に有利な取り扱いをしました。
このAさんの行為は、公務員の裁量権を濫用した職務違反行為であると考えられます。
よって、このAさんの行為は、加重収賄罪の「不正な行為」(刑法第197条の3第1項)に該当すると考えられます。

以上より、Aさんには加重収賄罪が成立すると考えられます。

これまで検討してきた通り、収賄事件では法律の適用関係が多少複雑であるといえます。
そのため、まずは、刑事事件に強い弁護士が在籍する法律事務所へ法律相談をし、専門的な見地から分かりやすい言葉で収賄事件について助言してもらうことで収賄事件の全貌を把握することが重要でしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
加重収賄罪の容疑の収賄事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください。

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