春日井市で外国国章損壊等罪に問われたら

2019-08-03

春日井市で外国国章損壊等罪に問われたら

~ケース~

春日井市在住の芸術家のAさんは、「現代資本主義国家への反逆」という名称の作品を作成した。
これは名前の通り現代の資本主義を痛烈に批判するもので,資本主義各国の国旗を切り裂いた物などを素材に使っていた。
この作品が芸術祭に展示されたところ,「外国国章損壊等罪」に当たるのではないかと来場者から問合せを受けた。
Aさんは表現物であるので憲法上保証された権利であると考えているが,仮に何らかの罪に問われる可能性があるのであれば展示を取り下げようと考えている。
そこでAさんは,刑事事件に詳しい弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料相談を利用した。

(フィクションです)

 

~芸術の自由~

日本国憲法第21条は「表現の自由」を保障しています。
一方で日本国憲法には「芸術の自由」について言及する条文はありません。
ドイツ,オーストリア,スイスといった国では、表現の自由,報道の自由などの保護を記した文章と同じ箇所に示されています(ドイツ共和国基本法5条3項,スイス連邦憲法21条,オーストリア憲法17条)。
これは日本国憲法は「芸術の自由」を保証していないというわけではなく,例えば文学作品の執筆・公表は表現の自由の一環として保障されると解するのが一般的です。
したがって,絵画や彫刻などの作成・公表も表現の自由の一環として保障されると解するのが妥当でしょう。

~制約~

表現の自由は重要な人権ですが、制約がないわけではありません。
たとえば刑法175条のわいせつ物頒布罪はわいせつな文書などの頒布行為などを禁止しています。
有名なチャタレ―事件では,憲法13条のいう公共の福祉を「性的秩序を守り,最小限度の性道徳を維持することが公共の福祉の内容をなすことについて疑問の余地がない」とし,「本件訳書を猥褻文書と認めその出版を公共の福祉に違反するものとなした原判決は正当である」としました。
したがって,わいせつな表現物である場合には公共の福祉に反するので,刑法などによって制約される場合があるのはやむを得ないと考えられます。
そのため,いかに表現物であり表現の自由が保障されるといても,わいせつ物頒布罪等などは成立しうることになります。

~外国国章損壊等罪~

では芸術作品に外国国章損壊等罪は成立するのでしょうか。
まずは条文を確認しましょう。

刑法第92条(外国国章損壊等)
1項 外国に対して侮辱を加える目的で、その国の国旗その他の国章を損壊し、除去し、又は汚損した者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
2項 前項の罪は、外国政府の請求がなければ公訴を提起することができない。

まず,外国国章損壊等罪の成立には外国に足して侮辱を与える目的が必要となります。
今回のケースでAさんの作品は資本主義を批判するものであり,特定の国に対して侮辱を与える目的ではなかったと考えることもできます。
また,条文からは読み取ることができませんが,外国国章損壊等罪の客体となる国旗その他の国章とは私人によるものは含まず,在日外国公館などで公的に使用されているものに限られるというのが通説であり,判例も方向性としてはそれに沿っています。
そのため,芸術作品などに私物の外国国旗などを損壊等したものを用いたとしても外国国章損壊等罪には該当しないといえます。
したがって,Aさんの作品は外国国章損壊等罪の対象とはなりません。
また,上記の解釈から,外国に対するデモ等で当該国の国旗を損壊しても外国国章損壊等罪にはならないといえるでしょう。
なお,デモの際に大使館の抑揚している国旗を損壊したような場合には外国国章損壊等罪が成立します。
また,個人が抑揚している外国旗を損壊したというような場合には器物損壊罪が成立すると考えられます。

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