強制わいせつ罪で不起訴を目指すケースについて,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説いたします。
今回は,強制わいせつ罪について詳しく見ていきます。
【ケース】
Aさんは,愛知県春日井市にあるマンションで一人暮らしをしています。
Aさんが住むマンションの近くには中高一貫校Xがあり,AさんはXの生徒が通学する様子を日々自宅の窓から眺めていました。
あるとき,AさんはXの生徒にわいせつな行為をしたいと思うようになり,人通りの少なくなる夜を狙ってXの生徒にわいせつな行為に及ぶことを企てました。
そして,ある日の午後8時頃,帰宅途中のVさん(16歳)に背後から近づいて,Vさんの口を手で押さえたうえで制服の下に手を入れ胸を揉みました。
その後Aさんはすぐに逃走しましたが,Vさんが春日井警察署に相談したことで,Aさんは強制わいせつ罪の疑いで逮捕されました。
Aさんと接見した弁護士は,Aさんから「不起訴になる可能性はないか」と聞かれました。
(フィクションです。)
【強制わいせつ罪について】
刑法(一部抜粋)
第百七十六条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
強制わいせつ罪は,暴行または脅迫を手段として(ただし,被害者が13歳未満なら不要)「わいせつな行為」をした場合に成立する可能性のある罪です。
暴行または脅迫により抵抗を困難にし,被害者の意に反してわいせつな行為を行うことを処罰する罪だと言えます。
「暴行」という言葉を聞くと,殴る蹴るといった相手方に怪我を負わせるような行為をされるかもしれません。
ですが,強制わいせつ罪における「暴行」とは,相手方の抵抗を困難にする程度の不法な有形力・物理力の行為を指すものとされています。
こうした考えから,「暴行」は先述した行為に限られず,たとえば口を押えたり羽交い絞めにしたりする行為なども含まれうるということが導き出されます。
また,「わいせつな行為」とは,裁判例において「徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」と定義されています。
実務上,これに当てはまるとされる傾向が高いのは,無理やりキスをする,陰部に指を入れる,直接胸を揉む,といったものが挙げられます。
基本的に,衣服の上から軽く触れる程度の行為であれば,「わいせつな行為」とまでは言えず強制わいせつ罪に当たらない可能性が高いです。
ただし,その場合でも大半は各都道府県が定める迷惑防止条例違反に当たることが見込まれるため,注意が必要です。
以上を前提に,Aさんに強制わいせつ罪が成立するか検討してみます。
Aさんは,Vさんに背後から近づいて,口を押えたうえで直接胸を揉んでいます。
これらの行為は,口を押えるという「暴行」を手段として,直接胸を揉むという「わいせつな行為」に及んだものと評価しうるものです。
そうすると,Aさんに強制わいせつ罪が成立する可能性は高いと考えられます。
強制わいせつ罪の法定刑は6か月以上10年以下の懲役なので,仮に今回の事件で起訴されて有罪となれば,Aさんは懲役刑の言い渡しを免れません。
そこで,今回の事件において不起訴を目指せないか検討したいところです。
この点については次回の記事で解説いたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,刑事事件に強い弁護士が,個々の事案にあわせて強制わいせつ罪の成否を慎重に検討します。
ご家族などが強制わいせつ罪の疑いで逮捕されたら,刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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