名誉毀損罪で任意の取り調べを受けた

名誉毀損罪で任意の取り調べを受けた

名誉毀損罪で任意の取り調べを受けた場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。

ケース

愛知県名古屋市瑞穂区の新聞社に勤めるAさん(45歳)は、愛知県内の選挙区から当選した国会議員であるVさん(40歳)に対し、かねてから自分の政治信念と一致しないことからVさんの人気に立腹していた。
そこで、Aさんは、Vさんについて綿密に取材を重ね、既婚者であるVさんが妻以外の複数の女性と交際関係にあると突き止めた。
Aさんは、Vさんは国民の代表たる政治家として不適切であると考え、取材情報を新聞に公表した。
一方、Vさんは自身の名誉が傷付けられたとして、愛知県警瑞穂警察署に告訴した。
その後の愛知県警瑞穂警察署の捜査の結果、Aさんは名誉毀損罪の容疑で任意の取り調べを受けるに至った。
Aさんは、「自分は正しいことをしたのではないか」と考え、自身を弁護してくれる法律事務所を探している。
(この事例はフィクションです。)

名誉毀損罪の成立

公然と事実を適示し、人の名誉を毀損した者には、名誉毀損罪が成立します(刑法第230条第1項)。
法律に定められた刑(法定刑)は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金です。

名誉毀損罪は親告罪であり、告訴がなければ、検察官は起訴することができません。
告訴とは、犯罪の被害者その他一定の者が捜査機関に対し、犯罪事実を申告して、犯人の処罰を求める意思表示をいいます。
しかし、親告罪について告訴の提出がされていない場合でも、告訴の可能性の有無や事案の大小から慎重に判断した上で犯罪の捜査を開始することは可能であると解されています。

ケースでは、名誉毀損罪の被害者であるVさんが、愛知県警瑞穂警察署に告訴していることから、検察官が起訴することは可能であると考えられ、また、愛知県瑞穂警察署の捜査も適法であると考えられます。

名誉毀損罪が不可罰になる場合

名誉毀損罪として規定されている行為(「公然と、事実を摘示」する行為)が
①公共の利害に関することに係り、
かつ、
②その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合
には、
③事実の真否を判断し、真実であることの証明があったとき
は、これを罰しない(名誉毀損罪は成立しない)とされています(刑法第230条の2第1項)。

さらに、名誉毀損罪として規定されている行為(「公然と、事実を摘示」する行為)が、公務員又は公選による公務員の候補者に関す事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しないとされています(刑法第230条の2第3項)。
つまり、名誉毀損罪が不成立となる条件(①、②、③)のうち、③が満たされれば基本的に不可罰となります。
このように①②の要件が不要となる理由は,公務員に対する批判の自由の保障を徹底すべきだという考えに基づきます。
そのため,公務員の身分を持つ者に関する事実であれば何でもいいとまでは考えられていません。

ケースにおいてAさんが公表した情報は、国会議員であるVさんが妻以外の複数の女性と交際関係にあるというものです。
このこと自体はVさんのプライベートに関わる事柄ですが,Vさんは国民の代表たる国会議員としての資質が問われる立場にあると言えます。
そうすると,Aさんが公表した内容は「公務員…に関する事実」だと考えられます。

Aさんの公表した内容が「公務員…に関する事実」である以上,その内容が真実だと証明できれば名誉毀損罪は成立しない可能性が高いです。
それでは,仮に真実だと証明できなかった場合,Aさんには名誉毀損罪が成立することになるのでしょうか。
この点については,確実な資料・根拠に基づく相当な理由によって真実だと誤信したのであれば,責任を問うべきではないとして名誉毀損罪の成立が否定されると判断した裁判例が存在します。
この裁判例に従えば,仮にAさんが公表した情報の真実性を証明できずとも,真実だと信じたのが相当な理由によることを理由に名誉毀損罪の成立を否定する余地があるということになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部では、刑事事件のみを専門に扱う法律事務所として、名誉毀損罪に関する刑事弁護も自信をもってお受けいたします。
名誉毀損罪で任意の取り調べを受けた場合は、刑事事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部にご相談下さい。

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