護身用グッズで軽犯罪法違反に問われたら

2019-09-05

護身グッズで軽犯罪法違反に問われたら

~ケース~

名古屋市名東区在住のAさん(30代・女性)は, 健康のために早朝もしくは仕事終わりの深夜に近所をジョギングしていた。
しかし,近所に不審者が出没していると町内回覧板に載っていたため,Aさんは護身用としてインターネットで購入した催涙スプレーを携帯していた。
ある日の深夜,Aさんがジョギングしていると,パトロール中の愛知県警察名東警察署の警察官であるXから職務質問を受けた。
Aさんがこれに快く応じたところ,その際に発見された催涙スプレーを咎められた。
Aさんは護身用であると答えたものの,Xにより交番で事情を聞かれ,後日軽犯罪法違反の疑いで書類送検された。
納得がいかないAさんは,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料法律相談を利用した。

~護身グッズと軽犯罪法~

軽犯罪法1条2号には,軽犯罪として次のように規定されており,違反すると科料または拘留に処せられます。

正当な理由がなくて刃物,鉄棒その他人の生命を害し,又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者

科料は1000円以上1万円未満の「罰金」,拘留は1日以上30日未満の「禁錮」を指します。
なお,実際には罰金および禁錮には当たりませんが,上記は説明のために罰金・禁錮という文言を使用しています。

護身グッズは暴漢などに襲われた場合に身を守るためのものですので,ある程度相手に対する攻撃力が必要です。
そのため,護身グッズは人の身体に害を加えるものであるといえ,携帯することは軽犯罪法違反となる可能性があります。
なお,刃渡り15cm以上の刃物(日本刀や剣類)は銃刀法3条,刃体の長さが6cmを超える刃物(カッターナイフ・はさみ等)は同法22条により携帯が禁止されているため,軽犯罪法のいう刃物とは原則として6cm以下の刃物等となります。
また,「隠して携帯していた者」が軽犯罪法違反となりますので堂々と所持していれば軽犯罪法に該当しないことになります。
一方で,愛知県迷惑行為防止条例2条3項は「何人も,公共の場所又は公共の乗物において,正当な理由なく,刃物,鉄棒,木刀そ
の他人の身体に危害を加えるのに使用することができる物を,通行人,入場者,乗客その他の公衆に対し不安を覚えさせるような方法で携帯してはならない。」と規定しています。
そのため,堂々と所持した場合には軽犯罪法ではなく迷惑行為防止条例違反となる可能性があります。
なお,催涙スプレーは「その他人の生命を害し,又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具」であると裁判所によって示されています(最判平20・7・9)。

~Aさんの場合~

軽犯罪法は「正当な理由がなく」が要件となっています。
したがって,催涙スプレーを隠して所持していても正当な理由があれば軽犯罪法違反とならないといえるでしょう。
では「正当な理由がある」とされるのはどのような場合でしょうか。
上掲の平成20年最高裁判決では,被告人が経理に携わっており,多額の現金や有価証券を電車等で運ぶことが多かったため,護身用として催涙スプレーを購入したというものでした。
そして,催涙スプレーを深夜,健康のために行っていたサイクリングの際に携帯していたという事件です。
最高裁は「正当な理由」を,本号所定の器具を隠匿携帯することが,職務上又は日常生活上の必要性から,社会通念上,相当と認められる場合をいい,これに該当するか否かは,当該器具の用途や形状・性能,隠匿携帯した者の職業や日常生活との関係,隠匿携帯の日時・場所,態様及び周囲の状況等の客観的要素と,隠匿携帯の動機,目的,認識等の主観的要素とを総合的に勘案して判断すべきものと解されるとしました。
判例の事件では,職務上の必要から比較的小型の催涙スプレーを購入したものであり,専ら防御のために深夜のサイクリングに際して隠匿携帯したものであり,社会通念上,相当な行為であって,上記「正当な理由」に当たるとしました。

なお,上記判決の補足意見は,あくまでも事案に即した判決であり,催涙スプレーの所持が軽犯罪法違反とならないわけではないとしています。
Aさんの場合,判例とは催涙スプレーの購入の事情が異なるため,必ずしても軽犯罪法違反とならないとは限りません。
ただし,判例によって検察官が不起訴とする場合なども考えられます。
もし,軽犯罪法違反として検挙されてしまった場合には最寄りの弁護士に相談されることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件専門の法律事務所です。
何気ない行為が軽犯罪法違反となってしまった場合には0120-631-881までお気軽にご相談ください。
事務所での無料法律相談のご予約を365日24時間年中無休で受け付けています。