下着泥棒で窃盗罪に

下着泥棒で窃盗罪に

下着の窃盗事件と弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【事件】

Aさんは愛知県名古屋市にあるVさん宅のベランダに干されていた女性用下着を4点盗みました。
近隣住民が車で逃走するAさんを目撃し,通報を受けた熱田警察署が捜査を開始しました。
その後、車のナンバーなどからAさんが特定され,Aさんは窃盗罪の疑いで取調べを受けることになりました。
(フィクションです)

【窃盗罪】

窃盗罪は刑法第235条に規定されています。

刑法第235条
他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪とし,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

「財物」とは、有体物である動産のことを意味し、不動産(主に建物や土地)以外の様々なものが含まれます。
必ずしも金銭的ないし経済的価値を持つものでなければならないというわけではありません。
次に、「窃取」とは,占有者の意思に反して財物に対するその占有を排除し,その財物を自己の占有下に移す行為です。
かみ砕いて説明すると、他人の元にあるものを自分の元へ移す、と説明できます。

「占有」については,法律に特有の難しい概念と言えます。
簡単に言うと物を支配している状態を意味します。
「占有」は物を肌身離さず持っていれば認められる可能性が高いですが、そうでない場合には検討すべき事項となります。
どのような場合に占有があるか認められるかは一概には言えませんが,過去の裁判例では,海中に落した物(最決昭和32・1・24・刑集11-1-270)やバス待合所に一時的に置き忘れたカメラ(最判昭和32・11・8刑集11-12-3061)などで,所有者が意識していたり置いた場所をすぐに思い出して取りに戻ったりした場合にはその占有が認められています。
逆に,広大な湖沼に逃げ出した鯉(最決昭和56・2・20刑集35-1-15)や大規模スーパー内の6階で置き忘れたが被害者が思い出して10分後に取りに戻った財布(東京高判平成3・4・1判時1400-128)について,その占有を否定した裁判例があります。

以上の裁判例からも,占有の有無の認定はそう簡単にできるものではないことが分かります。
敢えて一般化すれば、具体的に以下のような事情を特に参考にするでしょう。

①場所
自宅や自己の管理する場所内か,一般に人がその物を意識して置く場所かなど

②物自体の特性
忘れやすい物か,高価な物か,大きいかなど

上記事例において,Aさんはベランダに干されていた下着を盗んでいます。
ベランダは各部屋の住人が管理する場所であることから,そこに干してある下着には住人の占有が及んでいるものと理解されるでしょう。
したがって,ベランダに干してある他人の下着を取る行為は,窃盗罪の実行行為に当たると考えられます。

【住居侵入罪】

事件の概要からは明らかではありませんが,ベランダの下着を盗むために塀などの内側やベランダに立ち入った場合は,住居侵入罪(刑法第130条前段)に問われる可能性もあります。
住居侵入等罪は,正当な理由がないのに,人の住居もしくは人の看守する邸宅,建造物もしくは艦船に侵入した場合に成立します。
この罪の法定刑は3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。
また,未遂も処罰されます(刑法第132条)。

「住居」とは,人の起臥寝食に使用される場所を指します。
「邸宅」とは,住居用に作られた建造物とこれに付随する囲繞地(塀や柵などで囲まれている土地)のことです。
「人の看守する」とは,管理人や監視人がいたり,鍵がかけられているなど,現実に人が支配・管理している状況にあるという意味です。

また,「侵入」とは,住居権者(世帯主など)またはその委任を受けた推定的意思を含む看守者等の意思に反して,住居等の領域に立ち入ることと理解されています。
住居権者等の意思に反するような目的を隠して承諾を得た場合も,真意に基づく承諾ではないため「侵入」に当たると考えられています。

【弁護活動】

窃盗事件の依頼を受けた弁護士の活動は,身柄拘束からの解放と不起訴や執行猶予の獲得が中心になります。
まず,被疑者が逮捕や勾留されている場合は,被疑者に逃亡のおそれがないことや証拠隠滅のおそれがないことを主張することで早期の身柄の解放を目指します。
さらに,被害者と示談を成立させることで処罰回避を図ります。
弁護士を介した示談交渉は,当事者同士で行う場合より円滑に進むことが期待できます。
それ以外のものとして,被疑者が取調べを受けるにあたって法的なアドバイスを行うことも重要な弁護士の活動の一つとして挙げられます。

自分にどういう権利があってどう行使できるのかまったくわからない状況で取調べを受けると被疑者にとって不当に不利な調書の作成などが行われる可能性があります。
弁護士に事件を依頼することで必要以上の不利益を被るリスクを回避することが期待できます。

窃盗事件の被疑者となってしまった方,熱田警察署で取調べを受けることになってしまった方は,お早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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