SNS利用で気を付けたい法的リスクと炎上トラブル

夏休み

世間は夏休みシーズンに入りました。
子供たちとしては楽しいシーズンである反面,小中高学校のお子さんを持つ親世代としては色々と悩み事が増えてくる時期でもあります。
近年,その悩みの種の一つになるのが「子供をSNSの危険からどう守るか/どうやって危険を学ばせるか」です。
SNS(X〈旧Twitter〉やInstagramなど)の普及により,誰もが気軽に情報発信や交流を楽しめるようになりました。しかしその一方で,SNS上の不適切な投稿が原因で「炎上」して社会的批判を浴びたり,場合によっては法律に触れて逮捕損害賠償請求をされたりといった,深刻な事態に発展するケースも増えています。
とくに未成年の皆さんやその保護者の方は,「ネットでのノリ」が思わぬ犯罪行為やトラブルにつながる可能性があることを知っておく必要があります。
本記事では,SNSや動画共有サイト,ファイル共有ソフトを利用する際に注意すべき代表的な法的リスクと対策について,以下のポイントを中心に解説します。

~本記事の要点~ ※目次をクリックしていただくことでご希望のページに飛ぶことができます。
1. 名誉毀損や侮辱:他人への誹謗中傷やデマ拡散は犯罪
2. 脅迫:挑発的・攻撃的な言動やDMでの脅しは犯罪
3.児童ポルノ・リベンジポルノ:自撮りのわいせつ画像送信や無断の性的画像拡散は犯罪(厳しく罰せられる)
4.プライバシー侵害:他人の写真や個人情報の無断公開は違法・賠償義務
5.生成AIコンテンツの扱い:AIが作った画像や文章でも法的責任は投稿者

各項目について,SNS上で実際に起きた典型例や過去の判例を紹介しつつ,未成年のお子さんに教える際のポイントや,万一トラブルに巻き込まれた場合の対応策(弁護士や警察への相談など)も具体的にまとめます。ぜひ親子で本記事の内容を共有し,安全安心なネット利用にお役立てください。

足立先生

     本コラムは東京支部所属足立直矢弁護士が監修しています。

1.SNS上の名誉毀損・誹謗中傷に注意

SNS中傷

他人を傷つける投稿は犯罪です。
匿名のSNSだからと言って,他人への悪口やデマを書き込めば「名誉毀損罪」や「侮辱罪」といった犯罪が成立します。
刑法では,名誉毀損罪は「公然と人の社会的評価を低下させるような事実を示すこと」により成立し,3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 (刑法第230条)が科されます。
たとえ書き込んだ内容が事実でも,公共の利害に関する正当な目的がない限り処罰されることがあります
「本当の事だからいいじゃん」という言い訳は通じません。
また,事実の指摘を伴わない悪口でも,公然と他人を侮辱すれば「侮辱罪」となり得ます。「ばか/あほ/しね」も侮辱です。

近年はネット上の誹謗中傷への厳罰化が進んでいます。
2020年には,テレビ番組出演者だった女子プロレスラーがSNSで激しい中傷を受け自殺する痛ましい事件が起きました。
この事件を契機に侮辱罪の刑罰が引き上げられ,2022年7月7日以降は侮辱罪一年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料(刑法第231条)になりました(改正前(2022年7月6日以前)は拘留又は科料)。※現在は懲役ではなく拘禁刑です。
一般人が特定の個人に対してSNSに「死ね」「バカ」などと書き込んだだけでも書類送検・略式起訴され,科料が科せられるなんてこともあるでしょう。
前述した2020年におきた侮辱事件では、中傷投稿者の一人は侮辱罪で科料9,000円が科せられ,前科がついています。
法改正後はさらに重い刑罰を科すことが可能になったため,「たかが悪口」と軽く考えるのは大変危険です。

SNS名誉毀損の典型例
次のような投稿は名誉毀損罪侮辱罪に該当しうるので絶対に避けましょう:
• 「〇〇は万引きをしていたらしい」 – 他人を犯罪者扱いするデマ投稿(事実無根ならなお悪質)
• 「あいつは頭がおかしい」「無能で生きてる価値がない」 – 人格を貶める抽象的な暴言投稿
• 顔写真付きで「こいつブサイクだから皆で笑おうぜ/あの子,鼻の整形してるのにあんなにブスだwww」と晒し者にする投稿 – 外見等を嘲笑し社会的評価を下げる行為
これらはいずれも本人の名誉を大きく傷つける投稿であり,被害者が警察に被害届を出せば逮捕・送検される可能性があります。
実際に,SNS上で一般人を誹謗中傷した10代少年が名誉毀損罪逮捕されたケースや,有名人への中傷を書き込んだ複数人が一斉に書類送検されたケースも報じられています。成人であれば実名で報道されるケースもあり,それこそ一生消えないネット上の「汚名」を負うことになってしまいます。

悪質なデマ拡散も厳しく問われます
事実無根の情報を面白半分に拡散する行為も名誉毀損罪に該当します。
例えば,あるお笑いタレントは無関係な殺人事件の犯人だというデマを10年以上流され続け,最終的にデマを書き込んだ男女7人が名誉毀損罪脅迫罪で書類送検されました。

また近年注目された裁判例では,他人の名誉を傷つける内容の投稿をリツイート(拡散)しただけでも責任を問われた例があります
民事事件の裁判例ですが,東京地方裁判所令和3年11月30日の判決では,社会的評価を低下させるような内容のイラスト付きツイートを無言リツイートしたユーザーに対し「拡散行為も不法行為責任を負うというべき」として責任が認められ,約11万円の損害賠償命令が下りました。

「自分は既に投稿されている内容を拡散しただけだから大丈夫」ではなく,悪質な内容を共有する行為自体が違法となり得ることに注意しましょう。

対策とアドバイス
SNSで発信する前に「それを書かれた相手の気持ち」「公開された場で拡散される影響」を想像してください。
特定の個人を批判・中傷する内容は避け,どうしても意見を述べる場合でも表現を冷静に選ぶべきです。
投稿直後は冗談のつもりでも,拡散によって予期せぬ人々の目に触れ大事に至るケースもあります。
SNSやインターネット上での投稿は,どうしても「現実味」がなく,あたかも架空の世界での出来事のように感じられるかもしれません。
そのため,投稿の先にいる“閲覧者”や誹謗中傷をされる“被害者”のことまで想像できないのではないかと思います。
しかし,全て現実世界で起きていることです。
同じ内容の投稿を玄関のドアにも貼れるか,対面で発言しても問題がない内容なのか,よく考えて行動すべきでしょう。

もしSNS上で誹謗中傷の被害に遭ったら,証拠スクリーンショットを保存し,プラットフォームへの通報や専門家への相談を検討しましょう。
早期に弁護士に相談すれば,投稿者の特定や削除請求など適切な対応策をアドバイスしてもらえます。被害が深刻な場合は警察への被害届提出も視野に入れ,決して泣き寝入りしないことが大切です。

2.ネット上の脅迫・暴力予告に注意

スマホ 脅迫

SNSや掲示板で怒りにまかせて「〇〇を殺してやる」「お前の家に火を点けてやる」などと書き込む行為は,犯罪です。
脅迫罪」は,「相手に対し生命・身体・自由・名誉・財産などに対して、一般の人が恐怖に感じるような害悪を加える告知をすること」により成立し,2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 (刑法第222条)が科せられます。
ネット上の発言であっても脅迫罪は成立し得ますし,実際にSNS経由の脅迫で逮捕者が出た事例も数多くあります

脅迫の具体例
以下のような書き込みは脅迫罪に該当し,警察沙汰になるリスクがあります。
• 「今度会ったらマジで殴るからな」「リンチしてやる」 – 特定個人に対する暴行予告
• 「お前の住所は分かっている。家に火をつけてやる」 – 自宅への危害を示唆する発言(内容によっては「家わかってるから」 等もアウト)
• 「◯月◯日にお前の学校(会社)に行ってやる」「ガソリン持って突っ込むぞ」 – 具体的日時を挙げて害を加える予告
• DMなどで「裸の写真ばら撒くぞ」「言うこと聞かなきゃ殺す」 – 弱みにつけこんで相手を脅すメッセージ

第三者から見て「脅し」と受け取れる内容であれば,公開投稿だけでなくDM(ダイレクトメッセージ)やゲーム内チャットなど比較的クローズドな場でも脅迫罪は成立し得ます。
また「殺害予告」や「爆破予告」は脅迫罪のみならず場合によっては業務妨害罪(学校やイベントを中止に追い込めば威力業務妨害罪)等でより重い罪に問われることもあります。
偽計業務妨害罪、威力業務妨害罪の法定刑は3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(刑法第233条、234条)です。

実際に,女性タレントに対してSNSで「死ね」や「イベントガチで行くからな」などと送った男性が脅迫罪威力業務妨害罪の容疑で逮捕に至っています

脅迫被害への対処
もしSNS上でこのような脅しに遭遇した場合,ためらわず警察に相談してください。
身の危険を感じるような内容であれば110番通報すべきですし,緊急性が低い場合でも最寄りの警察署や「#9110」(警察相談専用電話)で相談できます。
その際,脅迫メッセージや投稿のスクリーンショット,相手のアカウント情報など証拠を保存しておくことが大切です。
警察がすぐ動けない場合でも,後々の捜査や法的措置のため証拠は確保しておきましょう。
また,SNS運営会社へ通報して投稿やアカウントの削除・凍結を求めることも有効です。
何度も同じアカウントからの脅迫が届いたり,複数名義であっても同一人物による脅迫だと思われるような場合には,運営会社やプロパイダに対して発信者情報開示請求を行うことも検討しましょう。

絶対に加害者にならないようにするには
脅し文句は決して書き込まないことです。
SNS上では感情的になり「死ね」など過激な言葉を使ってしまうことがあるかもしれませんが,一度書いた言葉は取り消せません。
冗談半分のつもりでも犯罪が成立し得ます。
たとえ友人同士のじゃれ合いでも,公の場に書けば第三者から脅迫と見なされる可能性もあります。
自分が加害者になれば前科が付いたり高額の慰謝料請求を受けたりするリスクもあるため,「相手を威嚇する表現」は絶対に避けましょう
もし他人が脅迫まがいの投稿をしているのを見かけた場合も,決して便乗したり共有したりせず,静観・通報に徹するのが賢明です。
いいねやリツイート,スクショ画像の拡散についても,思いがけないような批判の対象となる可能性があります。

3.児童ポルノ禁止法・リベンジポルノ法違反に注意【未成年向け】

自撮り

SNSの利用において,特に夏休みのシーズンに特に注意が必要なのが,わいせつな画像・動画に関する法律です。
未成年者が軽い気持ちで送ってしまった「自分の裸の写真」や,他人に対する悪意で拡散してしまった性的画像が,重大な犯罪行為該当することがあります。
ここでは「児童ポルノ禁止法」と「リベンジポルノ防止法」を中心に解説します。
※児童ポルノ禁止法、リベンジポルノ防止法はそれぞれ略称です。
正式名称はそれぞれ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律、私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律になります。

自分や他人の裸画像を送る・公開するのは犯罪!被害者にも加害者にもならない!

画像送信

18歳未満の少年少女の性的な写真・動画は,それが本人の同意の上で撮影されたものであっても法律で厳しく取り締まられています。
日本の「児童ポルノ禁止法」では,18歳未満 の者が写った裸体や性行為の画像・映像は「児童ポルノ」に該当し,それを製造・提供・所持する行為は犯罪となります。

以下のような行為は児童ポルノ禁止法違反です
自画撮りポルノ画像,動画の依頼・送信
交際相手に裸写真をスマホで撮影し送るように頼む ⇒ 児童ポルノ製造罪・提供罪3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(児童ポルノ禁止法第7条2項~5項))に該当し得る。
仮に頼んでいないものだったとしても,受け取って保存した時点で所持罪に問われる可能性があります。
第三者への転送・拡散
他人(18歳未満)の性的画像を面白半分に友人へ転送,またはSNSやファイル共有ソフトで公開 ⇒ 児童ポルノ提供罪・公然陳列罪提供は3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(児童ポルノ禁止法第7条2項),公然と陳列する行為,つまり誰にでも見れるようにSNS上に公開する行為は5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又はこれを併科(児童ポルノ禁止法第7条6項))。
たとえ相手が同級生でも,不特定多数が見られる状態にすれば公然陳列になり罪に問われることになります。
他人に裸の画像を要求する
SNSやチャットで「裸の写真送って」と未成年に要求する行為⇒各都道府県の青少年健全育成条例違反となり得ます。
仮に相手が自撮りで近年,青少年条例を改正してこの「自画撮り画像の要求」を禁止する地域も増えています(例:千葉県青少年健全育成条例では18歳未満に児童ポルノを要求する行為を禁止)。
16歳未満の児童にわいせつ画像を要求した場合には、16歳未満の者に対する映像送信要求罪が成立1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(刑法182条3項))する可能性があります。
また,未成年者に裸や下着姿で自撮り画像,動画を撮らせる行為については不同意わいせつ罪強要罪が成立する場合があります。
例えば,未成年が自分で撮影行為をしたとしても,相手を困惑させて「言うことに従わなければいけない」という心理状態に陥らせた場合や,「言うことを聞かないと写真を拡散するぞ」等と脅していた場合などです。
このように相手を困惑させて敢行した犯罪や,脅迫が伴う場合には逮捕となる事案が多く見られます。
また,相手が16歳未満である場合には相手が自撮り画像を送ることを同意したとしても,わいせつな行為をさせて撮影させると不同意わいせつ罪が成立する可能性がありますので注意が必要です。

実際,「自画撮り」で作成された児童ポルノの事例は年々増加傾向にあります。
東京都生活文化局作成の平成29年統計によれば,SNSを通じて知り合った人に騙されたり脅されたりして裸の画像を送らされる被害が多発し,児童ポルノ事件の摘発件数の中でも特に割合が多いのがこの『自画撮り被害』とされています(東京都生活文化局平成29年統計「児童ポルノ等被害が深刻化する中での青少年の健全育成について」)。

例えば女子中高生が「同年代の友達だよ」とSNSで近づいてきたアカウントに誘導され,最初は顔写真を送っただけだったのに「もっと過激なのちょうだい」と要求がエスカレート,しまいには裸の画像まで送ってしまうケースがあります。
一度送ってしまったが最後,相手は「言うことを聞かないと前の画像をばら撒くぞ」と被写体の子を脅迫し,さらに被害が深刻化する(二次被害・継続被害)ことも少なくありません

親御さんへのポイント
お子さんには「どんな相手でも裸や下着姿の写真・動画を絶対に送らないこと」を強く教えてください。
仲の良い恋人同士(最低限の交友関係の把握も重要でしょう)でも,万一喧嘩別れした際にリベンジポルノ被害が起きる可能性がありますし,そもそも送った画像がネット上に出回れば一生消えません
実際に自分や友達が被害に遭ったニュース記事や,警察作成の啓発マンガなどを一緒に読むのも効果的です。
万一,子どもが裸画像を送ってしまった場合やネット上で拡散されてしまった場合は,一人で抱え込まず速やかに警察や弁護士に相談しましょう。
削除依頼や犯人特定の手続き,心のケアなど専門的サポートにつなげることができます。

リベンジポルノ(性的画像の無断拡散)も犯罪

ネット犯罪

リベンジポルノ防止法」(正式名称:私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)は,交際相手など私的に撮影・取得した性的な写真や動画を,本人の同意なく第三者に提供・公開する行為を禁止する法律です。
俗に「別れた腹いせに元恋人の裸画像をばら撒く」行為を想定して制定された法律ですが,実際には交際関係になかった相手に対する嫌がらせ目的の拡散なども含め,被害防止のため広く適用されます。
リベンジポルノ行為で有罪となれば3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(リベンジポルノ防止法第3条1項)という厳しい刑罰が科せられます。
この犯罪に対しては警察も逮捕することが多いです。

被写体が18歳未満であれば児童ポルノ関連犯罪としてより重い処分が科される可能性があります。
仮に18歳未満同士で性的画像を送り合う行為も,児童ポルノ禁止法第7条違反として処罰対象となり得ることに注意しなければなりません。
子供が彼氏/彼女とふざけ合って送ったとしても,14歳以上であれば「犯罪少年」として警察の捜査の対象となるのです。

具体例
過去には,元交際相手の女性の裸動画をインターネット上に公開した20代男性がリベンジポルノ防止法違反逮捕された事件や,知人女性のわいせつ画像を無断で投稿した男性が同法違反で有罪判決を受けた例があります。
「リベンジポルノ」という名前からは,「過去に交際相手だったが,別れた腹いせに」というニュアンスを感じるかもしれませんが,交際相手だったかどうかは法律上関係がありません。
全く見ず知らずの第三者の性的画像であったとしても,個人が特定できるようなものであれば処罰の対象になります。

またSNS上ではなくても,他人にそのような画像を見せたり渡したりする行為も処罰対象です。
例えばスマホに残った元恋人の裸写真を第三者に見せただけでも,条件次第では提供行為とみなされ処罰される可能性があります。

リベンジポルノは被害者に一生消えない深い心の傷を負わせる極めて悪質な犯罪です。
性的画像がネット上に流出してしまうと完全な削除は困難で,将来にわたって被害者を苦しめ続けます。
たとえ一時の腹いせでも絶対にしてはいけない行為です。

アドバイス
万一,交際相手から送られてきた裸や性行為中の写真・動画を「誰かに見せてやろうか」などと持ち出して脅された場合は,それ自体が脅迫罪強要罪に該当します。
決して泣き寝入りせず,すぐに周りの大人や両親,学校の先生,警察に相談しましょう。
リベンジポルノ被害に遭った場合は,警察への被害届提出のほか,専門の窓口(総務省や法務省などの公的な相談窓口や,民間の相談窓口など)も活用して速やかな画像削除と法的措置を進めることが大切です。
また,加害側にならないため,恋人同士であっても相手の承諾なくプライベートな画像を他人に見せたりネットにアップしたりしないという基本的なモラルを守りましょう。
一度でもそのような行為に及べば信用は一瞬で失われ,刑罰や慰謝料で人生を棒に振るリスクもあります。

4.写真・個人情報の無断公開はプライバシー侵害

撮影禁止

SNS上で他人の秘密や個人情報を勝手に公開する行為も大きな問題です。
法律上,「プライバシー権の侵害」は明確な刑事罰こそ規定されていませんが,民事上の不法行為(民法709条)として損害賠償の対象になります。
また内容によっては名誉毀損と合わせて訴えられたり,業務妨害罪など他の罪に問われる可能性もあります。

インターネット上に本人の許可なく以下のような情報を公開することは,一般にプライバシー侵害に当たるとされています
• 個人の特定に繋がる情報: 本名,住所,電話番号,勤め先,通学先,家族構成など
• 容姿や姿がわかる画像: 顔写真や動画,車のナンバー,自宅周辺が写った画像など
• 私生活上の秘密: 成績や病歴,恋愛・家庭のトラブル,過去の非行歴など,公に知られたくない個人的事項

例えば,SNSでトラブルになった相手の本名や住所を晒す(いわゆる「特定」して公開する)行為や,無断で撮影した相手の写真を許可なく投稿する行為は,典型的なプライバシー侵害と言えます。
掲示板に他人の電話番号や住所が書き込まれたり,本人しか知らない情報を暴露されたりする被害も後を絶ちません。
有名人であっても,プライベートな情報(自宅住所や家族の素性など)を暴露すればプライバシー侵害となり得ますし,一般人であればなおさら保護されるでしょう。

肖像権
プライバシーの一部として「肖像権(自身の写真や映像を勝手に撮られ公開されない権利)」も裁判で認められています。
他人の顔や姿が写った写真を本人の許可なくネット上に公開すれば,プライバシー侵害・肖像権侵害として慰謝料請求を受ける場合があります。
実際に,「街中で撮った他人の写真を本人の承諾なくSNS投稿し,容姿を嘲笑するようなコメントを付けた」というケースで肖像権侵害・名誉感情侵害を認めた裁判例もあります。
特に未成年同士では,面白半分で友達の写真を許可なくアップしてしまうこともあるかもしれませんが,それが侮辱的な文脈になっている場合や本人が嫌がっている場合,立派な権利侵害となるので注意しましょう。

「晒し」に対する法的措置
ネット上に自分の個人情報や写真を晒されてしまった場合,まずはサイト運営側に削除を依頼することが重要です。
プライバシー権侵害を理由に削除要請が認められるケースは多く,電話番号や住所など明確にプライバシー性の高い情報ほど迅速に削除されやすい傾向があります。
自力で削除が難しい場合や書き込みが拡散している場合は,弁護士に相談して発信者情報の開示請求や損害賠償請求を検討しましょう。
実名や住所を晒した相手を特定し,慰謝料を請求することも可能です。
開示請求には裁判手続きを要しますが,違法性の高いプライバシー侵害であれば比較的認められやすいです。

たとえばSNS上で自宅住所を暴露されたケースでは,投稿者に対し慰謝料20万円程度が認められた裁判例もあります(被害状況によって金額は上下します)。
刑事罰こそ無いものの,民事上で責任を追及されることになる点で,プライバシー侵害も決して「やっていい」行為ではありません。

SNS利用の注意点
「他人の個人情報は書かない・載せない」 を徹底しましょう。
学校名や住所などは本人が公表していない限り書き込まない,集合写真を投稿するときは写っている人に配慮する等は最低限のマナーです。
繰り返しになりますが,ネット上での発信と現実世界での発言は同じように見られます。
玄関先で出来ないこと,言えないことはネット上でも言うべきではありません。
また自分自身についても,SNSのプロフィールや投稿で過度に詳細な個人情報を公開しないように気を付けるべきです。
公開範囲の設定を見直す,知らない人に見られて困る内容は載せないといった自己防衛・情報管理も大切です。
万一「ネットに自分の情報が晒されている!」と気付いた時は,焦らず証拠を保存し,上記のように削除依頼や専門家への相談を速やかに行ってください。
特に悪質な晒し行為(ストーカーまがいの個人情報特定など)の場合は警察が動くこともありますので,迷ったら警察相談窓口(#9110等)に相談するのも有効です。

5.生成AI(人工知能)コンテンツの扱いと悪用リスク

近年話題の生成AI(Generative AI)を使えば,画像や文章をAIが自動生成してくれるため,SNS投稿の素材作りも手軽になりました。
しかし,AIが作ったコンテンツであっても,それを投稿・利用する責任はあくまで人間に帰属します。
以下のポイントに注意しましょう。

「AIがやったことだから許される」わけではない
AI生成の画像・文章に他人を中傷する内容やプライバシー情報が含まれていれば,それを投稿した人は名誉毀損やプライバシー侵害の責任を問われます。
例えば,友達の顔写真を勝手にAI加工(ディープフェイク)して面白おかしく動画にし,それをSNSに投稿する行為は明確な肖像権侵害であり法的責任を問われる可能性があります。
AIで作ったものであっても,他人を傷つけたり嘘の情報を広めたりすれば,従来の方法と同様に違法行為となることを忘れないでください。

著作権への配慮
AIが生成した画像やテキストにも著作権の問題があります。
一般に,AIはインターネット上の大量の既存作品を学習してコンテンツを作るため,生成物が他人の著作物に酷似してしまう可能性があります。
例えば,有名キャラクターにそっくりなイラストをAIで作ってグッズ販売すれば,元の権利者から著作権侵害で訴えられるリスクがあります。
また,ChatGPTのようなAIチャットは学習データ由来の文章をそのまま吐き出すこともあり,知らずに他人の文章を丸写ししたような結果を得てしまうケースも報告されています。
「AIが作ったものだから自由に使っていい」とは限らないのです。
この点については世界的にも法整備・ルール作りが問題となっています。

デマ拡散の危険
生成AIの発達により,フェイク画像・フェイク動画が誰にでも作れる時代になりました。
SNS上では,AIが合成した嘘のニュース映像や捏造画像が本物と思われて拡散され,大きな混乱を招くケースも出ています。
例えば2023年には,AI生成の偽の爆発写真が株式市場に影響を与えかねない騒動になったり,2025年にはAIで作られた巨大津波のCG動画に「〇月〇日に大地震が起きる」といったデマ情報が添えられて拡散し,政府が注意喚起する事態も起きました。
AIによる「嘘のコンテンツ」も簡単に信じず,情報の真偽を見極めるリテラシーが一層重要になっています。
特に,感情を煽るような衝撃的な内容ほど一旦立ち止まって疑う習慣を持ちましょう。

対策とアドバイス
生成AIを利用する際は以下の点に気を付けてください。
• 他人を傷つける用途に使わない
他人の顔写真を合成して遊んだり,AIに悪意あるデマ文章を作らせたりしないこと。
冗談でも他人の顔や声を勝手に使えば違法となり得ると心得ましょう。
特に他人を辱めるようなディープフェイク,生成ポルノは作成・拡散とも厳禁です。
• 権利者がいる素材は生成に使わない
有名作品のキャラクターや芸能人の写真など,明らかに著作権・肖像権が及ぶ素材を使ってAI画像を生成し,その結果を公開するのは避けましょう。
訓練データとして利用するだけでも倫理的・法的問題がありますが,生成物を公開すると権利侵害が表面化しやすいです。
• 生成物のチェックを怠らない
AIから得た文章や画像は,そのままコピペ投稿せず人間の目で内容を確認しましょう。
第三者の文章を盗用していないか,事実誤認や差別的表現が含まれていないか,公開して問題ない品質かをチェックします。
商用利用時は特に注意が必要です。
• 自分の情報も守る
誰でもディープフェイクの被害者になり得ます。
他人任せにせず,自分の顔写真や個人情報をむやみにネットに公開しないなど自衛策を講じて,情報管理を徹底することが重要です。
公開された写真がAIの学習に使われたり,勝手に加工され悪用される恐れもあります。
SNSのプライバシー設定を見直し,信頼できる人にだけ見せる運用にするのも有効でしょう。
自分自身の投稿のみならず子供の写真等も十分に注意しなければなりません。

もしAI関連のトラブル(デマの拡散被害や勝手に自分のAI偽造画像が出回った等)に遭った場合も,基本的な対処は他の項目と同様です。
SNS運営への通報や削除依頼,必要に応じて弁護士や警察への相談を行いましょう。
特にディープフェイクポルノなど深刻なプライバシー侵害の場合は,迷わず専門機関に助けを求めてください。
法律の整備が追いついていない部分もありますが,現行法(名誉毀損罪リベンジポルノ防止法など)で対応できるケースも多いと考えられます。

おわりに

安全なSNS利用のために
SNS上の何気ない一言やワンクリックの共有が,時に取り返しのつかない炎上や犯罪につながることがあります。
今回取り上げた 名誉毀損・脅迫・児童ポルノ・プライバシー侵害・AI悪用 といったリスクは,未成年の方にもぜひ知っておいてほしい重要なポイントです。
特に学生同士では,「みんなやっているから大丈夫」「ネットの中だけの遊び」と思いがちな行為が,実社会では違法だったというケースも起こり得ます。

保護者の方へ
お子さんがSNSやネットを利用する際は,ぜひ定期的にルールやマナーについて話し合ってください。
警察庁や各都道府県警も「スマホ・SNS利用5か条」などを提示しています。
例えば
• 人を傷つけることを書かない・拡散しない(誹謗中傷やデマはしない)
• 自分や他人の裸画像は絶対に撮らない・送らない(被害者にも加害者にもならない)
• 個人情報はむやみに公開しない(自宅や学校が特定される情報は伏せる)
• 知らない人と安易にやりとりしない(出会い系被害や詐欺に注意)
• 困ったときは大人に相談する(一人で抱え込まない)
このような基本ルールを家庭内で確認し,フィルタリングの活用やスマホ利用時間の管理など環境面の整備も行うと良いでしょう。

万一,トラブルが起きてしまったら,早めに専門機関へ相談しましょう。
学校の先生やスクールカウンセラー,警察の少年相談窓口,刑事事件を扱っている弁護士など,頼れる先はいくつもあります。
総務省や警察庁のHPにはネットトラブル相談先一覧も掲載されていますので参考にしてください。
特に深刻な人権侵害や犯罪被害の場合,法的措置で加害者を特定し責任を追及する道も開けます。
SNSやネットは使い方次第で便利にも危険にもなります。
法律を正しく理解し,ルールとモラルを守って,安全で楽しいインターネットライフを送りましょう。

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