一宮市の通貨偽造罪なら
~ケース~
一宮市内のプレス工場に勤めるAさんは、東京五輪の記念硬貨を偽造して販売することを思いついた。
Aさんは、記念硬貨風のデザインおよび金型を作成し,工場内で偽記念硬貨を鋳造した。
その後,Aさんはインターネットで「記念硬貨風コイン」として販売した。
愛知県警察一宮警察署のコイン収集家である刑事Xが偶然,Aさんが偽物の記念通貨を販売しているのを発見し,Aさんは愛知県警察一宮警察署に通貨偽造罪の疑いで逮捕された。
(フィクションです)
~通貨偽造罪とは~
刑法148条によって通貨の偽造および偽造通貨の行使が禁止されています。
第148条
1 行使の目的で,通用する貨幣,紙幣又は銀行券を偽造し,又は変造した者は、,無期又は3年以上の懲役に処する。
2 偽造又は変造の貨幣,紙幣又は銀行券を行使し,又は行使の目的で人に交付し,若しくは輸入した者も,前項と同様とする。
「行使の目的」とは「流通に置く目的」とされており,他人をして流通させる目的でもよいとされています。
流通に置くことが目的ですので,学校等で社会科の教材としてコピーするような場合には成立しません。
本罪の客体である貨幣とは硬貨のことをいい,紙幣とは政府その他の発行権者によって発行される貨幣に代用される証券をいいます。
なお,厳密にいうと日本では政府その他の発行権者によって発行されている紙幣はなく、政府により発行権限を与えられた特定の銀行が発行する、貨幣に代わる証券である「銀行券」が通用しています(わかりやすいように以下,紙幣といいます)。
~Aさんの行為は通貨偽造に当たるか~
通貨偽造罪における偽造とは、発行権を有しない者が,一般人が真貨(本物)であると誤信するような外観のものを作り出すことをいいます。
実際の通貨に似せて鋳造・印刷する行為の他に,紙幣をコピーして裁断・加筆する行為等も含まれます。
紙幣をコピーする行為自体は,一見してコピーとわかる色合いの場合や,余白部分がある場合には一般人をしてコピーと明らかですので、通貨偽造罪とはならないとも考えられますが,具体的事情によっては通貨偽造罪の未遂罪(151条)となる可能性もあります。
今回のケースで、Aさんは存在しない記念硬貨を作成していますが,このような場合でも通貨偽造罪となるのでしょうか。
記念硬貨は収集目的で買われますのであまり使用はされませんが,額面通りの硬貨として使用することが出来ますので流通する硬貨といえます。
また,Aさんは「記念硬貨風コイン」としていますが,記念硬貨については発行されている種類が多く,使用を断られる場合もありますが,確認されずそのまま受け取られることも多いでしょう。
したがって,外観がそれらしく備わっており,一般人が記念硬貨であると誤信するものであれば,それを他人に譲渡した場合,記念硬貨として使用される可能性もありますので,譲渡することは「流通に置く」といえるでしょう。
そして、Aさんは販売する目的で偽物の記念硬貨を作成していますので、行使の目的があったといえます。
また,通貨偽造罪の保護法益は通貨に対する信用であると考えられていますので,偽物に対する本物がなくても通貨制度に対する信用は害されうるため,存在しない記念通貨であっても通貨偽造罪(148条1項)は成立すると考えられます。
なお,Aさんは偽造した記念硬貨を販売しているため,偽造通貨行使罪(148条2項)も成立しますが,同一主体の場合,犯罪の手段又は結果である行為が他の罪名に触れる牽連犯となり、包括一罪として処理されます。
~弁護活動~
通貨偽造罪は無期または3年以上の懲役と非常に重い刑罰が規定されています。
通貨制度という資本主義経済の根本を揺るがす犯罪ですので重い刑罰が規定されていると考えられます。
通貨偽造罪は基本的に起訴され,刑事裁判を受けることになります。
ただし,懲役刑の下限の3年というのは執行猶予を付すことができる上限ですので,通貨偽造罪は悪質な場合や大規模なものではない場合、懲役3年で執行猶予となる場合が多くなっています。
Aさんの場合,多数人に譲渡するという行使罪も成立してしまっているため,執行猶予とならない可能性もあります。
しかし,譲渡した相手方と連絡を取り,可能な限り偽記念硬貨を回収するといった事後的な流通予防をすることによって裁判で有利な情状となり執行猶予が付される可能性もあります。
通貨偽造罪を犯してしまった場合には、可能な限り早く刑事事件の弁護経験が豊富な弁護士に相談されることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強い法律事務所です。
通貨偽造罪を犯してしまいお困りの方は0120-631-881までお気軽にご相談ください。
(愛知県警察一宮警察署での初回接見費用 36,700円)