スキミングで逮捕されたら
~ケース~
小牧市在住のAさんは、お金に困っていることを高校時代の先輩であるBさんに相談したところ,Bさんから「このクレジットカードを貸してやるからしばらくはこのカードで生活すればいい」と言われクレジットカードを受け取った。
AさんはBさんから受け取ったクレジットカードを使い,日用品や食料品などを購入した。
後日,Bさんはクレジットカードのスキミングをしていた疑いで愛知県警察小牧警察署に逮捕された。
AさんがBさんから受け取ったクレジットカードは、スキミングにより作成されたクレジットカードであった。
そのため,Aさんも愛知県警察小牧警察署において事情を聞かれることになった。
(フィクションです)
~支払用カード電磁記録不正作出~
クレジットカードは、磁気情報によりカードを識別しています。
したがって,まったく同じ磁気情報をカードに登録することができれば、クレジットカードを作成できることになります。
そのため,クレジットカードを使用する際には、本人確認として暗証番号やサインなどが求められます。
支払用カード電磁記録の不正作出とはいわゆるスキミングのことを指します。
スキミングに関する条文は刑法163条の2から5までに規定されています。
163条の2は、スキミングをしてカードの不正な作成を禁止しており,これによって作られたカードの譲渡,貸与,輸入も禁止されています。
また,不正に作成されたカードの所持は163条の3によって禁止されています。
スキミング行為そのものは不正作出準備罪として163条の4に規定されており,未遂も罰せられます(163条の5)
今回のケースで、Bさんはクレジットカードを何らかの方法でスキミングしカードを不正に作成しAさんに譲渡していますから、支払用カード電磁記録不正作出罪および同譲渡罪(163条の2第1項および3項)が成立します。
~Aさんの罪状~
今回のケースで、Aさんには何罪が成立するのでしょうか。
Aさんは、Bさんが不正に作成したクレジットカードを受け取っていますので、不正電磁的記録カード所持罪(163条の3)が成立しそうです。
ただし、刑法は故意責任が原則となっており、刑法38条は「罪を犯す意思がない行為は,罰しない。」と定めています。
Aさんはカードの所持そのものは自分の意思で持っているといえますので故意がなかったということはできないでしょう。
しかしながら,AさんはおそらくBさんがスキミングによって不正に作成したカードであると知らなかったと思われますが,このような場合にも犯罪は成立してしまうのでしょうか。
判例は,違法性の意識は犯罪の成立要件ではないという立場をとっています(最判昭和25年11月28日刑集4巻12号2463頁)。
そのため,仮にAさんが違法でないと思い込んでいたとしても不正電磁的記録カード所持罪は成立してしまいます。
ただし,違法性の認識を欠いたことについて相当の理由が有る場合には故意を欠くので責任が阻却されるという下級審もあります。
今回のケースで、Aさんはクレジットカードを受け取っているわけですから,少なくとも違法性の認識がまったくなかったということは難しいでしょう。
また,Aさんは少なくとも自分の名義ではないクレジットカードを使用しているのですから詐欺罪が成立することも考えられます。
判例は,他人名義のクレジットカードを使用した時点で詐欺罪が成立するとしています(最二判平成16年2月9日刑集58巻2号89頁)。
なお,家族間でのクレジットカードの使用についても最高裁によると厳密には詐欺罪を構成することになりますが,現実的に被害が発生しておらず事件化しない場合が多いと思われます。
また,仮に事件化されたとしても家族間での使用である場合等は検察官は事件を不起訴とすると思われます。
~弁護活動~
今回のケースではAさんはBさんから受け取ったクレジットカードが不正作成されたものであったと知らなかったと思われますので,情状弁護としてその事情を主張していきます。
また,他人名義のクレジットカードによって買い物をした詐欺罪については,店舗もしくはカード会社または真正な名義人に対して被害弁償をすることが重要です。
詐欺事件では被害者への被害弁償の有無が執行猶予付きの判決となるかどうかに大きく影響します。
クレジットカードを借りて事件に巻き込まれてしまった場合には,できるだけ早くお近くの弁護士にご相談されることをお勧めします。
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