殺人罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
Aさんは、Vさんに加害することをストレス解消の手段として、日常的に暴行を加えるなどしていました。ある日、Aさんは、Vさんを名古屋市内を流れる川へ突き落としました。突き落とされたVさんは溺死してしまいました。愛知県東警察署から呼出しを受けたAさんは、殺意を否定したいと考えています。
(フィクションです)
~殺人罪~
犯罪が成立するためには、原則として故意が必要とされています。
殺人事件においては、殺人罪の故意の中核をなすものとして殺意の有無が大きな問題となり得ます。
刑法第199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
殺意とは、人に死亡結果を発生させる危険性が高い行為をすることの認識と言うことができます。
殺意がなく殺人の故意が認められないとして殺人罪として処罰されなくとも、傷害致死罪など他の犯罪に問われる可能性はあります。
しかし、例えば傷害致死罪の法定刑は3年以上の有期懲役で、過失致死罪ともなると50万円以下の罰金と、科され得る刑がかなり軽くなります。
そのため、殺意の有無をどのように認定するのかはかなり重要です。
関連して、罪名のみならず量刑についても、殺意の強度が大きく影響する場合があります。
より強い殺意が認定されれば重い刑が、逆に殺意が弱ければ軽い刑が言い渡される可能性が高まります。
先ほど、殺意を人に死亡結果を発生させる危険性が高い行為をすることの認識のことと言いました。
認識というと結局は行為者の主観であって、行為者(被疑者)が「死んでしまうことを認識していなかった」などと言ってしまえば認識がないことにならないか、などと考える方もいらっしゃるかもしれません。
もちろん、殺意やその他の故意について、行為者あるいは被疑者がどのような発言をしたかはかなり重要な判断要素なのですが、殺意の有無や程度の判断ではその他にもいくつか考慮されることが考えられる要素があります。
裁判所が殺意を認定する上で考慮するものとして、
・凶器の有無
・凶器の危険性
・被害者の身体のどこにどの程度の傷を負わせたか
・犯行時の行為者と被害者の言動
・犯行前後の行為者の言動
・犯行時の行為者と被害者との関係性
・犯行動機
等が挙げられます。
裁判所はこれらの事項を総合的に考慮して、殺意の有無やその程度を認定します。
また、裁判所の判断に先立って、検察官が起訴するかどうかを判断する際も殺意の有無等が検討されます。
日本の刑事司法では起訴された事件の約99%が有罪となっていますので、起訴される前に殺意が無いことなどの主張を尽くせるかどうかが重要です。
Aさんのケースでは、Vさんが突き落とされた川の幅や深さ、当時の川の状況、どこから突き落としたのか、Vさんの死亡に影響を及ぼした持病等の有無、これらの事項をAさんがどの程度認識していたか等が殺意の有無について検討・考慮され得るものと考えられます。
Aさんは警察に呼び出されており、これから取調べが行われることが考えられますが、取調べでどのような供述や対応を行うかどうかも重要になります。
ここでの対応を誤ると一気に不利な状況に陥ってしまうこともあり得るので、取調べを受ける前など、可能な限り早い段階で刑事事件に強い弁護士に事件を相談・依頼することを強くおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずは0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。無料相談や初回接見後のご報告では、事件の見通しや、刑事手続の説明の他、弁護士費用などについてご納得いただけるまでご説明させていただきます。