愛知県名古屋市天白区の遺失物等横領事件と微罪処分(後編)
愛知県名古屋市天白区の遺失物等横領事件と微罪処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部が解説します。
愛知県名古屋市天白区の遺失物等横領事件と微罪処分(前編)の続きとなります。
【遺失物等横領罪の要件(その2)】
遺失物等横領罪を規定した刑法254条を再度引用します。
刑法254条
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。
遺失物等横領罪における「横領」とは、領得行為をいうと考えられています。
すなわち、不法に領得する意思を持って、遺失物等を自己の事実上の支配下に置くことをいうと考えられています。
そして、不法に領得する意思の意義については、物の経済的用法に従って、所有者でなければできない処分をする意思を指します。
刑事事件例について見てみると、Aさんは、本件自転車を持ち去り、遺失物横領事件が発覚する日までの間、本件自転車に乗っています。
こAさんの行為は、まさに本来の所有者でなければできないであろう経済的な使用であり、Aさんは本件自転車を不法に領得しようという意思を持って自己の支配下に置いていたといえます。
よって、Aさんの行為は遺失物等横領罪の「横領」に該当すると考えられます。
以上より、Aさんには遺失物等横領罪が成立すると考えられます。
【遺失物等横領罪と微罪処分】
本件遺失物等横領罪は微罪処分の対象事件に該当する可能性があります。
微罪処分とは、検察官により指定された極めて軽微な事件についてのみ認められた処分であり、検察官に事件の送致をすることなく刑事手続を終局させる処分をいいます。
すなわち、微罪処分となれば警察の捜査段階で事件が終了し、裁判を受けたり刑罰を受けたりということはないということです。
微罪処分については、刑事訴訟法246条や犯罪捜査規範198条1項が以下のように規定しています。
刑事訴訟法246条
司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。
但し、検察官が指定した事件については、この限りではない。
犯罪捜査規範198条1項
捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。
微罪処分の対象となるのは、通常、犯情が軽微、被害額が僅少で、被害回復が行われ、被害者の宥恕(許し)があり、かつ偶発的犯行であって再犯のおそれがない事件です。
遺失物横領事件も、事情によっては上記微罪処分の対象事件の要件を満たす余地があります。
先ほど触れたように、微罪処分となれば、検察官に事件が送致されないため、当該事件の被疑者の方が起訴されることはありません。
そこで、刑事弁護士を選任し、遺失物横領事件の被害者の方と示談交渉を経て、被害弁償や示談を行うことが重要です。
遺失物横領事件の被害者の方の宥恕(許し)を得ることができれば、検察官へ事件が送検されることなく、刑事手続を終局させることができる可能性があると考えられます。
微罪処分とならなくとも、示談締結の事実は不起訴処分の獲得や刑罰の減軽に有利に働く事情となりますから、いずれにせよ遺失物横領事件の当事者となってしまったら早めに弁護士に相談・依頼することがおすすめです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
遺失物等横領事件のような微罪処分対象事件を取り扱った経験のある刑事弁護士も多数在籍しております。
愛知県名古屋市天白区の遺失物等横領事件でお困りの場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋支部までご相談ください