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死亡事故と弁護活動
死亡事故と弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【交通事案例】
Aさんは愛知県津島市のバイパスを車で走行中、横断歩道の無い場所を渡ろうとするVさんに気付くのが遅れ、そのままVさんをはねてしまいました。
Aさんはすぐに110番通報と119番通報をして、Vさんは病院に搬送されましたが病院で死亡が確認されました。
Aさんは駆けつけた愛知県津島警察署の警察官に、過失運転致死罪の容疑で逮捕されました。
(フィクションです)
【死亡事故について】
交通事故は大きく物損事故と人身事故に分かれますが、人身事故のうち、最も重いものが人を死亡させる死亡事故です。
死亡事故は逮捕され、留置されるなど身柄拘束が続くケースも多い事故です。
【法律と死亡事故について】
交通事故を起こし、人を死亡させるとどのような罪に問われることになるのか見ていきましょう。
死亡事故は、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(通称、自動車運転死傷行為処罰法)違反」のうち、「過失運転致死罪」に問われることが多いです。
過失運転致死傷罪の罰則は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金ですが、死亡事故の場合は初犯であっても執行猶予がつかない実刑判決になる可能性があります。
また、死亡事故の中でも、ある一定の危険な状況で起こした死亡事故のことを「危険運転致死」といいます。
具体的には、アルコールや薬物を摂取しての運転、大幅な速度超過での信号無視・暴走行為や、2020年の法律改正で追加されたあおり運転など、悪質で危険性の高い運転行為を伴う死亡事故については、過失運転致死傷罪より法定刑の重い危険運転致死罪に問われます。
危険運転の場合は致傷と致死で異なる刑罰が規定されており、危険運転致傷罪は15年以下の懲役または12年以下の懲役、危険運転致死罪は1年以上20年以下の懲役または15年以下の懲役です。
【弁護活動について】
Aさんのように逮捕され、その後勾留・勾留延長されると、最長23日間は警察署の留置場に留置される=身体拘束を受けることになります。
このように長い間、身体拘束を受けると会社員ならば解雇処分、学生ならば退学処分などを受ける可能性が有ります。
交通事件・刑事事件に強い弁護士ならば、勾留や勾留延長をされることがないように、活動をしていくことができます。
過失運転致死罪の処分は、故意ではなく過失で、またはアルコールや薬物を窃取するような危険運転ではなくても、人が死亡しているため罰金刑ではなく、懲役刑、禁錮刑となる可能性も低くはありません。
ですので、起訴をされた場合でも、執行猶予がついた懲役刑、禁錮刑となるように、交通事件・刑事事件に強い弁護士が活動していきます。
具体的には、弁護士を通して被害者への謝罪と賠償を誠心誠意行っていくことが重要となるでしょう。
もちろん、危険運転を行った結果、人を傷つけた・人を死なせた場合も、一刻も早く交通事件・刑事事件に強い弁護士に相談をすることをお勧めいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、過失運転致死罪への対応をしてきた刑事事件専門の法律事務所です。
ご家族やご自身が過失運転致死罪で話を聞かれることになった方、逮捕された方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。
処方箋の偽造と逮捕
処方箋の偽造と逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【刑事事件例】
愛知県稲沢市に住むAさんは不眠症を患っており、毎月睡眠薬(向精神薬)を処方されていました。
しかし睡眠薬が効きにくくなったAさんは、もっと大量に睡眠薬が欲しいと思いました。
そこでAさんは自分に処方された処方箋を大量にカラーコピーして、それを愛知県内の複数の調剤薬局の受付に提示して睡眠薬を不正に受け取っていました。
Aさんはこれを1年にわたり繰り返していましたが、ある日愛知県稲沢警察署の警察官がAさんの自宅に来て逮捕状を提示して、Aさんは逮捕されました。
(フィクションです)
【処方箋の偽造や行使は犯罪になります】
処方箋をパソコンで自分で作成したり、カラーコピーしたり、薬を書き加えたり等をして薬局に持ち込み、不正に処方薬を受け取ることは犯罪になります。
どのような犯罪になるのか具体的に見ていきましょう。
1 詐欺罪(刑法第246条)
・人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
・前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
2 私文書偽造罪(刑法第159条)
・行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、3月以上5年以下の懲役に処する。
・他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、同様とする。
・刑法159条1項と2項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
3 偽造私文書等行使罪(刑法第161条)
・刑法159条(私文書偽造行使等)と160条(虚偽診断書等作成)の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。
・前項の罪の未遂は、罰する。
4 麻薬及び向精神薬取締法違反
・麻薬及び向精神薬取締法第70条第14号の規定により、1年以下の懲役若しくは20万円以下の罰金、又はこれを併科
麻薬が処方される処方箋を偽造し、又は変造した場合にとわれます。
・麻薬及び向精神薬取締法第72条第4号の規定により、20万円以下の罰金
向精神薬が処方される処方箋を偽造し、又は変造した場合にとわれます。
1の詐欺罪は、薬局の受付員に対し、偽造した処方箋をあたかも真正な処方箋のように提出し、欺いた結果、薬を処方されたので詐欺罪が成立します。
2と3の私文書偽造罪と偽造私文書等行使罪については、それが無ければ薬の処方が受けられない処方箋を偽造し、薬局に提出(行使)していますので、両罪が成立します。
4の麻薬及び向精神薬取締法違反については、処方箋に麻薬、若しくは向精神薬が含まれていれば成立します。
今回Aさんは、詐欺罪・私文書偽造罪・偽造私文書等行使罪・麻薬及び向精神薬取締法違反で逮捕されたものと思われます。
【逮捕された後はどうなるのですか】
・逮捕について
今回Aさんは逮捕状を提示されて逮捕されましたが、これを通常逮捕といいます。
逮捕にはその他、緊急逮捕、現行犯逮捕(準現行犯逮捕含む)があります。
逮捕されると、警察官は逮捕時から48時間以内に身柄を釈放するか検察官に送致するかを決定します。
送致された場合、24時間以内に検察官は被疑者を勾留するか否かを決定し、勾留する場合には、裁判所に対し勾留請求を行います。
・勾留について
検察官の勾留請求が裁判所に認められれば、まずは10日間の身体拘束が認められ、場合によってはさらに10日間の延長が認められます。
つまり一度逮捕されると、逮捕から勾留請求までの時間を含めて、最大で23日間の身体拘束を受ける可能性があるということになります。
勾留されると外部との連絡を制限され、さらに接見禁止決定がつくと、基本的に弁護人又は弁護人となろうとする者以外との接見(面会)ができなくなります。
・起訴について
検察官は起訴をするのか、それとも不起訴にするのか、被疑者に対する処分を決定します。(勾留されている場合には、勾留期間が満了する前に決定します。)
起訴されると、刑事裁判が始まります。
起訴された後は、留置されていれば警察署の留置場から拘置所に移動することがあります。
また、一定の金銭を裁判所へ預けることによって、身柄拘束から解放してもらうこともできるようになります。(保釈といいます。)
・公判について
裁判では、無罪判決か有罪判決の言渡しを受けます。
有罪判決の場合には、執行猶予を付けられるかどうかが判断されます。
以上が逮捕された後の大まかな事件の流れです。
刑事事件に強い弁護士は、事件の各段階において、適切な弁護活動を行っていきます。
ご家族が逮捕されてお困りの方は、ぜひ刑事事件に強い弁護士に事情をお話しください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、薬物事件を多数扱っている刑事事件専門の法律事務所です。
処方箋を偽造した、家族が詐欺罪や私文書偽造罪、偽造私文書等行使罪、麻薬及び向精神薬取締法違反て逮捕されてお困りの方は、年中無休で対応している弊所フリーダイヤル(0120-631-881)まで今すぐにお問い合わせください。
器物損壊罪と環境を整えること
器物損壊罪と環境を整えることについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【刑事事件例】
Aさん(18歳)は愛知県一宮市にあるV株式会社に勤務していましたが、暴走族や不良仲間との付き合いがあることや素行不良等を理由に、最近解雇されました。
Aさんがこれを不良仲間に話すと、「会社に何か仕返しをしてやれよ。」と言われたので、AさんはV株式会社の看板を壊してV株式会社に嫌がらせをしてやろうと思いました。
そこでAさんはある日の夜中にV株式会社の看板を外して持ち去り、約500メートル先の広場でその看板をハンマーでたたき割って逃げました。
翌日、広場で愛知県一宮警察署の警察官が割られたV株式会社の看板を発見し、器物損壊罪の疑いで捜査を始めました。
(フィクションです)
【看板を持ち去っていても器物損壊罪?】
Aさんは看板を「持ち去って」いるので、泥棒=窃盗罪になるのではと考えるかもしれません。
しかし、窃盗罪が成立するには「不法領得の意思」が必要です。
「不法領得の意思」とは「権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用しまたは処分する意思」のことです。
つまり、持ち去ったものを経済的に用法に従って利用、処分する意思があれば窃盗罪が成立するということです。
Aさんは持ち去った看板を利用する意思が全くなく、不法領得の意思は無いと思われるので、窃盗罪ではなく器物損壊罪(叩き割っている)が成立すると思われます。
器物損壊罪(刑法第261条)
前3条に規定するもの(公用文書や私有文書、建造物)のほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
・他人の物を持ち去る→経済的に利用、処分するつもりがある→窃盗罪
・他人の物を持ち去る→経済的に利用、処分するつもりがない→器物損壊罪
【環境を整えること】
少年事件の場合は家庭環境、生活環境を整えることも大切になります。
Aさんの場合は、犯行のきっかけの一つに、不良仲間に「仕返しをしてやれよ。」と言われたことがあります。
このように、暴走族や地元の不良仲間との交遊関係が非行の背景にある場合は、交遊関係の見直しを含めた生活環境の改善が重要となります。
生活環境を改善するためには、ご家族や保護者の協力が不可欠となることから、ご家族や保護者には日常生活の中で本人を監視監督してもらうことになるでしょう。
生活環境が改善したかどうかは、少年が起こした事件への適切な処分が出されるかどうかに大きく関わってきます。
お子様が事件を起こしてしまったなど、少年事件でお困りの方は逮捕されている場合はもちろん、逮捕されていない場合でも、ぜひ少年事件、刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
少年事件の流れ、刑事処分の見通し、対応・解決方法、不安や心配事、疑問点など「こんなことも聞いていいのだろうか…」と思うことなく、何でもお話しください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、少年事件・刑事事件専門の法律事務所です。
ご家族やご自身が器物損壊罪で話を聞かれることになった、子供が事件を起こしたけれど家庭環境、生活環境を整えたいという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。
物を持ち去っても窃盗罪にならない場合
物を持ち去っても窃盗罪にならない場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは生活に困ったため、刑務所に入りたいと考えていました。
そこでAさんは、誰かの物を持ち去り、すぐに自首して有罪になり、刑務所に入ることを思いつきました。
ある日の夜、Aさんは愛知県犬山市の路上で音楽ライブをしていた、VさんのCDを持ち去り、そのまま50メートル離れた愛知県犬山警察署の交番に持って行って、警察官に「窃盗罪をしたので自首をします」と言いました。
(フィクションです)
【刑事事件について】
AさんはVさんのCDを持ち去っているので、一見窃盗罪が成立するように見えます。
しかしこの場合は窃盗罪は成立しません。
理由などをみていきましょう。
まず、窃盗罪は刑法第235条に規定があり
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
とあります。
窃盗罪が成立するには不法領得の意思が必要とされていますが、不法領得の意思とは、「権利者を排除して他人の物を自己の所有物として」、「その経済的用法に従い利用、処分する意思」のことと言われています。
事例の場合は、Aさんは罪を犯して有罪となり、刑務所に入る目的でCDを持ち去っています。
しかし、一般的にはCDは音楽を聴くためのもの(経済的用法は音楽を聴くこと)です。
Aさんは、CDを持ち去った後は、自首するまでこれを交番に持っていくだけが目的でした。
また、Aさんが目指している「刑務所に入る」という目的は、Aさんが有罪判決を受けて実現するもので、CDを聴いて実現するものではありません。
よって、AさんにはCDを経済的用法に従って利用したり処分する意思が無く、いわゆる不法領得の意思が欠けているのでAさんには窃盗罪が成立しない可能性があります。
ただし、AさんがCDを持ち去った後、自首せずCDを捨ててしまった場合は、CDが使用できなくなるなるため、器物損壊罪が成立する可能性が有ります。
【自首とはどのようなことですか】
Aさんが交番で警察官に伝えた「自首」とはどのようなことか見ていきましょう。
自首とは、事件の犯人が警察等の捜査機関に、自発的に窃盗の事実を申告して処分を求めることです。
自首が成立するには、①捜査機関に窃盗事件が発覚していないこと、②捜査機関に自発的に自己の犯罪を申告すること、が必要です。
この条件が欠けている時は、警察に出向いたとしても自首は成立しません。
自首を行った場合の刑法上のメリットは、刑が減刑される可能性があるというものです。
ですので、必ずしも刑が減刑されるわけではなく、自首による減刑は裁判所の自由な裁量によりなされます。
しかし、自首をすることによって逮捕される可能性が低くなる可能性はあります。
事件ごとに判断され、自首をしたからといって逮捕されなくなるわけではありません。
また、警察など捜査機関がすでに事件や犯人を把握している場合に、捜査機関の呼び出し等に応じて犯人が出向くことを任意出頭といいます。
任意出頭は、自首とは異なり刑法上、刑の減刑等の効果は定められていません。
ですが、任意出頭をするということは、犯人の反省の情を示す事情として判断される可能性があり、有利な情状として取り扱われる可能性があります。
窃盗事件を起こして自首をしようと考えているが、自首をした方がよいのか、そうではないのか、など自首の事でお悩みの方は、刑事事件に強い弁護士に一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、年間多数の刑事事件への対応をしてきた刑事事件専門の法律事務所です。
窃盗罪や自首に詳しい弁護士も在籍しております。
ご家族やご自身が窃盗罪を起こしてしまった、捜査機関に自首をするべきか悩んでいる方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。
【名古屋の建造物侵入・窃盗事件】市役所に侵入し、現金を盗む
【名古屋の建造物侵入・窃盗事件】について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説いたします。
事案:2021年11月、東海市役所に侵入し、現金48万円あまりを盗むなどした事件(メーテレ「市役所に侵入・現金を盗んだなどの罪に問われた男 懲役3年、執行猶予5年の判決 名古屋地裁」(2022年3月28日)より引用)。
【窃盗罪と不法領得の意思】
刑法235条は「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と定め、刑法38条本文は「罪を犯す意思」すなわち当該犯罪に対する故意を犯罪の成立要件としています。
もっとも、窃盗罪が成立するためには、条文(刑法)に書かれざる要件として「不法領得の意思」が必要であると解されています。
判例(最判昭和26年7月13日)によると、「権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は書部する意思」がその内容とされています。
本件では、「建造物」たる市役所に無断で「侵入」した上で(刑法130条前段)、報道によるとギャンブルでつくった借金を返済する目的で現金を盗んでおり、上記不法領得の意思が認められることは明らかな事案だと考えられます。
【窃盗事件における弁護活動】
本件で名古屋地裁半田支部は、男に「懲役3年、執行猶予5年」の判決を言い渡しています。
窃盗罪は財産犯ですから、被害弁償によって生じた被害を回復させることがまずは何よりも重要な弁護活動の一つと考えられています。
実際に本件の報道にもあるように、本判決を言い渡すにあたって、酌むべき情状として「被害弁償を行い、前科もない」ことが考慮されていることからも、弁護活動として被害弁償を行うことの重要性は裏付けられていると言えるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、窃盗事件を含む刑事事件を専門的に扱っている法律事務所です。
窃盗で逮捕された方のご家族は、年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)までお早めにご連絡ください。
借金のかたのカードの使用と詐欺罪
借金のかたのカードの使用と詐欺罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【刑事事件例】
AさんはBさんに現金を貸していましたが、その担保としてBさんの母名義のクレジットカードを受け取りました。
その後Bさんから、返済期日までに返済がなかったことから、AさんはBさんとBさんの母に対し、担保にしているBさんの母名義のクレジットカードを使って、返済にあてると伝え、BさんもBさんの母もこれを了承し、クレジットカードの暗証番号を伝えました。
その後Aさんは愛知県清須市にある電気店に行き、Bさんの母名義のクレジットカードを店員に示し、サインを求められたためBさんの母の名前を署名して提出し、パソコンを購入しました。
後日、電気店の店員が、Aさんが男性なのに署名が女性名義なのを不審に思い、愛知県西枇杷島警察署に通報し、Aさんは詐欺罪で愛知県西枇杷島警察署で話を聞かれることになりました。
Aさんは、BさんにもBさんの母にもクレジットカードを使う許可をもらっているのに、何が悪いんだろうと考えています。
(フィクションです)
【詐欺罪は成立するのでしょうか】
今回の場合、AさんがBさんの母名義のクレジットカードを使うことを、Bさんの母が許可している場合に、AさんがBさんの母になりすまして、電気店からパソコンを手に入れていることが詐欺罪にあたるかどうかが気になるところです。
まずは詐欺罪についてみていきましょう。
詐欺罪は、刑法第246条に規定があり
1 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、前項と同様とする。
とあります。
これは、
「欺く行為」→「錯誤に陥る」→「財産的処分行為」→「財物の交付など」
が、それぞれ関連がある状態で発生することで、詐欺罪となるといわれています。
今回の場合は、クレジットカードというものは、名義人の信用に基づいてその使用が認められているものとされており、結局クレジットカードを使えるのはその名義人に限定されています。
よって、クレジットカードの名義人になりすまして、クレジットカードを使用することは、店舗の間で許可されることはありません。
つまり、クレジットカードの名義人になりすまして、クレジットカードを提示することは、先に述べた「欺く行為」にあたり、詐欺罪が成立することになるのです。
【文書偽造罪については成立しますか】
Aさんがパソコンを購入する際に、Bさんの母の名前を署名していることから、文書偽造罪等も成立すると思われるかもしれません。
しかし、今回の場合は、文書偽造罪等は成立する可能性が低いと思われます。
というのも、文書偽造罪等は、文書の社会的な信頼を保護するのが目的とされています。
つまり、名義人が知らない文書が社会に出回ることを防ぎ、文書の信頼性を保護するためのものです。
今回の場合、文書の名義人(Bさんの母)が、自分の名義の文書の作成(サイン等)を許しているので、実際には文書の名義人が自ら製作した文書と変わらず、基本的には文書の信用性を害することにはならないとされます。
よって、文書等偽造罪が成立する可能性は、ほぼないと思われます。
【刑事事件に強い弁護士への相談】
Aさんのように、自分は特に悪いこと、犯罪になるようなことをしていないと思っていても、実はそれが犯罪になり、いきなり捜査機関から呼び出しを受けるということは、あり得ることです。
もし、そのようなことになった時は、刑事事件に強い弁護士にすぐ相談をしてください。
今後の事件の流れや、取調べへの対策などについて、相談内容をしっかり伺った後、最適なアドバイスをさせていただきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、年間多数の詐欺罪への対応をしてきた刑事事件専門の法律事務所です。
ご家族やご自身が他人のクレジットカードを使用した、自分のしたことが犯罪になると思わなかったとお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。
仮免許運転違反
仮免許運転違反について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【交通事案例】
Aさんは仮免許試験に合格していますが、練習のために教習所以外でも車両を運転したいと考えていました。
仮免許中の公道での運転は、運転免許証を持っている人を同乗させなければならないと知ったAさんは、昨年運転免許証を取得したばかりの兄のBさんに同乗するよう依頼し、公道で運転していました。
ある日、Bさんを助手席に乗せて運転していたところ、愛知県小牧警察署の警察官に車両を止められ、AさんとBさんはそれぞれの免許証を警察官に見せました。
するとBさんの運転免許証を見た警察官は、Aさんに対し「仮免許中は、運転免許証をとって3年以上たった人と一緒に乗らないとだめだよ。お兄さんはまだ運転免許証をとって1年もたってないから、一緒に乗ってても、仮免許運転違反になるんだよ。」と言いました。
後日Aさんは道路交通法違反(仮免許運転違反)で話を聞かれることになりました。
(フィクションです)
【仮免許では公道は運転できないのですか】
あくまで「仮の免許」ですので、基本的には運転免許証を持っている人のように運転することは、道路交通法によって認められていません。
しかし、いくつかの条件を満たすことにより公道を運転することができるようになります。
その条件とは
①仮免許を持っていること
②運転免許証を取得して3年以上たつ者、または当該車両の第二種免許を受けている者を同乗させること
③仮免許運転中のプレートを車両に掲示していること
です。
このことは道路交通法第87条1項~3項に規定があります。
また、違反した場合は
②については、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金
③については、5万円以下の罰金
です。
なお、同乗していたBさんはこの場合、罪に問われることは基本的にはありません。
【この後の流れについて】
仮免許違反については、正式な裁判となることはあまりなく、略式手続きで罰金刑となることが多いといわれています。
略式手続とは、非公開で行われる簡単な裁判手続のことで、100万円以下の罰金または科料に相当する事件において、被疑者に異論がない場合に、検察官の提出した書面において審査をします。
ただ、この罰金が払えないと一定期間、労役場で強制的に作業をさせられることになります。
正式な裁判になることは少ないので、安心された方もいらっしゃるかもしれませんが
警察署においての取調べや、刑事手続きについてなど、よくわからず不安になられることもあるかと思います。
警察や検察の取調べや、刑事手続きに不安があれば、ぜひ交通事件・刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件、交通事件でお困りの方は、まずは0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談、初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。無料相談や初回接見後のご報告では、事件の見通しや、刑事手続の説明の他、弁護士費用などについてご納得いただけるまでご説明させていただきます。
ヘロインと強盗殺人未遂罪と保釈
ヘロインと強盗殺人未遂罪と保釈について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは違法薬物の売人であるVさんに対し、待ち合わせ場所の愛知県春日井市の路地裏で代金を支払う意思がないのに「ヘロインを売ってくれ」と頼みました。
AさんはVさんからヘロインを受け取りましたが、Aさんは代金支払いを免れるために出刃包丁でVさんの腹部を刺し逃走しました。
Vさんは通行人に救助され一命をとりとめましたが、Aさんは強盗殺人未遂罪と麻薬及び向精神薬取締法違反で愛知県春日井警察署に逮捕・勾留され、その後起訴されていますが、Aさんの家族はAさんが刑務所に行く前に一度自宅に帰ってきてほしいと考えています。
(フィクションです)
【ヘロインとはどのようなものですか?】
ヘロインとは、けしを原料とした薬物のことで、けしからあへんを採取し、あへんから抽出したモルヒネを精製して作られており、「麻薬及び向精神薬取締法」で麻薬として規制されています。
モルヒネになる前のあへんとは、けしから採取した液を凝固させたもののことです。
原料であるけしの栽培やあへんの採取、あへん及びけしがらの輸出入、所持などは「あへん法」により規制されています。
ヘロインは、強い精神的・身体的依存が特徴の薬物で、ヘロインを使用すると強い陶酔感や快感を覚えます。
しかし、2~3時間ごとに摂取しないと、体の激しい痛み、悪寒、嘔吐、失神などの激しい禁断症状が起こります。
また大量に摂取すると死に至ります。
ヘロインについては、医学的な使用も一切禁止されています。
ヘロインの所持については、麻薬及び向精神薬取締法に規定があり
営利目的が無ければ、法定刑は10年以下の懲役です。
営利目的があれば、法定刑は1年以上の懲役で、情状により500万円以下の罰金を併科されます。
【強盗殺人未遂罪について】
このような事例については既に判例があり、
「違法薬物をだまし取った後に、代金支払いを免れるために殺人を行おうとしてこれが未遂に終わった場合、代金支払いを免れるという財産上不法の利益をえるためにされたものである以上、この行為は詐欺罪と2項強盗による強盗殺人未遂罪との包括一罪が成立する。」とあります。(最高裁判所昭和61年11月18日判決)
※2項強盗とは、刑法に「強盗罪」として規定される行為のうち直接的な「財物の強取」ではなく、代金の支払い拒否などの「経済的利益を不当に奪い取る」ことを目的として行われる強盗行為のことを言います。
強盗罪が規定されている刑法第236条の「第2項」に規定されているため「2項強盗」と呼ばれています。
【Aさんは自宅に帰ることができるのか】
警察署に留置され、起訴されているAさんが自宅に帰るには「保釈」という制度を利用することになります。
保釈とは、身柄拘束されている被告人(起訴された人)が、一定金額のお金(保釈金)を納付して身柄を解放してもらう制度です。
保釈には、必要的保釈と裁量保釈、職権保釈の3種類がありますが、いずれの保釈の場合でも弁護士によって保釈請求書を作成してもらい、保釈請求を行ってもらうことが有効です。
保釈請求が行われた場合、刑事訴訟法第89条に記載されている事項を除いて、裁判所は保釈を許さなければならないとしています。
刑事訴訟法第89条には
①被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
②被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
③被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
④被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
⑤被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
⑥被告人の氏名又は住居が分からないとき。
とあり、つまりこれに該当しない時は保釈が認められるということです。
ただし、薬物事件においては上記の③と④に該当すると判断される可能性が高いため、特に薬物事件において保釈を希望されるときは弁護士にしっかり主張してもらうのがよいでしょう。
また、上記の89条の保釈が認められなくても、刑事訴訟法第90条に基づく保釈を請求することができます。
刑事訴訟法第90条に基づく保釈とは、裁判所が適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができるとしていることで、裁判所の裁量により行われる保釈です。
しかし、裁判所の職権で保釈の判断がされるため、これもやはり弁護士に裁判所に対ししっかりと主張してもらうことが大切です。
また、保釈請求が認められたとしても、保釈金を裁判所に預り金として支払わなくてはなりません。
保釈金は仮に後の裁判で有罪判決を受けたとしても裁判所から返還を受けることができますが、保釈金の金額については、人それぞれですので、一概に金額を見積もることは困難です。
また、薬物事件の場合は再犯率や逃走の恐れの観点から、保釈金は高額になる傾向があります。
最後に職権保釈についてですが、職権保釈とは刑事訴訟法第91条に基づいた、勾留による拘禁が不当に長くなった場合には、保釈を許さなければならないというものです。
保釈を希望される方は、刑事事件、薬物事件に強い弁護士に、ぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、薬物事件を多数扱っている刑事事件専門の法律事務所です。
麻薬及び向精神薬取締法違反事件や強盗殺人未遂罪で逮捕された方のご家族等は、年中無休で対応している弊所フリーダイヤル(0120-631-881)まで今すぐにお問い合わせください。
恐喝罪で示談(謝罪や弁償)をしたい
恐喝罪で示談(謝罪や弁償)をすることを希望する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【刑事事件例】
17歳のAさんが愛知県瀬戸市の駅前広場を徘徊していたところ、酔っぱらった会社員のVさんが「このガキ、さっさと家に帰れ。」と絡んできました。
これに腹を立てたAさんがVさんに対し「この野郎、ぶち殺すぞ。」と脅迫したところ、身の危険を感じたVさんが自分の懐から財布を取り出し「これで見逃してくれ。」と言いました。
AさんはVさんから財布を受け取り、逃走しました。
後日Aさんは愛知県瀬戸警察署で恐喝罪の疑いで話を聞かれることになり、Aさんの両親はVさんに謝罪や弁償をしたいと考えていますが、Vさんの連絡先も分らず困っています。
(フィクションです)
【恐喝罪、強盗罪と窃盗罪の関係について】
恐喝罪は刑法第249条に
1 人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
と規定されています。
Aさんには今回恐喝罪が成立すると思われますが、Vさんを脅迫しているので強盗罪になるのでは?と思われるかもしれませんし
Vさんが差し出した財布を受け取ったので窃盗罪になるのでは?と思われるかもしれません。
それぞれの違いについて見ていきましょう。
①恐喝罪と強盗罪の区別
・恐喝罪が成立する場合
暴行・脅迫の程度が、相手の反抗を抑圧するまでに至らない程度であった場合には恐喝罪となります。
・強盗罪が成立する場合
暴行・脅迫の程度が、相手の反抗を抑圧する程度であった場合には、強盗罪となります。
②窃盗罪と恐喝罪または強盗罪の区別
・窃盗罪が成立する場合
恐喝(強盗)目的以外で暴行・脅迫を加え、その後に暴行・脅迫を加えることなく財物を窃取した場合は、窃盗罪となります。
・恐喝罪・強盗罪が成立する場合
財物を得るために暴行・脅迫を行った場合はもとより、相手の畏怖(恐れおののくこと)を利用して財物を交付させた場合にも成立します。
今回の場合は、脅迫の程度が相手の反抗を抑圧するまでには至らなかったものの、相手の畏怖を利用して財物を交付させているため恐喝罪が成立するのです。
【謝罪や弁償をしたいのに被害者の連絡先がわからない…】
少年による恐喝事件においても、被害者の方と示談したり謝罪をしたりすることは大切なことの一つです。
示談とは、犯罪の被害者に対して示談金を支払うこと等によって、当事者間で事件を解決することです。
例えば、加害者が被害者に対し謝罪の意思を示すとともに、損害や慰謝料を賠償することによって、被害者が寛大な心で犯罪を許すことなどをいいます。
被害者の方と示談交渉をするためには、まず捜査機関(警察や検察)から被害者の連絡先を聞く必要があります。
しかし、捜査機関から被害者の連絡先を聞けるのは、基本的には弁護士のみです。
加害者やそのご家族の方が、直接捜査機関に被害者の連絡先を教えて欲しいと伝えても、それはとても難しいことでしょう。
ですので、弁護士をつけなければそもそも示談交渉を始めることすら難しいのです。
もちろん弁護士であっても、被害者の連絡先を伝えても良いかどうかは被害者自身が判断しますので、加害者には連絡先を教えたくないと言われることもあるでしょう。
しかし、加害者やその家族ではなく、加害者についている弁護士にならば連絡先を教えても良いと被害者が判断されることも多いのです。
その後の謝罪を含めた示談交渉も、少年事件・刑事事件に強い弁護士にぜひお任せください。
被害者と示談が成立すれば
①事件を早期に解決することが可能となる(事件化する前の場合)
②家庭裁判所での審判の際の判断において有利な事情となる可能性がある
③釈放の可能性が上がる(身柄を拘束された場合)
④損害賠償請求など民事裁判になる可能性を引き下げ、事件の完全解決につながる
など様々なメリットがあります。
被害者との示談をご希望されている方は、少年事件・刑事事件に強い弁護士に早急にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、少年事件・刑事事件専門の法律事務所です。
ご家族やご自身が恐喝罪で話を聞かれることになった、被害者と示談をしたいが連絡先がわからないなどお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。
占有離脱物横領罪と示談
占有離脱物横領罪と示談について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは名古屋市中村区にある百貨店の7階にある休憩所のソファにカバンが置いてあるのを見つけ、周りに誰もいないことからそのカバンを持ちさりました。
このカバンはVさんのもので、Vさんは7階の休憩所のソファにカバンを置いたものの、そこで地下2階の食料品売り場で買い忘れたものがあることに気付きました。
Vさんはカバンのことをすっかり忘れて、地下2階に向かったのですが、10分後にカバンを置き忘れたことに気付き、すぐに7階に戻ったものの、カバンはすでにAさんに持ち去られた後でした。
後日、Aさんの自宅に愛知県中村警察署から「百貨店の防犯カメラを確認しました。占有離脱物横領罪で話を聞かせてください。」と電話がかかってきました。
Aさんは家族に迷惑がかかるし、被害者に謝罪して示談にできないかと考えています。
(東京高等裁判所平成3年4月1日判決を参考にしたフィクションです)
【Aさんの行為は泥棒だから窃盗罪ではないのですか】
Aさんは確かにVさんのカバンを泥棒しているので窃盗罪が成立するように見えます。
しかし今回、Aさんの行為は占有離脱物横領罪が成立する可能性があります。
それでは窃盗罪と占有離脱物横領罪について詳しく見ていきましょう。
【窃盗罪】
それでは窃盗罪についてみていきましょう。
条文は
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する。(刑法第235条)
です。
窃盗罪は
①犯行の主体は、特に制限はなく、誰でも行えます。
②犯行の対象は、他人の占有する財物です。
③行為は窃取することで、財物の占有者の意思に反してその占有を侵害し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。
④結果は占有を取得することです。
⑤不法領得の意思が必要です。
【占有離脱物横領罪】
続いて占有離脱物横領罪についてみていきましょう。
条文は
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金若しくは科料に処する。(刑法第254条)
です。
占有離脱物横領罪は
①犯行の主体は、特に制限はなく、誰でも行えます。
②犯行の対象は、他人の占有を離れた他人の財物で、例としては「遺失物」「漂流物」があります。
※「遺失物」…占有者の意思に基づかずに占有を離れ、いまだ誰の占有にも属しないもの
※「漂流物」…占有者の意思に基づかずに占有を離れ、いまだ誰の占有にも属しないもので、水面または水中に存在するもの
③行為は横領することで、不法領得の意思をもって、占有を離れた他人のものを自己の事実上の支配内に置くことをいいます。
④結果は占有を取得することです。
⑤不法領得の意思が必要です。
【窃盗罪と占有離脱物横領罪の違い】
この2つの罪で大きく違うところは、犯行の対象です。
よって泥棒の行為をした時に、他人の占有があるか否かでどちらの罪になるかがほぼ決まります。
なおここでいう他人の「占有」とは、物を持っているというだけではなく、物に対する「事実上の支配」、つまり持ち主が物を目に見える形など客観的に支配しているだけではなく
例えば持ち主の自宅内にある物など、持ち主が物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態も含みます。
さらに物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態にあるか否かは
①支配の事実の観点(置き忘れてから気づくまでの時間的場所的な近さ)
②占有の意思の観点(存在していた場所をどれくらい認識していたか)
で判断される傾向があります。
【刑事事件例について】
Vさんがバッグを置き忘れ、気が付くまでには約10分程度でしたが、置き忘れた場所と気付いた場所はそれぞれ百貨店の地下と7階でした。
それは気付いた時点で置き忘れたあ署にすぐに戻って取り戻せることができる時間的場所的な近さにあったとはいえず、
Vさんはカバンを取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態にあったとはいえません。
よってカバンの占有はVさんから離れて遺失物と認められるため、Aさんは遺失物であるVさんのカバンを持ち去って自己の物としたため占有離脱物横領罪が成立する可能性があります。
【被害者と示談がしたい】
窃盗罪であっても、占有離脱物横領罪であっても、被害者がいる事件には変わりありません。
Aさんは被害者に謝罪し、示談がしたいと思っていますが、当事者同士で示談を行うのは大変難しいことです。
刑事事件に強い弁護士を通して、被害者に謝罪や弁償を行い、示談を成立させていくことになるでしょう。
示談が成立すれば、Aさんのように警察が介入している場合は起訴猶予による不起訴処分を目指していくことも可能ですし、不起訴処分となれば前科にはなりません。
また、警察が介入する前に示談が成立すれば事件化する前に解決することもできます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、年間多数の刑事事件への対応をしてきた刑事事件専門の法律事務所です。
窃盗罪や占有離脱物横領罪に詳しい弁護士も在籍しております。
ご家族やご自身が窃盗罪や占有離脱物横領罪で話を聞かれることになった、逮捕されてお困りの方、被害者と示談がしたいという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。